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第24話 駆けろ風のように


その日はとても賑わっていた。人が多く、色んな露店が出ている。その街の中央の道はあけられていた。


「すげえなあれだな、夢の国のパレードみたいだな。うん、人が多いな」

“いやー、凄いね!これ全部パレード見に来た人達でしょ?凄い人気なんだろうねーその勇者サマってのは”


ああ、そうみたいだな、くそっ、みんなに人気とか、リア充かよ、滅びればいいのに、

“なんでそんなに恨みを持ってるのさ、リュウだってちゃんと喋れればリア充になれると想うよ?”


う、うるせぇ、慰めなんていらねぇよー、なんかかなしくなるだろー!


パパパーンと急に大きい音がなる。

俺はなんだ?と音がなる方を見てみると、


「勇者一行、出撃ーーーー!!!」


と馬鹿でかい声が聞こえ、その後から、馬に乗った4人の男女が出てきた。その瞬間周りの人だかりは


「うおぉぉぉぉぉぉおおおおーーーー!!!」

「キャー、勇者様ーー!」

「賢者様ー、頑張ってくださいー!」


と口々に叫んでいる。てかめっちゃうるさい。もう少し静かに出来ないもんかね、近所迷惑じゃないか、全くもう、しかし、アレが勇者一行か、ちっ、勇者、イケメンじゃないか、くそっ、キラキラな鎧を着て、この目立ちたがりめ!

“ほら、悪態をつかない、しかし、人気だねー、さすが勇者って感じだねー、”


俺だって、勇者として召喚されていればチヤホヤされてたんだ、きっと、そう、運が悪かっただけだよ、

“何を言ってるんだか、でも、リュウは勇者ってガラじゃない気がするよ、なんか似合わなそう、”


酷いぞ、さっきは俺を持ち上げておいて、はっ、まさかお前敵なのか?

“そんなわけないじゃないかー、オーガ戦ではボクがいなかったら負けてたでしょー”


その説は感謝してます。えーと、多分アレが賢者か、黒髪に、黒目、装備は大きめのローブ、それと高そうな大きな杖と、いかにも賢者って感じだな、俺の予想と違う点はジジイじゃなくて同い年位の女の子ってところだな、

“うん、ホントだね、お爺さんじゃないんだね、そこはボクも同意だね、”


で、他の人はっと、えっと重そうな鎧をきて、大きな斧と盾を持ってるゴツイオッサンに、魔女っぽい帽子を被り、魔女っぽい服を着ている、女の人、てかあの人魔女だな、

てか強そうだなー、この国の先鋭を集めたって感じだなー、でもなんで4人なんだろうなー、絶対数いた方が強いのになー

“あれじゃない、えっと、魔将退治をしてくれる人を国で募集したんだよ、それでも集まったのがあの人たちって事じゃない?”


なるほど、それなら納得だ。魔将なんかと戦いたくないからな、うん、


とパーティの分析をしていると勇者が立ち止まり、演説を始めた。


「僕は西の魔将グラウ・ザガールを倒し、この国に平和をもたらす勇者ギルドです。奴は長年この国の人々を武器にし、苦しめてきました。ですがそれももう終わりを迎えます!奴はすごく強いです。かつて奴に挑んだSランク冒険者10人のパーティが壊滅させられました。しかし、僕ら4人は一人ひとりがSランク冒険者10人に相当する力を持っています。」


周りからうおぉぉぉぉぉと歓声が上がる。


「ですのでもう安心です。僕らが絶対に奴を倒してきます。必ず忌々しき魔将の首を討ち取ってきます!!」


パチパチパチと拍手が巻き起こる。

しかし、大した自身だな、あれか、イケメンは何でも出来るって奴か、天は二物を与えないんじゃなかったのか、

“あれだよ、リーダーシップのあるイケメンは何でも出来るんだよ、生まれた時から勝ち組なんだよ!”


おいおい悲しいことを言うなよ、俺が負け組みたいじゃないか、俺はまだ負けてないと思いたい!


「ここで一緒に魔将に挑むパーティメンバーを紹介します。まず数ヶ月前にこの国にご降臨なされた神の使い、あらゆる魔法を使える大賢者サイジョウ サツキ様、そして彼を怒らせたら待っているのは死のみ、SSランク冒険者『大地の怒り』こと、ゴロウさん、そしてこの国で最も古く、強い魔術師の家系、古代魔法の使い手 ルルク=マジクさんです。」


おいおいおい、ノア、聞いたか今、賢者の名前、

“うん聞いた、ボクも驚いているよ、”

ああ、まさか賢者が俺らど同じ異世界転移者だったなんてな、しかも神の使いとか言われてんじゃん、様付けだよ、様!英雄街道まっしぐらじゃん、ずりーよ、平等にしろよー自称神ー


“リュウは相変わらず神様のことを信じてないんだねー”

ふっ、まあな、手紙に書いてあるだけの神なんて俺は信じない!


