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イセカイ探偵ー閃木魁翔の事件簿ー  作者: 結佐
第1章 知らない天井だ
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知らない天井 5

「やぁぁぁぁ、アストリムぅぅぅ。何か言いたいことはあるかい?」

「ふん、日ごろの行いが悪いから疑われるのだ。そんな怪しい格好をしておいて疑われないとでも思ったのか?」

「ああ、なんて口の減らない男だ!まあいい。うちの助手は役に立つだろう?」

「まるでお前が二人居るかのようだ。ああ、いい意味ではないがな。」

「まあまあ、落ち着いてください、二人とも。」


「そうだ。それにアストリムって言ったか?どう考えてもお前が悪いだろ。一歩間違えば無実の罪の男を逮捕することになるんだ。目先の情報だけで物を考えて行動するな。立場的に力もある。お前が間違っても現場でお前を正せる人は少ないんだ。もっと頭を使えよ。だからクリスに脳筋だと言われるんだ。」


「ぐぐっ…。」

「おお、よく言ったね助手よ。僕の見込んだだけはあるぞ。」

「いいすぎな気もしますが…。」


「言い過ぎなものか。さっきから見ていると粗暴さが目立つ。間違いを認めて撤回することができるのはいいが、口調が強い。立場というものを利用しているのにもかかわらず、冷静な判断を下しているとは言いがたい。言葉の端々に棘がある。良い事だとは言えないな。」


「さっきから言わせておけば…なんだお前は。何様のつもりなのだ。お前のような男にそんなことを言われる筋合いはない!」


「信頼関係の築き方を履き違えているといっているんだ。指摘されて青筋を立てているようじゃ、成長は望めない。まあ説教はこのくらいにしておいて、だ。話を戻す。」


「クッ、覚えておけよ。で、助手、そこまで私に言うんだ、犯人の目星くらいついているんだろうなぁ?」


「ああ、もちろんだ。」

そう僕が答えた瞬間、周りの人間がこちらを見やる。

僕はそれを気にせず、自分の考えを述べることにした。


「フォリス。重力操作の魔法を使えるのは少ない、といったな?」

不意に訊ねられたフォリスは、あたふたとしながらも、「え、ええ、そうです。」と答える。


「だからこの魔法使い探偵が有力候補に上がったわけだ。そうだな、アストリム。」

続いて、アストリムにそう問いかける。

「ああ、そのとおりだ。だが、この奇異な格好の犯人有力候補はお前の証言によって除外された。」


「うん、そうだね。まあそもそも、僕は人を害するなんてとてもとてもできないよ。」

クリスが口を挟む。言っていることが本音なのかは分からないが、事実そんなことはどうでもいい。


「では考え方を変えよう。フォリス、アンタがもし犯人だとして、重力操作によって作られているこの状況をどう利用する?」

「ええ、それは…そうですね、私だったら、別の方法で犯行に及んだ後、自分が疑われないように…」

思ったとおりの答えをしてくれる。

フォリスは考え方がまっすぐのようだ。ひねくれていないので、言いたいことを言わせやすい。


「ああ、そうだ。当然、あんな場所に対話機が置かれているんだ。利用しない手はないだろう。僕だったら、別の手段で犯行に及び、重力操作の魔法を使える人物を犯人に仕立て上げる状況を作る。」

「…つまり、どういうことだ?」

「重力操作の魔法を使える人間は数少ない。この現場の状況から考えて、重力操作の魔法を使える人間なら可能である方法を使ったと思わせられるよな。」

「そうだな。」

「だとすれば、だ。たとえば、人を奥の壁にぶつけるほどの風を生み出すことができる魔法を使える人間はいるのか?」

「居ないことはないですね。風の魔法を使える人間は、それほど少なくありませんから。」

「では、水分を操作し、液体を空中に浮かばせることができる人間は?」

「ええ、それも可能です。」

「では、それらいずれかの魔法を使える人間で、なおかつこの家の構造を知っている者が犯人だ。」

「…ふうん。なるほどね。」

「…成るほどな。」

「え、どういうことですか?」

と、フォリスが訊ねた。


「たとえば、犯人が衝撃魔法を使えるなら、重力操作が効いている空間の中で、血痕がある壁と自分を挟んで魔法を発動し、壁にたたきつければ同じような状況が完成する。液体操作が可能なら、鈍器か何かで頭を盛大にぶん殴ったあと、飛び散る血液に対して魔法を発動し、奥の壁に付着させた後、被害者の体をそこにおいておけばいい。」


