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僕達は神様を探してる  作者: 巴瑞希
東大陸篇
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5.砂漠の国 肆

「私はユーリ君はアルタ坊やよりしっかりした子だと思っていたんだけど?」


これからは貴方も坊やと呼ばないといけないかしらと、整った綺麗な顔にそれはそれは綺麗な作り微笑を浮かべてシェビィさんは言った。

 綺麗な青空の髪の下には、きっと青筋が立っているに違いない。


 僕の隣には、象牙のような肌に燃え盛る炎のような美しい赤髪をした美少女が口をきゅっと引き締めて小さく縮こまっている。

 僕は僕で、シェビィさんの言葉にちょっとだけ後ろに隠れたい気分になった。


「事情、説明してもらえるんですよね?」

「……はい」




 長い赤毛の女の子、というのは、つい先程掲示板で見た手配書の人相だ。つい声をかけると、彼女はすごい速さで逃げ出し、僕も慌ててその後を追った。

 人気のない路地裏で、日除けの外套を羽織った自分よりやや小さな彼女を追いかける。

 彼女が何か短く数言つぶやくと、白い光が彼女からすっと広がった。

 その光は僕を避けて・・・・・広がると、周りに強い風が吹いた。


「な!?」


 何やら驚いた様子の彼女に僕はそのまま走って距離を詰め、細い腕を掴みとった。


 のが、ほんのつい先程の話である。



「そのまま警邏に引き渡せば良かったのに」


 いくらか報酬がもらえるわよ? と、どうやら困った子供・・・・・を見る時の癖らしい、右手を頬に当てて呟いた。


「それが、どうも事情があるみたいなんですが、僕にはちょっと意味が分からなくて……シェビィさんの方が詳しいと思って連れてきたんです」


 そう言って僕は少女に目配せする。彼女は小さく頷いて、代わりに言った。


「神様を、探してるんです」

「あなた、加護は得ているでしょう? 一人で雨を降らせるだけのマイミリクの加護と、何か風の神の加護。一体何を探しているの?」

「私を、」


「――私を呼んでいる、神様を探しています」


 彼女は怖がっている顔を無理やり隠して、シェビィさんをしっかり見据えた。睨んでいるようにも見えるが、多分こわばっているだけだな。

 一方でシェビィさんは、非常に頭が痛そうに眉間を抑え、深く深くため息を吐いた。


 正直僕にはさっぱり意味がわからなかったけれど、シェビィさんには理解できたらしい。

 青空の髪の下の白い肌が、光の加減などではなくちょっと青くなっているように思えた。


「……ミコ」


 シェビィさんがポツリとつぶやく。……巫女?


「え? いえ、私は巫女ではありません。神殿に所属しているわけでもないですし」


 少女が慌てて否定すると、シェビィさんはそれはそれでまた困った顔を深くした。


「神に仕える神官や巫女ではなく、神が選んだ人間のことを神子と呼ぶのよ。もしかしたらエルフの間だけの言葉なのかもしれないけれど……困ったわ、エルフだった曾祖母もあったことはないって言っていたから、詳しく知らないのよ」


 考えるように瞳を瞑り、ゆっくりと息を吐く。


「神子は何かの役割を神から渡されていて、それを行うために生きる、と聞いたことがあるわ。曾祖母からの伝えだけど、彼女は三百年を生きたエルフだから、そうそう間違っているということはないと思う。

 貴女は、何をなさなければいけないの?」

「わかりません」


 少女が返す。


「わからないのですけど、どうしても探しにいかないといけないって思うんです。私は昔から神様の加護が強くでていて、もしかしたらエルフの血どこかで混じっているのかもしれないんですけど、加護を使う時以外もずっとずっと、生まれでもなんでもない、全く会ったこともない神様が、私をすごく呼んでる。そう思うんです。

 色んな土地に行って、色んな神様に聞いて回りました。私を呼んだのはあなたですかって。

 その度に何か加護が起こっては居たんです。でも私にはそれ以外に神様を探す方法が見つからなくて……」


 最後の方はどんどん声が小さくなっていって、こんな大事になるなんて思わなかったんです、という声はもうほとんど声になっていなかった。

 重たい沈黙が降りる。

 少女は服の裾をギュッと握りしめて、返事を待っていた。


「――あなたですかと問いかけただけで雨になるほど強い加護なのに、貴女の御神はマイミリクではなかったと、そういうことね?」


 少女は頷く。


「ここの神様ではありませんでした。私、行かなきゃ行けないんです。また探しにいかないと……償いが必要なら、探し終わった後で必ずやります。裁きの神に誓っても構いません。でも、今やめるわけにいかないんです」


 鬼気迫る彼女の表情に、シェビィさんは大きく、それはそれは大きくため息を吐いて、


「貴女、名前は?」

「……フリーダと言います」

「フリーダちゃんね。貴女の言葉を信じて王宮に話を付けに行くわ、付いて来て。

 なるべく擁護してあげるから、決して、保身のために嘘をついてはダメよ。

 ちょっとこの子連れて王宮まで行ってくるわ。帰りは遅くなると思うから、食事は取って先に寝てしまってくれる?」


 留守番よろしくね、と僕にはサラリと言って、彼女の外套を手に取ると出かけて行ってしまった。


 家には僕が一人、空気のようにぽつんと残された。



ようやく登場ヒロイン! そして空気な主人公!

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