「この最強の4人で魔将を倒してきます!!」


「うおぉぉぉぉぉぉおおおおお」

「パチパチパチ」


と再び歓声と拍手が巻き起こる。

なんかアレだなこの演説、部活動激励会みたいだな。


「では、行ってきます。」


と勇者はいい、勇者一行は馬を走らせる。


よし、追うか、

“うん、早く行こう!”


俺はカエデさんに借りた馬に乗る。


「では、必ず帰ってきてくださいね、」

「はい、馬、ありがとうございます。」

「行ってらっしゃいませ」


なんか順調に死亡フラグが立っているのを気にせず、カエデさんに感謝の言葉を述べ、馬を走らせる。外に出て、遠くに勇者パーティがいるのを確認し、それを追う。もちろんフードは着用で、『陰』も発動させている。尾行をするのだ、気配をたつのは当たり前だ。


“なんかこうして見るとストーカーだねー、賢者をつけ回す一人の男、みたいな?”

いや、それ人聞きが悪すぎだからね!俺は自分のために賢者を追ってんの、あれ、これだとますますストーカーくさくね、


“リュウにそんな趣味があったなんて、、、早く自首した方がいいよ、手遅れになる前に、”

ちょっと待てーーー!!なに、俺を犯罪者にしちゃってんの、ダメだよ、そんなの!俺にそんな趣味はないよ!


“アハハ、冗談だよ、ほら、ちゃんと勇者一行を追わないと、”

へいへい、てか、勇者一行速くね?なんかだんだん離されてる感じがするんだけど、


“んー、そう?気のせいじゃない?”

気のせいなのかな?とりあえず追ってくか、


しばらく前の勇者一行を追っていく。道中はたまに出てくる魔物を倒しながら進んでいく。前の勇者一行を見ると先ほどより、差が広がっていた。


やっぱさ勇者一行速いじゃねえか!やべぇ離されてるよ!

“ほらほら、急いで、急いで!さっき悠長に走ってたからだよ”


いや、半分はお前のせいだからね!お前が気のせいとか言ったからだよ、

“うう、ぐすっ、ヒドイやボクのせいにするなんて”


ノアが泣いている。やべぇ泣かしちゃった。ど、どうしよ、どうすればいい?人が泣いた時の対応なんて分かんねえよ、


えっ、ええ、えっと、ごめん、俺が悪かったよ、お前は悪くないよ

“ふふん、分かればいいんだよ、分かれば!ほら、さっさとスピード上げて、GO! GO!だよ!”


くっ、こいつ、嘘泣きかよ、まぁ、良かったけど、泣かせたと思ってヒヤヒヤしたぜ、


馬のスピードを上げて前を追う。


なぁ、ノアさんよ、差が広がる一方なんだが、

“全速力で行きなよ、”

いや、これが全速力なんだよ、

“えっ、そうなの!うわー、勇者一行の馬って凄いね、”

そりゃ、あれだろ期待が高いんだろ、だから国が全力でサポートしてるんだろうな、くそっ、もうすぐ夜になるな、今日の移動はここまでだ、


俺は馬を止め、その場に休ませる。餌を与え、ここで野宿の準備をする。夜は暗く、方向感覚も狂うので、移動は危険なのである。


はぁ、全然交渉できる気がしねぇ、これじゃ魔将と対面しそう、

“明日、明日頑張ろうよ!朝早くから追えば追いつくんじゃない?”

それだ!よし、今日はもう、寝るぞ、おやすみ。


******************************************


だああああああああーーーー!!!もう見えねぇ!なに、アイツら、夜どうし走ってたの?俺ら、朝日が上がった瞬間出発したのに、もう見えなかったんだよ、

“リュウ、落ち着いて、とりあえず魔将の城に向かおうよ、”

もう、向かってる、


今、俺は全速力で馬を走らせている。しかし、一向に勇者達は見えてこない。


ちっくしょう、速すぎだろ、アイツら休憩とかしてんのか、マジで、ぶっ通しで走ってんじゃないだろうな!

