夢の中
いつか小説を書くのなら、この人の事を書いてみたい、と憧れていた歴史上の人物の多くはこの小説の中に登場します。
私のあたためていたイメージを形にしていけるといいなと、今は心が踊っています。最後にこうしたいという構想はありますが、筆が進むにつれて生きたように動くであろう登場人物たちと二人三脚で綴りたいと思います。
とても長い夢を見ていたような気がする。
あまりにも長過ぎて現実であったのか夢であったのか、それすらも曖昧に感じるほど。どちらであるのかまだわからないほど。
「お方様、ーーお方様!」
彼方の方でもやがかかったように聞こえた侍女の声が、やがて耳元まで届き、ハッと夢から醒めた。
「どうしたの?」
「どうしたのではございません。屋敷をどうするのかと、城をどうするのかと、皆が騒いでおります」
「どう、するのか…?」
「すぐに信孝様の軍勢に取り囲まれてしまうでしょうと、その前にどうするのかと!」
「…軍勢?」
何を言われているのかもわからなかった。でも、屋敷の中がとても騒がしいことに気付いた。
侍女が焦るように両手を使って続きを話している。それも私の耳には入っては来ない。
何が起きているのかわからなかった。でも、
「だんな様が謀反人として討ち取られたのですよ?!」
その言葉に、一瞬で忘れかけていた現実へと引き戻された。力が抜けて片手で胸を押さえて床に這いつくばる。
そうだ。
そうだった。
あの人はーー私の恋は、私の大事な人は、殺されたのだった。