表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロのアムニション  作者: ななし
15/48

15話

「これで本当にできるの?」



アイリスはそわそわと俺の様子を見ていて、落ち着きがない。

上手く炊けるかどうかはともかくとして、これで完成はするはずだ。



「心配しなくてもこれで大丈夫なはずだ。まだしばらく時間かかるから俺は様子を見てるが、アイリスは見てなくてもいいんだぞ?」



ただ待っていたって疲れるだろうし、座っていてくれていた方が気を使わなくて済む。



「私が食べたいから作ってくれてるんでしょ?それなのに私だけ座ってられないわよ。それに蓮のことだって知りたいし、出来上がるまで付き合ってもらうわよ」



「なんでそんなに俺のことを知りたがるんだ?」



自分で言うのもなんだが、少し目が鋭いだけで、どこにでもいそうな顔立ち、東人ならではの黒髪に纏まりのない髪型、服にしたってフードを着ているし、脱いだってほとんど黒一色の長袖長ズボン、どれをとってもそこまで知りたがるような要素はない。



「べっ別にいいでしょなんだって!蓮は余計なこと考えないで話してくれたらいいのよ!」



そんな真っ赤な顔で一気に捲し立てられても困るんだが、だいたい教えてもらう奴がなんでそんなに偉そうなんだ。



「まぁいい、先に言っておくが俺の両親に関してきいたら俺は何も答えないからな」



「蓮の両親?……蓮が聞いてほしくないなら仕方ないわね。答えられることだけでいいから蓮のことを教えて?」



「わかった何から聞きたい?」



「そうね。それじゃ……」



それから米が炊き上がるまで、本当にアイリスは俺のことについて聞いていた。


飽きたりしないのかとも思ったが、やけに嬉しそうにするもんだから、俺が今まで何をしてたとか、どんな場所に行ったことがあるだとか、友達はいるのだとか、好きな食べ物に至るまで質問攻めにあった。


米が炊き上がったことでようやく解放してくれた。


興味は俺から米に移り皿によそった白飯を見て瞳を輝かせていた。



「あんな固そうなものがこんなふうになるのね!ねぇ蓮食べていい?」



「ああ、その皿によそったのは全部アイリスのだ。俺のはこっちにある」



俺のぶんをよそった白飯をアイリスの皿の隣に置く。



「じゃあ急いでテーブルに運ぶわね!」



そう言ってアイリスは俺のぶんの皿も持ってスキップするように行ってしまう。



「急ぐのはいいが転ぶなよ?」



一応注意はしたが返事がないから聞こえなかったかもしれない。


俺はやれやれと肩をすくませながら、アイリスの後を追った。



「ねぇもう食べていいわよね!?」



丸テーブルへと移った俺とアイリスは、向かい合う形で座り、テーブルの上では白飯が湯気を昇らせていた。


もはやだめと言ったところで食べるのはやめそうにはないが、それでも俺に許可を求めてくるあたり律儀なやつだ。



「まぁそんなに期待せず食べてくれ」



「はむっ!」



許可を出したとほぼ同時に、アイリスは白飯をスプーンですくって口に放り込む。



「んーー!あつっ」



そりゃ炊きたての白飯をあれだけ勢いよく口に放り込んだら熱いに決まっている。


何か新しい生物のまねをしてるかのように、口を開けてパクパクしている。



「少しは落ち着いて食えないのか?」



「うっうるさいわねっ……!はふっ……初めてなんだから仕方ないでしょ!」



「そんなもんか?んで味のご感想はどうだ?」



「んー期待した程じゃなかったけど、ほんのり甘味があって美味しいわね」



「まぁそんなに味がするもではないからな。これは単体で食べるより他の料理と一緒に食べた方が旨い」



白飯だけ食ったって味気ないのは仕方ない。

食べなれてる俺だって白飯だけで食ったのは初めてだ。



「確かに何かに合わせると良さそうな食べ物ね。食べさせてくれてありがとう蓮」



少量しか炊かなかったからあっという間に食べ終えたアイリスが、嬉しそうに微笑んだ。


つい見とれそうになってしまったが、頭をふって邪念を打ち消し、残りの白飯をかきこむ。



「喜んでもらえたならよかった。さてと、そろそろ俺は買い出しに行きたいんだが構わないか?」



泊まる宿は決まったし日が暮れる前には、必要なものは買っておきたい。


結界用に魔力の塊である魔力結晶も買い足しておかないと、危険な場所での野宿には必要不可欠だ。


空になってただの袋となってる食料袋も、空間術式を記憶させた魔器を手にいれたい。


金額が高いから渋っていたんだが、これからのことを考えると、身体1つじゃ運べる荷物には限界がある。


師匠が置いていってくれたお金の大半を使うことになるが、必要な出費として納得するしかない。


武器に関しては既にあるから必要はない。

仮になかったとしても刀なんか売ってないだろうが、後は靴を買い替えたいのと、食料を手にいれたいところだ。


それに、白飯を少し食べただけじゃ腹は脹れてないし、何か旨そうなものを食いたいとこだ。



「それは私が止められることじゃないからいいんだけど……ねぇ着いていっちゃだめ?」



アイリスは寂しそうに上目遣いで俺を見上げてくる。



「着いてくるのは構わないが、買い出しするだけだぞ?それに店はいいのか?」



「お店はどうせ蓮以外にお客さんなんて来ないからいいわよ。着いていってもいいなら急いで洗い物終わらせるから少し待ってて!」



そう言って皿をもって視界から消えていくアイリス、しばらく待っていると洗い物を終えたアイリスがやってきた。



「もう大丈夫なら出るがいいか?」



「うん、大丈夫。じゃあ行こっか?」



「あいよ」



俺は宿屋を出てすぐに辺りを見渡す。

後ろからアイリスがついてくる気配を感じる。

そして、俺の隣に立つと横から俺の顔を覗き込むように見ると口火をきった。



「どこから行くの?せっかく付いていくんだから案内してあげるわよ」



「そうだな……まずは空間術式を記憶させた魔器が欲しいから魔器屋に案内してもらえるか?」



まずは、あれこれ買うと荷物になるだろうから、空間魔器を買うのが先だろう。



「空間術式の魔器!?えっと……値段わかってて言ってるのよね?」



「当たり前だろ。心配しなくても師匠が置いていった金がそれなりにある」



「そうなんだ……蓮の師匠ってお金持ちなのかな?」



「金持ちって感じじゃなかったが……まぁそれはいいだろ。とにかくまずは魔器屋に案内してくれ」



「わかったわよ。気にしたって仕方ないないものね。案内するからついてきて」



そう言って歩き出すアイリスの少し後方を俺は歩く、広い街道を進むこと数分、途中雑貨屋や陶器を売ってる店などを通り、不意にアイリスが立ち止まった。



「ここか?」



入り口は質素な扉が1つ、右隣には大きなショーウィンドウあり、見覚えのある魔器がいくつか見える。



「そう、ここが街で唯一の魔器屋コルトールよ」



上を見上げてぶら下がった看板を見ると、確かに魔器屋コルトールと書いてある。



「とりあえず入ってみるか」



俺は扉を開きアイリスを先に中へ入れ、その後に続いて店の中へと入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