第18話 元気な鍛冶師
「、、、神?」
「せや、『神』や、鍛冶の神様やでー、」
ホントに?中二病的なあれじゃなくて?いや、でも自称ってパターンもあるし、あっ!でもここの店の店主とも言ったしなー、うーん、わからん、
「なんや、その顔は信じ取らんなー、ほれ、これが証拠や。」
ヘルダは赤い宝石みたいなのを見せてきた。
、、何これ?これが、証拠なの?いやいやいや、そんなの俺に見せられても分からないよ!だって『神』と呼ばれる称号があること自体初耳だし!いやー、でもこの宝石綺麗だなー本物なのか?
「兄ちゃんまさか、その顔は、『神』についてなんも知らへんとちゃうん?ほんまか!ほんまなんか!」
「は、はい!失礼ながら知りません!はい、すみません」
おおっとここでスーパーコミュ症発動だ!やっぱり初対面の人との会話は緊張するよね、こうなるのはしょうがないよね!
“リュウって、そんなに喋るの苦手なの?ボクとはちゃんと話せてるじゃん”
いやー、なんかお前は違うっていうか、剣だからかな?まあ、なんか大丈夫だった。
“そういうもんなのかな?まぁいいや、ヘルダさんがなんか言ってるよ”
「ほんまかいな、ええか説明したる、よう聞いとけや、この世界にはなその道を極めし達人のことを賞賛して『神』って称号をあたえるんやで、」
そうなのか、でもどうやって『神』の称号って貰うんだ?誰が任命とかするんだ?
「ちなみに『神』の称号を与えるお人は本物の神様やで、1年に1度この世界に降臨なさるんや、その時に『鍛冶』『商業』『狩り』『豊穣』『伝令』を極めしものに『神』の称号と共にこの宝石をお与えになるんや」
“神様が任命するんだね、”
そうみたいだな、なんか信じられん
「で、ワイは神様に鍛冶の道を極めた言われて、『鍛冶神』の称号を貰ったんやで、わかったか?」
俺は頷いて答える。
「そこでや、1食のお礼にワイが兄ちゃんになんかタダで作ってやろ思てな、どや、悪い話やないやろ?」
確かに悪い話ではない。下に売っていた武器は最低金貨10枚もする。それクラスのものを無料で作ってくれるなんていい話過ぎる。「なんか騙されてそうだなー」
「なんや、ワイが騙すとか思ってんやろ、心外やなー」
なっ、なに?コイツ俺の心を読みやがった、だと!
“いや、リュウ最後の方声が出てたよ”
マジかよ、呟いていたのか、今度からは気をつけよ!
「まあええや、ワイが兄ちゃんのためになんか作って証明したるわ、なんかええ素材とか持ってへん?それで作ったるわ」
素材ねー、大体は売ってるしなー、今特に何も、、、あっ!オーガの角があった、なんとグットタイミングなのか、今日はなんかついてる気がする。うん、気のせいだな、朝と今でプラマイゼロってとこかな、
「じゃあ、これで、」
俺は小声でオーガの角を渡す。
「角やな、、、おお!兄ちゃん、これどこで手に入れたん?こんな上等なもの見たの久しぶりやで、」
「ええと、オーガです。オーガ亜種を倒した報酬で貰ったんです。はい」
いきなり聞くなよ、あと大声出すなよ、ビックリするだろ、もう、
「まさか兄ちゃんが、あの白オーガ倒したっちゅう『一刀両断』か?」
えっ、なに?噂になってるの?少し嬉しいな、でも『一刀両断』の名で知れ渡ってるってのはホントに恥ずいな、いや、マジで、
とりあえず頷いておく。
「せやったか、いやー、なかなかのお人に出会ったな、しかも素材は上物、これは腕がなるわー、せや、兄ちゃん、気に入ってる服とかあらへんか?ちょっとばかし貸して欲しいんやけども、」
服とか何につかうんだろうか?まさか、素材にするとか!それは困る。
「そんなに怖い顔せんと、服は破る気も見た目を変えることもせえへんから安心しや、ちょっとばかし、強化するだけや、」
見た目を変えずに強化とかできるのか?てか、強化って概念があったのか、ここ、まぁ、とりあえず任せてみるかー、なんだかんだで信用できそうな人だし、
俺はお気に入りの赤いパーカーを渡す。
「ほな、おおきに、早速作業に取り掛かるでー、明日またここにこれを持って来てくれや、」
とヘルダは俺に名刺みたいなのを渡してくる。どうやら予約証明みたいなものだ。
俺はこの店を後にする。
“いやー、でも驚いたね、『神』って呼ばれてる、鍛冶師の最高峰に会えて、”
ああ、ホントだよ、他の4人はどんな奴なんだろうか?気になるな、
“そうだね、会ってみたいよねー、”
見てみたい気もするが、なんかキャラ濃そうだし、却下で、てか、もう夜か、はぁ、また、この街で一泊ですか、
金銭面と時間について考え、ため息がでる。もうこの時間なので安い宿はどこも空いていない、よって、リュウト達はまた高い宿に泊まった。
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「よ、よし、ノア、入るぞ、準備はいいか?」
“ボクはいつでもOKだよ!、でもなんか緊張するね、改めてみるとすっごい大きい店だもんね、”
ああ、ホントにこんなとこに入りたくない、帰りたい、
“ダメだよ、それじゃあ、せっかくの角と、パーカーが無くなっちゃうんだよ!”
