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イセカイ探偵ー閃木魁翔の事件簿ー  作者: 結佐
第1章 知らない天井だ
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知らない天井 2

さて、こうなってくると話は別だ。出入口のない部屋に閉じ込められるとはまた不可思議な話だが、生憎と家から出入りせず過ごす生活を続けた僕にとってはものすごい皮肉であることは間違いない。


勿論、出入りできないという状況に立たされるというのは何ともはや初めての経験であるが。


改めて部屋の中を見渡してみる。


状況は変わらず。だとすると気になるのはやはり机の上。


介抱してもらった義理があるとはいえ、流石にこのような状況に陥ったのでは情報収集をしなければならない。故に、僕はその書簡を見ることに決めたのであった。


最も、内容を見ればその行動は間違っていなかったと確信できたのだが。


書簡には、こう記されていた。


「奇異な服装の男へ。

君は状況が読めているだろうか?

君は森のはずれで倒れていた。なぜあんな場所に倒れていたのかは謎だが。私はそれを見つけて介抱した。だから君は屋内にいるのだ。

さて、君を助けたということは、君は私に借りがあるということだ。

従って、今すぐ君に借りを返していただこうと思う。

そんな訳で、まずは君の頭脳を試したい。

この部屋は、出入口がない。窓も扉も偽物だ。

この部屋のものはすべて偽物…いや、この書簡だけは本物だが。

さて、偽物だらけのこの部屋から、君には脱出をしていただこうと思う。

そうそう、ヒントを一つだけ。この部屋には一つだけ魔法をかけてある。

さて、それでは早速始めてくれたまえ。

私はそれを楽しむとしよう。」


成程、試されているというわけか。

文章を見るに、この脱出ゲームは序の口のようだ。これを解いても僕は命を助けてもらった借りを返さなければならないようである。


まあそれはおいといて、とりあえず脱出を考える必要がある。


まずは、手紙の内容から得られるヒントを拾っていかなければ。


「奇異な服装の男へ。」


この部分は間違いなく、僕に対しての手紙ということを指している。


「君は状況が読めているだろうか?

君は森のはずれで倒れていた。なぜあんな場所に倒れていたのかは謎だが。私はそれを見つけて介抱した。だから君は屋内にいるのだ。」


成程、わかる限りでの状況説明をしてくれているわけだ。当然、倒れるまでの状況は僕の方が知っているだろうから、その後のことを書いてるんだな。助け主の誤算は、僕が転生者で倒れた場所がその森ではないということだ。


それはさておき。


「さて、君を助けたということは、君は私に借りがあるということだ。

従って、今すぐ君に借りを返していただこうと思う。」


なんともまあ押し売りかとも思うが、聞くに僕は森の中で倒れていたのだ。命を助けてもらったというのであれば、恩は返さねばなるまい。


さて、ここからが本題である。


「そんな訳で、まずは君の頭脳を試したい。

この部屋は、出入口がない。窓も扉も偽物だ。

この部屋のものはすべて偽物…いや、この書簡だけは本物だが。

さて、偽物だらけのこの部屋から、君には脱出をしていただこうと思う。

そうそう、ヒントを一つだけ。この部屋には一つだけ魔法をかけてある。

さて、それでは早速始めてくれたまえ。

私はそれを楽しむとしよう。」


まず条件の提示がある。

出入口がない。そうはっきり書かれている。窓も扉も偽物だ。それは確認したからわかっている。

偽物だらけの部屋。そこから脱出する。おそらくヒントはこの書簡だけ。


この部屋には一つだけ魔法をかけてある。この一文にはいくつか解釈の仕方がある。

ひとつは、トリック。

ひとつは、本当に魔法をかけてあるということ。

そして、もうひとつは、この部屋にある仕掛けを解くと魔法が解けるというパターン。


最後の一文から察するに、助け主にあたる人物はどこからか僕を見ているということだ。

僕の頭脳が使い物になるかどうかを確認するというのであれば、僕が謎を解き、この部屋から脱出した時、僕を迎え入れる形になるはず。


つまり、脱出が叶う場所から僕の、いや、部屋の全貌が見渡せる可能性があるということだ。


で、あるならば。その場所はどこか。天井、もしくはそれに近しい高い場所。となると、窓は除外だ。扉も高いとは言い難い。

天井。穴が空いているわけじゃないが、十二分に怪しくはある。


僕は机に乗った。そして天井に手をかざす。天井は抵抗せず、僕の手を受け入れた。瞬間、壁は床となり、床は壁となり、天井もまた壁へと変貌する。


同時に、僕は顔面から壁にぶつかった。いや、壁であったものが、地面へと変わった。


異世界とは、こうも不可思議な場所なのか。重力の向きを90度変化させることができるとは考えもしなかった。


そして、天井だったその場所は天井のように見える幻が浮かんでいる出入り口へと変化したのだった。


「いやー、おめでとう。思ったよりも早かったね。」


その幻の向こうから、声が聞こえた。


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