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『松下陽菜(ニュース)』 3

『神隠しから生まれし少女』第31弾です。

登場人物 (第一部「神隠しから生まれし少女」当時)


松下 浩史  松下家父親。影の主役。

松下 榛菜  松下家母親。怪現象に巻き込まれる。

松下 一樹  松下家長男。高校三年生(西暦2009年時)。ある種の天才。

松下 陽菜  松下家長女。高校一年生。腐女子。可愛いので、男子からは人気がある。

松下 葉菜・瑠菜・菜々  本編の主人公達。内、一人はシリーズを通しての主人公。

早川 翔太  一樹の親友。高校三年生。後に松下家と更に深い仲になる。

早川 優衣  翔太の妹。高校一年生。陽菜の幼馴染。

盛田 雄一  もう一人の主人公。中学二年生。気が付けば運命を捻じ曲げられてしまった子。運動バカ。弟思いの『いい奴』

盛田 健二  雄一の弟。小学四年生。ある事がきっかけで人見知りが激しい。

田中 綾乃  雄一の同級生。中学二年生。引っ込み思案な優等生。

笹岡 啓子  雄一の同級生。中学二年生。元ナイーブないじめっ子。

井植 拓海・田所清志  雄一の同級生。中学二年生。

松田 貴志・杉浦 美紀  浩史の部下。新婚さん。    

特別出演   堺市堺区の皆様




「もっと食べて、まだまだ有るから」


 物思いを破るように、葉菜が陽菜に声を掛けて来た。

 葉菜は自身のイメージ通りに前髪を揃えていた。まだ十分に伸びていない為に子供っぽいが、それはそれで似合っている。

 そして眉毛もまつげも生え揃っていた。そのおかげで、ますます美少女ぶりが強化されていた。日頃から身近に居る陽菜でさえそう思うのだから、男の子なら一度は付き合いたいと考えるだろうと思う。

 菜々も瑠菜も好きだったが、陽菜は三人の中で葉菜が一番のお気に入りだった。

 一番波長が合うと言うか、相手をし易いと言うか、なんにせよ彼女と接している時が一番安心出来る気がしていた。

 とはいえ、彼女の思い出の中の母親は瑠菜と菜々を足した感じに近い。一度父親の浩史にこの事を言ったら、『一樹も陽菜も知らないけど、確かに葉菜も母さんの一部だよ。その辺りの事は、その内に教えて上げる。父さんにとっては恥ずかしい事だけどな』と苦笑しながら答えた。

 昔から聞かされていた『父親が母親を助けた』という話の事だと思ったが、浩史はそれ以上を教えてくれなかった。

 葉菜がじっと自分を見ている事に気付いた陽菜は慌ててお肉を小皿に取って、『食べてるよ』とアピールした。微笑んだ葉菜は松田夫妻や優衣達にもすすめて、雄一兄弟の所に向かった。

 小皿のタレをこぼさないように気を付けながら歩く姿が可愛い。


「陽菜ちゃん、葉菜ちゃんが一番好きなんでしょ?」


 美紀が唐突に聞いてきた。


「だって葉菜ちゃんを見る目が、瑠菜ちゃんと菜々ちゃんを見る時と違うもの。もしかして、妹が欲しかったの?」


 改めて言われたら、そう思っていたのかも知れなかった。陽菜は考えながら答えた。


「そうかも知んない。瑠菜ちゃんも菜々ちゃんもあまり妹って感じしないものね。むしろお姉ちゃんって感じかな? でも葉菜ちゃんは妹って感じかな」


 その時に背後からいきなり声を掛けられた。


「これからは『菜々お姉さま』ってお呼び。可愛がって上げるで」


 菜々だった。ボーイッシュな髪型が似合っている。元が美形だと何をしても似合うという典型だった。三人の中では彼女が一番多く散髪を経験していた。といっても、手先が器用な葉菜に毛先を切ってもらうだけだが、菜々の髪型ならそれで十分だった。

 その横に立っている瑠菜はこの一年で伸びた地毛にウィッグを使ってポニーテールにしていた。

 井植拓海と田所清志も当然のように付いて来ている。


「それはやだなあ。絶対にこき使われるに決まってるもんね」

「それは残念や。うちも陽菜ネェに妹と思ってもらえるようにぶりっ子せなあかんな」


 答えたのは松田だった。


「菜々ちゃん、ぶりっ子って言っても、多分誰も知らないよ」

「またや。1年経っても、昔の言葉が出てしまうねん。ようそれでギャグがすべんねん。早う今の言葉に慣れんとあかんねんけどな。瑠菜はギャグ言わんし、葉菜はそもそもあまりしゃべらんし。うちは損やで」