はっ!それは困るな、よし、入るぞ、大丈夫、俺はいける、いけるぞ!
“うわー、何だかダメな感じしかしないよー”
ノアの言ってることは気にせず、店の中に入る。中には高価な服を纏った方々が武器や、防具を見ている。
ゲフッ、す、すごい場違い、俺だけ浮いてるよ、絶対、すごく泣きたくなってきた。
と俺がダメージを受けていると店員らしき人が声を掛けてくる。
「いらっしゃいませ、お客様。今回はどういったご要件で?」
はい、約 ここはオメェみたいな庶民が来る場所じゃねえんだよ、帰れ、に聞こえるな、だが、今の俺にはこの予約証明書があるんだよ!どうだ、参ったか!
心も中で勝ち誇ったようにし、俺は予約証明書を見せる。
「ーーッこれは!まさか、お客様、こちらへ」
店員は驚き、急いで、俺を別の場所に案内する。
店員が、ドアをノックし、
「失礼します、ヘルダ様、お客様がお見えです。」
「おう、はいれ!」
訛った返事がかえってくる。
「おう、ようきはったな、リュウトはん、ちゃんと出来とるでー、ワイにとって一二を争う出来やな、ほんまいい仕事させてもらいましたわー」
そういってヘルダが、出してきたのは俺のパーカーと白いガントレットだった。
「まずこの小手から説明や、これはリュウトはんがもってきはったオーガの亜種の角で作った小手ですわ、名前は『妖手・白鬼』と言ったところやな、効力としては、攻撃力上昇、防御力上昇、更に『砕』の文字を入れさせて貰いました。」
ん?文字を入れるってなんだ?どんな効果があるんだ?
「続きまして、この服の説明です。この服には『防』、『速』、『陰』、の文字を入れました。どや、スゴイやろ」
うーむ、やはり分からんな、文字とは何だろうか?
「.......あの、質問何ですが、文字ってなんですか?」
俺はおずおずと聞いてみる。
「文字とは武器、防具に眠る潜在的な力を呼び起こしたものや、『鍛冶神』のワイだけ使えるんやで、スゴイやろー、で、白鬼に付与したんは『砕』、これはうーん、口で説明より、見せた方がええな、ちょっとつけてくれや」
俺は白鬼を手につける。
おう、ピッタリだ。おお!何だか強くなった気がする!
「で、ちと、これを殴ってくれへんか?」
ヘルダが出したのは火球だった。
え?魔法?それを殴ると。それが出来るのか?
「ほな、いくでー、ほい、」
問答無用で火球を、投げてきた。
くそ、やるしかないのか、怪我しませんように!
俺は右手を引き、構えをとる。ハァー、と息を吐き、一気に手を前に出す。ただの正拳突きだ。火球に拳が当たると火球は霧散した。
「どや!スゴイやろ、これが、『砕』の効果や、ものを壊せるだけでなく、中級位の魔法なら、このように粉々に出来るんやで、」
凄いなこれは、魔法殴るとか、なんかカッコよくない?
「で、『防』が、防御力上昇の効果やな、魔法耐性も付いとるで、あと破れない、『速』は、素早さが上がる。『陰』は、相手から視認されにくくなるちゅうわけや、」
おお!俺のパーカーがかなり強くなってる。これは実際に使えるという事だな!素晴らしい、1回飯奢っただけなのにこんなに貰えるなんて、人助けはするべきだな、うん、
“はじめは見捨てようとしてた癖にー、現金だなーまったく、もう、”
それはきっと気のせいだよ、俺は善良だよ、
「どや、気に入ってくれたかいな?」
「ああ、ありがとう、」
「また来てくれやー、まっとるさかい、料金安くしたるでー、」
「感謝するよ、また、」
「ほな、さいなら、きーつけていきーや、」
俺はヘルダに手を振って店を後にする。
“なかなかいいものを貰えたみたいだね、リュウご機嫌じゃないか、”
ああ、よし!じゃあ、今度こそ魔法国家目指して、行くぞ!
“おー!次の街ではどんなことが起きるのかな?楽しみだなー”
何も無いことを祈ろうぜ、一応俺、余命77日なんだからさ、
“いやー、ごめんごめん、ついついね、でもリュウは死なない気がするよ、”
そうか、そう言ってくれると俺も嬉しいぜ、さあ早く行こう、俺の命が尽きる前に、
よろしくお願いします!




