帰還
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「…二年間良く私の修業に耐えましたね。正直私はあんなことしたくはないです、やれと言われても拒否します。やった貴方に私はドン引きです。ひぃっ!」
「じゃぁやらすなっ!」
「ふふっ、冗談ですよ。でも、まだまだです。この二年間で貴方が習得したのは自分強化と吸引値の増加、それに有形物の変化くらいです。しかも変化に至ってはまだ不安定です。日々の訓練を忘れないで下さい」
「あぁ、わかってるよ魔王。とりあえず、二年間お世話になった。感謝してる」
「態度で示して欲しいですね。帰ったら街のデザートショップでもいって棚一列分送ってくださいね?」
「拒否する。だがまぁ、魔王の耳にも届くような勇者になってやるよ」
「ふふっ、期待しないで待ってますね…」
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この街に帰ってくるのは二年ぶりか…。
そういや、オレは死んだことになっていると思ったのだが…まぁいいか。
とりあえず家に行って事情を話すとしようか。
それにしても二年前とすっかり変わっちまったな…。街の周りに外壁とは…。これもオレの影響なのだろうか…。
「そこの旅人、職業はなんだ?職業次第ではこの門を通すことは出来ないのでな」
門兵までいるのか…。
「職業は…[勇者]だ」
「⁈勇者だと?可笑しなことを言うな。[勇者]は半年前に世界から廃業したはずだが…。貴様もしや魔王の使いかっ⁉」
いや、魔王に修業してもらったけれども…。
「いや、勇者です。とりあえず家に帰りたいのだが通してもらえないか?」
「ダメだ、貴様危険すぎる、少しこちらで身柄を確保させて頂こうか」
うっわ、ダリィ。
「いや、急いでるんだ。いい加減通してもらえないかな…?」
「ダメだダメだダメだぁ!門兵として通すわけにはいかん!」
「……ハァーっ、わかりました。オレはここは通らない」
「むむっ、やはり貴様この街で悪行を働こうとしていたな!だがしかし、私の前ではどんな悪人も通しやしないわ!」
ふぅぅぅっと、一息。
体、特に足に集中する。
「そこは通らない、だから壁からいかせてもらおうか」
少し後ろに下がり、壁の高さを確認。
高さを補う為のちょうどいい木を確認。
助走をつけ、木をめがけて一気に走る。
木のてっぺんのすぐ下の位置を折れるくらいに思い切り蹴り、壁のてっぺんにぶら下がる。
あとはよじ登って街に入る。
という予定だった。
木が途中で折れなければ。
オレは身柄を拘束され今は留置所にいる。