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シリーズプロローグ Ⅰ

 初めまして mrtkです(もしかすれば「また会いましたね^^」の方も居られるかも?)

 大昔に書いた作品ですから(2005~2006年くらいだったような?)、史実とはかなり違っていますので、「if小説」もしくは「並行宇宙モノ」と思って頂ければ・・・

 

シリーズ プロローグ Ⅰ



 西暦2045年8月5日午前8時12分 GMT(グリニッジ標準時)

  


 薄暗い、10畳ほどの部屋で発生する音には微妙な違和感が有った。給排気ダクトから発生する音がいつもよりも大きく感じる。

  強固な装甲に守られた、この空間の気圧は地上の三分の一ほどしか無かった。

 航宙艦は、空気流失と被害拡大の防止の為に真空にしていた艦内各所を加圧中だった。

 その部屋に居る6名の男女が着ている艦内用軽装宇宙服ライトスーツはこの10分間でしぼみつつあった。内部は現在の艦内気圧よりやや高い0.58気圧の純酸素で満たされている。中途半端な気圧の理由は、着用者が通常の1気圧環境と真空環境のどちらにも素早く適応する事と作業効率の両立の為だった。理想的な、軽量で着用者の負担が少ない汎用宇宙服スリムスーツは開発されていたが、ライトスーツはスリムスーツと違う基準で採用されていた。

 彼らが着るライトスーツは日本のJAXA(Japan Aerospace Exploration Agency宇宙航空研究開発機構)が2014年に開発した新世代型宇宙服を、TRDI(Technical Research & Development Institute 防衛省技術研究本部)が2018年に改良したものを更に改良した軍用型だった。スリムスーツとの大きな違いは長時間の着用に対応出来る事と、遭難時における生存性の高さだった。

 勿論、一部には異星の技術を取り入れてはいたが、人類が20世紀から積み重ねて、21世紀になって大きく花開かせた技術が基礎になっている。

 とはいえ、いくら技術が進んでも人体や精神は大きく進化していない為に、宇宙での活動は世間の一般の人が考えるよりもはるかに制約が大きい。

 現に6人の内、1名は半時間前からトイレを我慢していた。液体・固体の排泄物は共に処理できるが、出来れば固体の方の処理は普通にトイレでしたいと考えるのは、人として無理からぬ事だった。

 だが、もう少しの辛抱だった。半時間以内に警戒レベルは下がる。その頃には艦内は一気圧にまで再加圧されて、ライトスーツを脱ぎ捨ててトイレに飛び込めるはずだった。

 

 彼らが乗る航宙艦は地球から約4027万km離れた宙域で、地球へ向けて秒速7kmとかなり遅い速度で慣性航宙中だった。

 6名の各コンソールには地球軌道から火星軌道に至る三次元の宙域図、各種データの羅列や通信文が表示されている。

 部屋の中央に浮き出ている直径2mの三次元宙域図には多数のアイコンが表示されているが、アイコンは色と形で6つに分かれていた。各アイコンから出ているベクトルと速度を示す矢印の長さからは、基本的に地球へ向かう軌道と逆方向へ向かう双方向へ、秒速数kmから数十kmで移動している事を示していた。

 その中で最も目を引くアイコンは、他とはサイズが全く違っていた。進路は地球方向へ向かっている。その巨大なアイコンの付近にはベクトルを合わせた航宙艦や航宙船が群がっていた。

 データから読み取る限り、統一された航宙を継続している艦隊は巨大なアイコン付近の艦隊以外では少ない。損傷を受けて減速や転進が出来なくなった航宙艦を目指して航宙している艦の方が多い。その他、相当数のシンボルが赤く点滅しながら分散しているさまを示していた。

 更に、混乱に輪を掛ける事態が発生していた。宇宙を漂流中の多数の救命ボールや脱出ポットから、位置特定の為の救難信号が一斉に発信されだしたからだ。

 一斉に発信された理由は簡単だった。人類と敵との間には、一切の決まり事が存在しない為に、戦闘中に電波を垂れ流す事は死を意味していたからだ。戦闘が終わった後も、多数の人間が生き残る為の闘いを継続していた。