“ほんとに見えないねー、あの人たち、すっごいなー”


あーもう、ぜってえ追いついてやるし、はっ、俺の本気見せてやんよ

“リュウって結構負けず嫌いだよねー、頑張ってー”


おう、やったことはないが多分出来るはず、俺に纏わせるのと同じ原理でやれば、大丈夫


俺は風を巻き起こす、そしてそれを纏わせる。自分にではなく、馬に纏わせる。

「『纏風・Ver.馬』!」

ブワッと風が鎧のように馬と自分に纒わり付く。


おお、思った通り出来た。よし、これなら追いつける。

“おお!なんかその『纏風』っての、強くなってるんじゃない?前まではさ、服って感じだったんだけど、今は鎧って感じでカッコイイよ!”


ん、言われてみればそうか、なんか前よりも強度が上がったような気がするが、そうか、なんかカッコイイと言われると照れるな、って、そんなこと言ってる場合じゃねえよ、ほれ、走れ!


馬が先ほどとは比にならないスピードで走っていく。


速えー、超速えー、よし、これならいける、いけるぞ!フハハハハ

“リュウ、なんか序盤でやられる悪役みたいだよ!でも、風の力って凄いねー”


序盤でやられるって、なんだ、ザコか、ザコなのか?いや、俺はあれだ、多分幹部クラスになれるレベルは強い!

“いやー、でも、なんか小物っぽいしなー”


おい、酷いぞ、なんだよ、小物って俺は中くらいだ!

“大物ではないんだね、”


ほら、大物とか緊張しちゃうじゃん、俺はラスボスじゃなくて、中ボス位が丁度いいんだよ、いや、中ボスじゃなくて、あれ?何でこんな話になったの、

“リュウが、なんか悪役っぽい笑い方をした所からだよ!”


なんだ、俺のせいか、なんか記憶違いしてる気がするがまぁいいや、とりあえず飛ばすぞ!

“りょーかい、ボクを振り落とさないでよー”

はっ、俺がそんなヘマをするとでも?

“うん、落としそう”

えっ、酷くね、俺は落とさんよ、多分、

“ボクとしてはその多分をなくして欲しいんだよ、ちゃんと気をつけてねー、”

オケ、じゃ、レッツラゴー!!


勇者一行に追いつくために俺は馬を走らせる。ダッダッダと軽快な音をさせながら馬は野を駆ける。



『纏風』を使って数時間がたった。しかし前に人影はない。


くそ、まだなのか、まだ追いつけないのかよ!どうする?夜も走るか?いや、迷って更に離されたら元もこもない。

“なんか本格的にやばくなってきたね、せっかくストーカーしてたのに見失っちゃうなんてストーカーの風上にも置けないよ!”


なぁ、ノアさんよお前、実は結構余裕あるだろ、俺はツッコミする余裕なんてないぞ、

“あー結構切羽詰まってるんだねー、そりゃそうかあと2週間くらいで死んじゃうもんね。”

ああ、そうなんだよ、余命約2週間、実感がわかないようでなんか焦りもあるんだよ。

“大丈夫だよ!リュウは絶対に助かるよ!大丈夫!”


ノア......ありがとな、よし、行先は分かってる。目指すは魔将の城だ。そこで勇者一行を捕まえる!

“ラジャー”


**************************************


俺は全速力で走り続けた。夜まで走り、朝に出発する、それを繰り返した。

そして、そびえたつ城が見えた。その城は黒く、禍々しい雰囲気を纏っていた。


「あれが、グラウの城、いかにも魔族の根城って感じじゃねえか、」

“不気味だねー、あんまし行きたくないよ”


お前って1回あそこに行ってるよな、


“うん、でもなんか記憶に無くてさ、相手の姿も思い出せないくらいだよ!”


倒された相手の姿を覚えてないって、いや、これも呪いなのか?

“うーん?わかんないや”

分かんないか、まぁいいや、とりあえず城に近づくか。


俺は馬を城へと近づける。すると、城の近くには馬が4頭、魔法で守られていた。


やっぱり、勇者一行はもう来てたか、あいつらがいない所を見るともう、中か、

“そうみたいだね、ボクらも中に入る?”

ああ、ここまで来たんだ、それにもう、呪いの発動まであと5日しかねぇ、もう時間がない!

“そうだね!ここまで来たんだし、勇者達より先に魔将を倒しちゃおう!”


俺は大きく息を吸い込み、スーと息を吐き出す。深呼吸をする。これから敵地へ乗り込む。俺は覚悟を決める。


よし、行くぞ!


俺の戦いが始まる。

大詰め感が出てきました!

面白かったらブクマ、コメント、評価、待ってます!

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