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僕達は神様を探してる  作者: 巴瑞希
西大陸篇
32/57

2.西の港の神殿 壱

「本当に、大丈夫?」


 翡翠色の瞳がじっとこちらを睨んでいる。


「フリーダ、その台詞さっきから五回目だよ?」


 荷物をまとめながら顔だけ向けて、大丈夫と肩をすくめて答えると、彼女はむぅと顔を歪ませる。


「だって……」

「心配かけてごめん。でも船を降りないわけにはいかないから、小言は降りてから聞くからさ。ね?」

「……うん」

「これでよしっと。そっちはできてる?」

「とっくに出来てるわよ」


 フリーダが小さめの肩掛け鞄を引っさげた上から、大き目の背負袋をしょいこむ。

 僕も同じようにして、腰にいつもの剣が下がっていることを確認して、立ち上がった。


「さあ、出ようか」


 客室の鍵をひょいと取り上げて、僕達は船の上へと上がった。




 僕達と同じような出立ちの人が既に船を降り始めていた。

 船員に船室の鍵と舟券の半券を返すと船を降りられる。

 よく日に焼けた厳つい体のおっちゃんから「大丈夫か」と声をかけられて、なんとも言えない気分になった。


 フリーダもものすごく心配してくれているのだけれど、目が覚めてから体調の異常はないのだ。ちょっと倒れた時に打ったらしい肩が青くなっていたけれど、別にこんな程度の傷ならあちこちにある。頭は打たなかったと思うし、よく眠ったせいか頭はいつもより冴えているくらいだ。


「ご心配おかけしました、大丈夫です」と笑顔で返して、ようやく外の世界へと降り立った。



 ぎしぎしと鳴るハシゴに近い階段を降りて、大陸へ伸びている桟橋に降りる。

 やはりギシリときしむ木の板を踏みしめてようやくやや低い天井と不規則な揺れから開放され、うんと伸びをした。


「お、十二号室の坊主じゃねえか。大丈夫か?」


 後ろから声をかけられて振り返ると、起きた時に丁度様子を見に来ていた船員だった。


「あ、あの時の。ありがとうございました、もう大丈夫です」

「そうか。いやああん時は肝が冷えたぞ。裂け目を越えて暴れる客には慣れてるんだがなあ」


 ひどく騒ぐ女の声が聞こえたのでフリーダが駄目だったと思って様子を見に来たら、汗だくでぶっ倒れて意識のない僕と、その横で僕の名前を呼びつづけて助けを求め続けるフリーダがいたのだとか。

 え、なにそれ。


「あ、はは……。まあ、えっと、ほんとに大丈夫なので。ご迷惑をおかけしました」

「まあ、大丈夫ならいい。あああと、しばらく船に乗るのはやめておけ」

「なんでですか?」

「ぶっ倒れた直後のやつを船に載せようとする船長がいねえよ。値段ふっかけられるぞ」

「うわあ、それは考えてなかったです。あ、冒険者ギルドってどちらですか?」


 船員さんは丁寧に色々教えてくれて、最後に握手をして別れる。

 有益な情報を得て笑顔でフリーダの方に振り返ると、耳を髪と同じように真っ赤にしているフリーダがうつむいて待っていた。


「フリーダ?」

「な、なによ」


 なんか悪い事したかな?と頭にハテナをいくつも浮かべて首をかしげる。直後に理解して、


「心配してくれて、ありがと」

「っ~~~~~~~~!!!」


 フリーダは顔を更に真っ赤にして、桟橋を早足で移動し始めた。


「知らないわよ!! 行くんでしょ!! 冒険者ギルド!!」


 その後ろを僕は早足で追いかけて行く。


 人の多い港にとんと、僕達は西大陸での一歩を踏み出した。





 リューイットはフランダーナともルターナとも違った熱気で満ちていた。

 行き交う人々の装いも運び出されるものもルターナとそこまで変わらないように思うのだけど、そう、例えるなら祭りの前のような――


「お祭でもあるのかしら?」


 フリーダがそう言って周りを見渡す。

 そう思って見てみると、家の窓や店の軒先には同じような色合いの花や布が飾られ、これは確かにお祭りのようだ。


「夏祭りとかかな? まあとりあえず、ギルドに行こう」


 じゃないと何も出来ないから、という僕に、フリーダは頷いて付いて来た。



 冒険者ギルドは相変わらず街の外れ、港の真逆側にあった。ところどころ通ってきた露店などに貼りだされている値段表をチラ見してみたけれど、やはりものの値段が知らない単位で書いてあるように思う。

 両替商がすぐに見つかるといいんだけど。

 僕がひっそりと息を吐いた頃に、ようやくギルドへと到着した。



「フリーダさんにユーリさん、はい、確認取れました。ようこそリューイット支部へ。西大陸はおふたりとも初めてですか?」


 ギルド職員さんは夜空のような髪の男性だった。

 僕らが揃って頷くと、彼は紙束を取り出す。


「東西の大陸の違いをご説明、といきたいところなのですが、あいにくと現在街が色々と忙しいところで、手隙きの職員がおりません。

 こちらがよく質問される内容をまとめた書類になりますので、職員の手が空くまでこちらを読んでお待ちいただいてよろしいでしょうか?」

「はあ」


 紙束を受け取る。一番上の紙に見逃しようが無いほど大きな字で ギルド外への持ち出し厳禁 と書かれていた。


「東西では色々と違うところが多くございます。特に金銭についての問題は後々こじれる原因になりますので、わからないところをそのままにされるとお立場が大変厳しい物になります。慣れるまでは決して無理な行動を起こしてはいけません。よろしいですね?」


 口元は笑顔で口調も丁寧なのに目が笑ってない。

 僕達は若干引き気味に、ハイと頷いて紙束を受け取った。


西大陸に上陸しました。次回いろんな情報を集めます。

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