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エリスの面影

夜が更けてきた頃、双葉の容態も落ち着いていた。タクトが寝室に、枕と寝袋を持って入ってきた。

「タクト?」

「なあ、同じ部屋で寝ても良いかな?」

タクトは双葉の答えを待たずに、寝袋を彼女のベッドの下に敷くと、双葉をじっと見つめた。


「何だよ?」

「なあ、少し抱き締めて良いか?」

「気色悪いだろ。俺は男だぞ」

「じゃあ別に良いだろ。男同士の友情だ」

タクトは双葉の言葉など待たない。ベッドに入ると、仰向けに天井を見ている双葉を、横から抱き締めた。まるで掴んだ物を放さないように、子供のように、強く体を寄せた。


「何してんだよ。このホモ野郎」

双葉は精一杯もがくが、タクトの力には勝てない。彼女の顔は火を吹くように、真っ赤に染まっていた。

(どうして男に抱き締められて、照れてんだ俺は、まさか俺もホモ?)

タクトは双葉の首筋に唇をそっと付けた。

「んん…」

双葉の鼻から息が漏れた。堪らなく卑猥に見えた。タクトはそれを見て、クスッと笑った。


「以外に敏感だな」

「うるさい。早く終わらせろ」

「終わらせるってどこまで?」

双葉はさらに顔を赤くすると、毛布を被って、タクトを蹴って、ベッドから落とした。

「お前、俺のこと、前の彼女と重ねてるだろ。失礼だぞ」

「エリスはそんな乱暴じゃねぇよ」

タクトは、落ちた際に打った後頭部を手で撫でながら、寝室を出た。


 寝室を出ると、そこは長い廊下になっている。板の床は、老朽化の影響で、所々、茶色に変色している。

「おい、そこの・・・・」

 タクトは突然、拳銃を出すと、突き当たりの壁にそれを向けた。

「殺気がありすぎだぜ。これじゃ、騎士でなくとも気付く」

 壁の向こうから男の笑い声が聞こえてきた。そして壁から金髪の男が姿を現し、右手に掴んでいる物を、タクトの足元に投げた。

「お、お前」

 タクトの足元に、首をへし折られた宿屋の主人が、白目を剝き、口から涎を垂らしながら死んでいた。


「へ、俺の名はアクセル。ある奴に頼まれてお前を始末しに来たぜ」

 金髪の男アクセルは、気怠そうに首を掻きながら、タクトと丁度向き合う形になった。

「お前、親父に雇われたのか?」

「ああ?」

 タクトの言葉に、アクセルは首を傾げた。何を言っているのか分からないという雰囲気だ。

「鉄仮面を付けた怪しい男に言われたんだ。あいつのくれた赤い実を食ったら、力が湧いてよ。勢い余って、人を殺しまくっちまったぜ」

「禁断の果実を食って生きていたのか・・・・」

「ああ、そう言えば、鉄仮面の男も同じこと言ってたな。禁断の果実を食って無事だったのかってね。自分で渡しておいてよ。どうやらこの実は、極めた才能を持つ人間が食うと、とてつもない力を得られるらしいな。今の俺みたいに」


 タクトは銃の引き金に指を掛けた。目の前の敵は、アサムの言っていた、人間の才能の頂点に立つ能力、PHIの使い手に違いないと。

「奇遇だな俺も極めた人間でな。加速という、俺の家系だけが習得することを許されている技術を、特別に見せてやるぜ。お前の才能よりも、俺の技術の方が上だと教えてやるぜ」

「やってみな」

 かくして、タクトとアクセルの一対一の決闘が幕を開けた。

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