 そう、宇宙に滞在している人々は、間接的直接的にかかわらず人類初となる有人での宇宙空間戦闘の後始末に忙殺されていた。

 そして、3隻の航宙艦を率いるこの司令室は、この宙域での警戒行動の指揮を任されていた。


「盛田司令、この10分間で新たに受信した救難信号をまとめました。データと分析結果を転送します。それと『モスクワ』の補給が終わりました」

「了解。菅原二尉、『パリキール』に対して『補給に対する謝意と、迅速な作業への賞賛、そして貴船の航宙の安全を祈る』という内容を私の名前で送ってくれ」


 低い、落ち着いた声で返答した人物は、放熱板まで含めた場合には全長700mに達する人類側最強の『モスクワ』級主力航宙艦三隻からなる第一戦隊だけで構成する第二艦隊司令の日本人だった。

 JSSDF(Japan Space Self-Defense Forces 航宙自衛隊)出身の盛田雄一は半月前に50歳になったところだった。宇宙暮らしが長く、累積放射線が規定に近付いていたので二ヶ月前に地球に降りるはずが、艦隊司令のままで人類初の宇宙空間での戦争に参加していた。

 航宙自衛隊設立時から、常に宇宙空間戦闘を体系化する最前線に居た彼は期待される以上の能力を発揮して来たし、今回の戦闘でも予測以上の結果を出して見せた。

 そして、彼は2009年に完成したISS(International Space Station 国際宇宙ステーション)『きぼう』棟以降の、急速な日本の宇宙進出の象徴でもあった。

 ある時期の論争で一部の関係者から恨みを買ったせいで昇進が止まったが、彼のことを無能と考えたり、自己本位の人間と考えたりする人間は居なかった。ましてや、彼の下で働いた事のある部下は、彼を敬愛する人間が多かった。

 そんな彼が、やるせない感情を心の片隅で凝固させるには十分な犠牲を人類は払っていた。

 味方の航宙艦で無傷で済んだ艦は多分20隻もいないだろう。

 現に、彼が乗っている『トウキョー』も放熱板の4割近くを吹き飛ばされてしまい、周辺の損傷も含めて全力時の3割に放熱効率が低下したせいで、宙戦加速どころか巡航加速も出来ないでいた。


 この戦争は彼の高校生時代から予測されて来たし、人類はG13に名を連ねる先進国の年間予算に匹敵するほどの予算を費やして準備を進めて来たが、いざ蓋を開けてみると人類の予想よりもこの戦争は過酷だった。

 戦争をするには、宇宙は容赦の無い環境だったし、敵は宇宙戦のベテランらしい組織だった戦闘を撤退する間も展開した。その為、人類側の犠牲は事前の想定を大きく上回っていた。

 人類側の艦隊で沈んだ航宙艦は8隻。宇宙進出の師匠で、同盟を組んでいる異星人艦隊でも7隻が沈んでいた。中破以上の損害を受けた航宙艦は両方の艦隊合計で10隻。退役していた艦さえもかき集めて編成した各艦隊から、3割もの航宙艦がたった一会戦で戦線から居なくなってしまった。

 盛田は索敵/観測担当の部下が転送してきたデータを分析して、焦りにも近い感情を抱いた。航宙艦の損害も大きかったが、予想される人的被害が更に大きいからだった。

 宇宙の最古参と言ってもいい彼には、友人・知人、元部下があらゆる航宙艦に居たが、二度と会えない人間の数を想像するだけで気が滅入りそうだった。

 戦闘宙域後方では、待機していた『EFSF』並びに、人類と同盟を組んでいる側の異星人が建造した救難船12隻全てが、彼女達に可能な限りの加速で救助に向かっていた。その他にもラグランジュポイント1宙域に退避していた内惑星航宙船が順次に加速を開始していたが、とてもではないが足りそうに無かったし、間に合うとは思えなかった。


如何でしたでしょうか?

 自由な時間が有った頃(まあ、俗に言う無職ってやつの時代です^^;)に書いた作品ですから、かなり長期に及ぶ設定も考えていたんですよね。

 その頃考えていた構成です。


『黒い空、青い星』シリーズ


第一部 『神隠しから生まれし少女』  青い星 Ⅰ 

第二部 『太陽系の新しい小惑星』   青い星 Ⅱ

第三部 『JSSDF』        黒い空 Ⅰ

第四部 『開戦』           黒い空 Ⅱ

第五部 『戦線拡大』         黒い空 Ⅲ

第六部 『終戦、そして再び』     青い星 Ⅲ


 素人の癖に雄大過ぎて、働きながらでは書けない・・・・・

 本格的に続きを書く為には宝くじを当てて、隠遁生活を目指すしか有りません(^^;)

 取敢えず、完成している、 【第一部 『神隠しから生まれし少女』  青い星 Ⅰ】 だけでも、手直ししながら公開して行きます。

 自分のブログは、GUPのSS発表の場として続けて行く予定ですm(_ _)m

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