フォリスは、「成るほど、成るほど!」と頷いている。


「ちょっといいかい?」

しかし、クリスはお気に召さなかったようである。


「なんだ?」


「重力操作の魔法がかかっている状態なんだから、衝撃で吹き飛ばした後だろうと、血液を付着させた後だろうと、被害者の体は壁につきっぱなしってことにはならないはずだ。血液だって下に流れる。この現場を見る限り、血が引きずられた様子も、垂れた様子もない。だから、君の推理はいまいちピンと来ない。」


クリスの言うことももっともだ。だがしかし、だからこそ確認すべきことがある。


「ああ、それなんだ。クリス、例の部屋でゲームをしたのは覚えているか?」

「ああ、覚えてるよ。」

「あのとき、魔法は解けたよな。」

「うん、解けたね。」

「なぜ解けた?」

「そりゃあ、操作範囲から対象が出たからさ。一ミリでも対象が範囲から出れば、魔法は解ける。」

「そうだろうな。つまり、重力操作の魔法は、範囲指定で、なおかつ指定した物体がその範囲内に存在していることを前提とする。」

「それで間違ってないよ。」

「だとすれば話は簡単だ。犯人は魔法を使った後、術者である被害者本人を範囲内から出せばいい。」

「ってことは、一度被害者の体は部屋から出たってことになるけど。」

「そうだ。だとすれば、前者の風魔法は選択肢から除外できる。液体を操作することができる人間なら、それは可能だ。」

「ふむ。なるほどね。それなら僕に文句はない。」

「ということだ。」


「つまり、液体を操作でき、この家の仕組みを知っていて、鈍器を持っていても隠せる、もしくは、持っていても不思議じゃない人物が犯人、ということだな。」


「そうなるな。これで、目星はつくんじゃないか?」


「…非常に不愉快ではあるが、認めてやろうじゃないか。フォリス、理解できたか?」

「ええ、バッチリです。指名手配、かけますね。」

「うむ。というわけで探偵諸君、捜査助力感謝する。結果は追って報告しよう。」

「ふふふ、期待してるよアストリム。さて、じゃあ帰ろうか、カイト。」

「そうしよう。」


そして、クリスと僕は、例の木の家へと戻ることとなった。

道中、話すことといえば今回の事件のこと。


「いやー、僕がついたころには謎を解明しているとはね。思った以上に優秀だよ、君は。」

「この町じゃよくあることなのか?」

「ああ、事件のことかな。いや、滅多に起こらないさ。非常にレアケースだよ。」

「そうか。そういえばクリス、アンタの友人が困っていたことがあったよな?」

「ああ、あったね。」

「なんだったんだろうな?」

「多分、お金の都合じゃないかな。彼、あんまりお金ないから。」

「そうか。…借金でもあったのか?」

「それなりに、だね。返していない人も居るって言ってたし。」

「だとすると、貸している人間の仕業かもしれないな。」

「あり得るね。」

「まあ、だとしても無用心だな。そんなやつを家に入れるとは。」

「うーん、どうだろう。君ならどうだい、いつまでも金を返さない人間の家に入りたいなら。」

「ああ、そうだな。脅して入るか、金はもういいと言って家に入るか。」

「あはは。そんなことしたって、襲おうとしたら逃げるよ。」

「そうだな。僕が被害者だったら、そんな素振りを見せたら自分にだけ重力魔法を使って対話機のとこまで行くよ。」

「まあそしたらあきらめるよね、普通。」

「諦めきれないだろうけどな。上に逃げようとするやつの足を掴んで引き摺り下ろそうとか…あ。」

「…ねえカイト?」

「ああ、思った。足を持って自分側に連れ戻そうとしたら…」

「魔法の範囲外の人間に足を捕まれて範囲外に体が出て…」

「その勢いのまま頭を床に…」

「びっくりするよね、そりゃ。」

「僕だったら逃げる。…クースタシエに連絡するって言っても、対話機は天井付近か。」

「悲しきかな、犯人は天井を仰いだわけだ。」

「犯人は聞くよな、ほかでもない被害者に。ほかの対話機はどこだ?連絡しないと。」

「被害者は言うよ。」

「天井にしかない。天井だ。天井。」

犯人の手は届かない。なら、逃げるしかない。

「し、知らない。俺は、知らないぞ。知らない!」

「天井だ、天井にある…。」


「知らない」「天井…。」


駄洒落か!


というわけで、推理物初挑戦でした。


非常に拙いですが、こんな感じでやっていきます。


よろしくお願いします。

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