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『松下浩史(夫婦)』 5

いきなり登場した中沢昭博君の運命はどうなるのでしょうか?

 そして、彼が向かった民家の住人の運命は?

 のどかだった正月はどうなってしまうのでしょうか?


「一樹、機動隊も付近に居るだろうが、念の為に110番してくれ。事故のようだ。また玄関に突っ込まれたなぁ」


 そうぼやきながら浩史は玄関に向かった。

 一樹は勿論、葉瑠菜3人も後に続いた。浩史も一樹も気付かなかったが、葉瑠菜全員の顔は青ざめてこぶしは握られていた。事故の音が彼女達を普通の状態から遠ざけていた。


 そして、その事が後に様々な事柄に影響を及ぼしていく。


 浩史が玄関のドアを開けた途端に乾いた破裂音がした。携帯のボタンを押していた一樹の顔面に生暖かい液体が降りかかった。驚いて顔を上げると浩史の白いシャツの右肩が真っ赤になっていた。一樹が事態を把握する前に、浩史が怒鳴りながら左手で何かを掴もうとした。


「奥に逃げろ」


 浩史は使い物にならなくなった右手の代わりに左手で相手の手を押さえようとしたが、掴んだ瞬間にその手が跳ね上がった。聴覚が発砲音を感知するのと同時に腹部に衝撃を感じた。腹部に強烈な痛みが走ったのは、もう一度手を掴み直した時だった。思わず膝の力が抜けた。

『くそ、力が入らん』

 浩史は膝から崩れ落ちながら、何とか相手の肘の近くを左手で壁に押し付ける事に成功した。ここまでで1秒も掛かっていない程の一瞬の出来事だった。


 一樹は二発目の発砲音がする前に、手を広げながら自分の身体を盾にして葉瑠菜三人を奥に押し込もうとしていた。

 しかし彼の試みは思いもしない結果に終わった。三人の身体はそこに無かった。

 彼女達は一樹の手の下を通り抜けて、浩史と男がもみ合っている玄関口へ殺到していた。

 辛うじて意識を集中しながら男の右手を下から掴んで壁に押し付けて、家族に対する発砲を食い止めていた浩史は背後からの援軍を感じた。それは後で思い返すと『殺気』を感じたような気がする。その直後に見た光景は一方的な暴力だった。

 腹部からの激痛で狭くなった彼の視界に瑠菜が飛び込んで来たと思うと、彼女は男の右手を両手で下向きに引くと自分の肩を梃子にして、相手の肘を完全に折った。乾いた骨の音と靭帯が千切れる湿った音が、浩史の耳に入って来る。直後に男の悲鳴が響いた。

 だがそれも一瞬で終わった。浩史を軽々と飛び越した菜々が、男の頭を両手で押さえながら右ひざで男の顎を横から砕いたのだ。やけに乾いた音が聞えた時に、多分葉菜だろうが、浩史は優しく寝かされるのを感じた。

 右肩の痛さは耐えられるが、腹部の激痛は人生最大だった。息をしても激痛が走る。出血性ショックの為か、身体が自動的に意識を麻痺させているのか、聴覚も歪み始めていた。叫ばれている言葉は分かるが、誰なのか判別できなかった。何となく二人分の声が聞き分けられる気がするが、自信はなかった。


『出血性ショックだったら、動脈か肝臓をやられているかもしれんな』


 昔に覚えた知識がひょっこりと頭に浮かんだ。

 彼の意識はまもなく途切れたが、最後に浮かんだ言葉は


『すまん、今度は約束を守れないかもしれん、榛菜』だった。

 

 陽菜は携帯を耳に当てながら、階段の途中で立ちすくんでしまっていた。

 衝突音がした時、彼女は二階の自分の部屋で優衣と通話していた。『事故みたい』と言いながらベランダから下を覗いたら、玄関に向かって男が右足を引きずりながら歩いて来るのが見えた。男は夜なのに野球帽を被っていた。怪我の手当てでも手伝おうと、優衣に現場中継をしながら階段を降りはじめた時に発砲音が二回響いた。

 彼女が恐る恐る見た玄関は凄惨の一言だった。

 葉菜が倒れた浩史の腹部と背中にハンカチを押し付けて出血を止めようとしていた。背中の傷口の方が大きいのか、出血が激しい。早くも玄関の土間には血だまりが広がっていた。

 葉菜が初めて感情剥き出しで叫んでいた。


「駄目、ヒロさん、死んだら駄目」


 更に彼女は声を張り上げて叫んだ。その声は涙声になっていた。


「約束を忘れたの? 私より先に死なへんって約束したやない!」


 菜々は不明瞭なうめき声を上げて尚も逃れようとする男を、彼がしていたベルトを使って後ろ手に縛り上げようとしていた。陽菜から見える横顔は憎悪しか浮かんでいなかった。

 葉菜の止血作業に加わって、浩史の右肩の銃創を圧迫して止血をし始めた瑠菜が陽菜を見付けて叫んだ。


「陽菜、消毒液と包帯を取って来て、早く!」


 彼女の手はもう真っ赤に染まっていた。


「陽菜! しっかりしなさい! お父さんを殺したいの!」


 もう一度叫ばれた陽菜はやっと行動に移った。ギクシャクとした足でダイニングに向かった。途中ですれ違った一樹は携帯に大至急救急車を回すように大声でしゃべっていた。その顔には血がこびり付いていた。


 陽菜には何もかもが現実と思えなかった。我知らずにひたすら呟いていた。


「嘘よ・・・ こんなの嘘よ・・・・・・」


 左手に持った携帯から優衣の呼び掛けが響いていたが、彼女には届いていない様だった。

如何でしたでしょうか?

 うーん、ちょっとバイオレンスな話になっちゃいました(^^;)

 やばげな浩史さんも気に掛かりますが、葉瑠奈3人の変貌もキニナリマス(^^)

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