「いやいや、菜々ちゃんは頑張っているよ。ホームページの『今週の菜々語録』の人気も高いよ。それに先月やった、人気投票では一位だったし」

「あー、あれな。あれは反則やで。うちの写真だけ、妙に色っぽかったもんな」

「い、いや、撮ったのは俺やけど、選んだんは菜々やで」


 妙に慌てて清志が口を挟んだ。その写真がホームページに貼られた時は日本最大の某サイトの監視スレが祭り状態になってしまった。


「あれは失敗やったな。益々うちが色もん担当になってもうた。本人はこんなに奥ゆかしいのにな。よし、おとなしくしよ。葉菜よりしゃべらんようにするで」

「あかんで、無口の菜々は菜々やないで。瑠菜と葉菜を足して3倍以上しゃべらな、あんたは死んでしまうはずや」


 啓子が突っ込みを入れた。第一回パーティーの時から啓子は突っ込み役になる事が多かった。葉菜も突っ込む事があったが、一刀両断にしてしまう危険が有った。

 その点、啓子の突っ込みは安心出来た。


「道理で、授業中は呼吸が困難になるんか」

「あんた、しゃれにならんで。どこの世界にしゃべらな呼吸できへん人間おんねん。先生から見たら、授業中のあんたはまるで水面に浮かんで呼吸してる鯉そっくりやろな」

「あんた、容赦ないなあ。ま、ええわ。こうなったら芸人目指すわ」

「いや、その気にならんとテレビに映らん芸人なんて有り得へんから」

「どうしよ、うちの進路は夢の無いもんになりそうや」


 大袈裟に嘆く菜々を美紀が慰めた。


「まあ、普通に暮らす分には問題ないから気にしないで」

「そうやな、お笑いは諦めて、普通の女の子を目指す事にするわ」

「そうだよ。菜々ちゃんだったら、きっと大人になっても人気者のままだよ。菜々ちゃんの良さを分かってくれる人は一杯居るよ」


 陽菜も思わず慰めた。なんだかんだと言っても、三人は可愛い妹のようなものだった。


「陽菜ネェは優しいなあ。カズニィとえらい違いや。やっぱ、お姉ちゃんや」


 ここで、菜々は何かを思い出したらしく、清志の方を向いた。


「そうそう、清志、プレゼント有るねん。この一年間おとなしくうちらの言う通りにデジカメのデータをズルせんと渡してくれたやろ。うちら三人で選んだ特別写真集作ったから、進呈するわ。ちょっと待っとき」


 菜々はそう言うと家の方に向かった。その姿を追い掛けて視線を家に向けた陽菜の目に、難しい顔をして携帯で話している浩史の姿が入って来た。陽菜の胸にいやな予感が芽生えた。


 あの顔は神隠しの日にしていた顔だった。


「お待たせや。これは超貴重なレアもんやで。なんせこれだけうちらが写ってる写真を持ってるのは、世界広しと言えどあんただけや。でも誰にも見せたらあかんで。あんたが怖い目に遭うだけやからな」

「ああ、誰にも言わん。自分だけの宝物にするわ。でも、ええんか? 本当にもろうて、ええんか?」

「ああ、ご褒美や。だから、もっとうちをきれいに撮ってや。色もんと違うようにな」

「頑張るわ。きれいに撮る為にデジカメも新しいのん買うわ。いや、本当におおきにやで」


 さすがにここまで喜ばれると、提案者の菜々も照れ臭くなったのか付け足した。


「ほら、みんなに見せたり。みんなが写ってる写真も有るからな」


 みんなはそれからしばらく写真集を、ああだこうだと言いながら鑑賞した。

 陽菜もその輪に入りながら、胸の不安が広がる事を止める事が出来なかった。浩史の電話が終わらなかったからだ。


 20分後、離れた所で携帯を使って話していた浩史がみんなの所に戻って来た。

 その表情はなんとも言えない顔をしていた。無表情に近い。


「さっき、厚労省から連絡が有った。最初の神隠しに遭った被害者の所に例の光の柱が出現したそうだ。被害者が元に戻ったという情報も流れているようだ。神隠しから2年後の事だったらしい。他にも何箇所かに確認したが、間違いなさそうだ。詳しい事が分かれば、連絡をくれるように頼んでおいた」

「課長、それって葉瑠菜ちゃん達も元に戻るかも知れないって事ですか」

「現時点では断定は出来ん。現地のTV放送で第一報が流れた段階だ」


 その情報はその場に居た全員に衝撃を与えた。



 このまま、大人に成長していくと思い込んでいた葉瑠菜三人が榛菜に戻るという事は、三人の消滅を意味していた。

  

 その夜の松下家の空気はさすがに重苦しかった。陽菜の記憶はあまり確かではない。

 ただ、三人の妹が冷静に状況を受け入れていた事は覚えている。自分達の事を伝えるニュースを見ている時さえ、顔色も表情も変えなかった。

 口数が少ない陽菜はむしろ心配されて、寝る時に三人の部屋に招待された。一階のリビングの横にある三人の部屋は元々夫婦の寝室だったが、三人が松下家にやって来る時に浩史が明け渡していた。彼女達は口々に言ってくれた。


『陽菜ネェに榛菜母さんを返せるから、別に構わない』と。


 あまりにも不条理だった。必死に生きて来た妹達が後一年もしないうちに消滅する事が。

 あまりにも無慈悲だった。こんなにもいい娘達が残り一年にも満たない寿命を知る事が。

 あまりにも腹立たしかった。これほどの悲劇を自分の家族が受ける事を。


 その夜は三人に囲まれて寝たが、眠りが浅くて夜中に何回も目を覚ました。その度に誰かが髪の毛を撫でてくれて、陽菜は安心して眠りの世界に戻った。



如何でしたでしょうか?

 幸せはいつかは頂上を迎え、下り坂になります。

 問題は、どこまで下り坂が続くのか? でしょうか・・・・・

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