残された者達
☆☆☆
ジュニアがいなくなってからあれから2年経った。
勇者さんに聞いても知らないと言われ、それと同時に魔王さんも消えたらしい。
魔王さんは新しい家を建てたからそちらに住むと書置きがあったと聞いたけど、壊れたばかりの家をすぐに建てれるような人はこの世界にはいない…と思う。
もしかすると魔王さんが仕掛けたことなのかと考えたこともあった。
だけど、勇者さんはそれはないと断言した。
じゃぁやっぱり、ゴブリンに…。
あの時私が残っていたら…。
私が倒れても回復させてあげてたら…。
その想いだけで今日まで特訓してきた…。
新しいスキルも身につき、体術をマスターし、弓もかじった。
全てはジュニアを連れ戻すために…。
ー*ー*ー
「…陽射しが眩しいな……」
「な〜に黄昏てんの〜?弓兵のくせに〜」
「いや、そろそろ2年かと思うとな…」
「……そうだね…」
「だぁぁぁー、むちゃくちゃするぜっ!勝負だ槍兵!」
「ん〜、いいけど〜。今度はなにかけるの〜?あ、じゃあ今日は勝った方が昼飯を奢るというのはどうかな〜?」
「よーし、それだっ!開始の合図はどうする?」
「んーと、いつでもいいよ〜」
「よし、じゃあ今からお互い反対方向に50歩歩く。その地点に着いたら振り返り、2人とも準備良かったら手を振ろう。2人とも振ったらその時点で試合開始。でどうだ?」
「んじゃ始めるね〜」
ーーー
お互いの距離は100歩分。
地形は草原。
風は微風、試合に支障はない。
間に阻むものはなく。
二人の合図で試合は始まった。
ーーー
「出でよ岩盤!」
弓兵の呼び声とともに、下から大地が盛り上がり、弓兵を高く押し上げる。
「狙いよし、風よし。先手必勝!」
高所から矢の雨が降り注ぐ。
「また同じ手か〜。んじゃこっも同じくいこうかな〜。投影、槍!」
槍兵の言葉が発せられると同時に持っていた槍が複製される。
「遠距離は弓矢だけじゃないっていつもいってあげてるんだけどな〜。そ〜れそれそれそれ〜!その狭い所で避けれるならよけてみな!」
槍を連投する槍兵に矢が覆いかぶさる。
「んよっと〜」
一本の槍を上にかざし、回転させることでそれを防ぐ。
「ふん、こっちだっていつもとは違うぜ!地盤、部分沈下!」
弓兵の立っていた所だけ沈下する。
槍は岩盤に突き刺さる。
「地盤隆起!」
再び上に上がる。
「どうだ槍兵!参っゲフッ⁉」
「お〜参った参った参っちゃたな〜。槍当たんなかったのは予想外だよ〜」
「な、なんでこんなとこに…」
「だってね〜、沈下して回避はいいけどさ〜、敵の姿見えなくしてどうするのよね〜。このくらいの距離ならすぐ詰めれるし、その手は今後使えないね〜」
「ふぅ、参った、降参だ、昼飯は奢る」
「うんうん、そうでなきゃね〜」
「……あの時にこのくらい強かったら、ジュニアは…」
「……うん、そうだね…。あ、俺店で一番高いのね!」
「なっ⁉そ、それは勘弁してくれよ!な?頼むから安いのにしてくれ!」
「だーめ〜!今日はなんてったって祝弓兵50連敗達成の日なんだからね〜!」
「そ、そこはお前の50勝にしようぜ…。目から汗が出てくるよ…」
「目から汗とか気持ち悪いな〜、近寄らないでね〜?」
「ひ、酷すぎるっ⁉しかも気付いててやるのがなお酷いわ!」