ストレンジャーその2
男は手に握っているメスを見つめていた。彼の名はボーイ・ミーツ・ボーイという。かつては名医として名を馳せていたが、ある手術で患者を死なせてから、彼の人生は変わってしまった。彼の担当した患者は、不治の病で、手術する前に既に死ぬことは明らかだった。もう手遅れだったのだ。しかし患者は貴族の娘だった。
娘の父は、ボーイに怒りをぶつけるように、彼を追い詰め、証拠をでっち上げ、最悪の監獄ベイビープリズンへと彼を収容させたのだ。それ以来、彼は死ぬことも、生きることもできない、無間地獄の日々を送ることとなった。
「俺を侮辱した奴らには必ず復讐する。まずはこいつらを仕留めてから、俺の人生が始まるんだぜ」
ボーイはメスをクルクルと指先で回転させると、それをタクトの右肩に移動させた。
「がはあ・・・・」
タクトは肩を抑えながら苦痛の声を漏らした。
「タクト、逃げるのはやめよう。逆に危険だ」
双葉は馬を止めた。そして拳銃を強く握りしめた。
「来るなら来い」
「来てやったぜマヌケが」
双葉の背後にボーイが出現した。そして彼女の後頭部を蹴り上げると、そのまま落馬させた。彼女の華奢な体が地面の上をゴロゴロと転がって行く。頭部から血が滴り、地面に赤い水たまりを作った。
「まずは一人」
タクトは馬から降りると、双葉を抱え上げた。
「おい、嘘だろ」
タクトは双葉の胸に耳を当てる。心臓は動いている。呼吸もある。ただし脈拍は乱れている。かなり危険な状態であることは、医者でないタクトにも分かる。
「おい、タクトと言ったな。その女、頭部を強打しているように見えるが、さっさと手当てしないと死ぬぜ」
「分かってる」
タクトは拳銃をポケットから出した。そしてボーイに銃口を突きつけた。
「今、終わらせる」
「馬鹿か、お前はもう、攻撃の対象に入っちまってんだよ」
ボーイはメスを掴んだ。そしてタクトの心臓部にメスを撃ち込んだ。これで終わり。そう思った矢先、メスがタクトに命中していなかった。近くの岩盤に突き刺さっていたのだ。
「な、何故だ・・・・」
「お前の攻撃は、心にやましいことや、罪の意識を感じている奴を標的にする能力だったな。じゃあ、今の俺には効かねえ。怒りで我を忘れてるからな。俺のクイックリロードは、俺が怒れば、怒るほどに強くなるぜ」
「うああああ」
ボーイは怯えながら逃げた。しかしタクトはそれを逃がさない。
「クイックリロード」
銃弾がボーイの襟足に喰い込んだ。そしてそのまま地面の上を転がりながら、白目を剝いて動かなくなった。
「双葉」
タクトはすぐさま双葉に駆け寄ると、白い布で傷口を覆った。そしてその上から拳銃で、双葉の傷口目掛けて発砲した。
「治癒力を加速させた。これで大丈夫」




