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僕達は神様を探してる  作者: 巴瑞希
西大陸篇
33/57

3.西の港の神殿 弐

 渡された紙束をパラパラとめくる。領地に関すること、西大陸に共通する法律、ステイン領での主な法律、お金の話、両替の方法、貴族の馬車の特徴、市民権の獲得方法など様々なことが書かれていた。

 お金は主にここカルタナ王国の発行するカルタナ通貨と、北のドレヴァン同盟が発行しているルーヴァ通貨の二種類が流通している。


 カルタナ通貨は小赤銅、赤銅、白銅、白銅板、銀貨、銀棒、金貨となっており、赤銅貨がおおよそ東小銅貨と等価。以後白銅と東中銅貨、白銅板と東大銅貨、銀貨と東銀貨、金貨と東金貨がほぼ等価であり、銀棒は銀貨五枚分の価値を持つ。

 ルーヴァ通貨が……こっちはカルタナ通貨より少し価値が高いな。


 ふむふむと読み進める。お金の価値の変動とかはイマイチよくわからないけれど、当座の問題を解決出来そうな文章は見つけた。


「――冒険者ギルドでは必要に応じて両替を行っています。交換レート、手数料などの相談には応じません。あしからずご了承ください、だって」


 見つけた一文を指差す。

 別の資料を読んでいたフリーダが覗き込んだ。


「なんか変な言い回しね」

「うーん、別の両替商と交換レートや手数料が違っても文句は聞きませんってことだと思うけど、後で聞いたほうがいいかもね」

「そうね……ああ、こっちは加護の使用についてのやつだったわ」



 ――加護の使用は国ごと、領ごとに多少の違いがありますが、多くの都市では街中での許可のない加護の使用が禁止されています。街の外であれば、冒険者証を持っていれば問題ありません。

 ステイン領では街中で加護を使用するためには申請が必要です。下記の図のような紙が貼りだされている商家・荷場などは、従業員全体の申請を一括でしている印です。



 なるほど、勝手に加護を使っちゃいけないのか。真っ先に確認に来てよかった。

 加護の取得については、まあ、“よくある質問”ではないだろうから、後で個別に相談しなきゃいけない。


 にしても、加護。加護か。


 船の中での、気を失う直前の出来事を思い出す。

 バタバタしていてまじめに考える時間がなかったのだけれど、



 僕は多分、初めて、神様という存在に触れたんだ。


 何か強大なものが、そこにあるような、遠くに居るような、不思議な感覚。

 あれ・・が願えば奇跡を起こしてくれるとはとても思えなかったけれど、きっと神様だったんだろう。

 加護といえば、フリーダはどうなったんだろう。こちらも僕が大事すぎてキチンと話しを聞いていない。


 そんなことを考えていたら、ふと顔を上げた彼女と目がかち合う。


「どうしたの? なにか、体調悪いとか?」


 フリーダ、心配しすぎ。




 ギルド職員が僕達のところにやってきたのは、だいたい半刻くらい後だと思う。

 さっきの夜色の髪の男性ではなく、いかにも事務処理係といった感じの、淡いクリーム色の髪を後ろにひっつめた女性だった。


「ギルド職員のフレデリカと申します。よろしくね、ユーリ君にフリーダちゃん」


 はきはきと人当たりのよい笑顔と声で喋る。


「とりあえず、こちらに来たのは収穫祭が目当てですか?」

「収穫祭?」


 僕達は顔を見合わせる。あれ、夏祭りの準備じゃないのか。


「あら、違ったの? じゃあどうして西まで?」


 フレデリカさんはおっとりと顔をかしげる。


「えっと、実は……」


 東大陸の主要な都市は大体回ってしまったので、西まで来たことを話す。流石に神様を探しにあっちこっち行き来している人なんてめったに居ないのだろう、フレデリカさんは目を丸くしていた。


「それは……めずらしいですね。ということはこちらにも長期に滞在することはないんですね」

「僕達が探しているのがこちらの神様でなければ、そうなる予定です。えっと、収穫祭があるんですか? 夏祭りじゃなくて?」


 僕は外の様子を指差して尋ねる。


「ええ。ああそうか、東では収穫祭は九や十の月だったわね。西の方では八の月の終わりが一般的なの。あと十日ほどだから、よかったら見ていくといいわ。三日かけての大きなお祭りだから」

「なるほど、それでギルドが忙しそうなんですね」


 収穫の時期になると一気に人手が必要になって大忙しなのは、つい最近まで事務仕事を手伝っていたから知っている。そこに祭りの準備が加わるのならそれは大変だろう。

 僕の言葉にフレデリカさんは困ったような顔をして肩を竦めた。


「まあ、他にも色々と、ね」


 なんだか含みのある言い方だけれど、東から来たばかりの、しかも仮登録の僕達に言えないことは山程あるだろう。気にしないことにした。



 東通貨をカルタナ通貨に両替してもらったり、宿屋を紹介してもらったり。

 というか、ギルドの建物の上で寝泊まりできるようになっていた。今は祭り特需で人が多くて満室だったから入れなかったけれど、そんな設備があるなんて知らなかった。

 新しいギルドほどそういったものが揃っているそうだ。ここリューイットでは最近改築して追加されたらしい。



「それで、加護の取得をしたいとのことですが」


 とりあえず当面の問題を解決すると、フレデリカさんが改めて言う。


「ギルドでは行っていないの。親から子への口伝以外だと、神殿の管轄になりますね」



 彼女は町の地図を広げると一点を指差した。


ギルドでお話は次回も続く予定です。

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