02
午後8時……飯も終わってテレビを見てくつろいでいた。
そして、何の前触れもなく親が帰ってくることを思い出した。
「あー風華……その今日帰ってこないって言ってたけど、親が珍しく帰ってくるんだけど」
「ちょうどいいね、ご両親に紹介してよ!」
な、なんというか……風華は本当に強引だなぁ。
「まぁ……いいけどさ、たぶん父さんは帰ってこないけどな」
「うん、いいよ! あ、そうだ! お風呂借りるねー」
これまた、唐突だな。
「おーう」
あーあ、こういう日に限って、遅れる的な連絡来ないかな。
なんて考えていると家の電話が鳴った。
発信主は母さんだった。
「もしもし!」
『も、もしもし……あんた何かあったの? そんな大声出して』
ぎくっ! とりあえず彼女が出来ました! なんて言えるかぁ!
「別に何でもないよ……で、今日も遅くなるんだろ?」
『違う違う、今日は珍しく早く終わったから……ガチャ』
電話越しに鍵を開けるような音がなった、そして、同じような音がリビングにも響いた。
……え?
「た『ただいまー』
って、帰ってきたぁああああああああああああああ!
俺は受話器を戻して、玄関に向かう。
そして、神のいたずらなのか、嫌がらせなのか、浴室からバスタオルを巻いただけの風華が出てくる……。
「あきらー、シャンプきれてるんだけど、変えど……こ……?」
――最悪の鉢合わせだった。
「あきらが、あきらが、女の子を連れ込んでる! ああ、あの優しかったあきらが……になるなんて」
「ちょっとまてぇええ! 色々と誤解してるぞ! ふ、風華も何か言ってくれよ!」
いきなり振ったせいか、今の状況を飲み込めてないのか、どちらにせよ風華はおろおろしていた。
「え、ええっと、あ、鈴峰風華です! あきら君の彼女です!」
「そう、あきらに彼女ね……」
う、やりずらい……てか、このパターンは俺抜きで話が進みそうだな。
次の瞬間風華のバスタオルがはらりと落ちる。
ちなみに俺に背を向けていたからいろいろとセーフだった。
しばらくの静寂……沈黙を破ったのはもちろん風華である。
「みた?」
と、それだけだった。
あれ? いつもなら、騒ぐのに……。
と、そんなことを考えてる場合じゃない!
「み、見てないぞ……そ、その背中以外は」
怪しいと思われつつ俺は目をそらす。
「あら、母さんはばっちりみえたけど……」
おいいい! デリカシーという言葉が母さんにはないのかぁああ!
風華その場で、はうずくまってしまった。
「あ、あのさ、その格好のままそこにいいたら風邪ひくぞ」
俺は、落ちたバスタオルをかけてやった。
「それにしても、こんなかわいい子があきらの彼女なんて、信じられないわー」
「悪かったな、俺なんかにこんな彼女ができて」
「あ、あの……私、浴室に戻りたいんだけど」
あ、忘れてた。
「悪い、それともう一回入りなおした方がいいと思う」
俺はリビングに戻り扉を閉じたところで、洗面所の扉が閉じた音がした。
「あきら……女の子を無断で家にあげるなんてどんな神経してるの? あんたをそんなふうに育てた覚えはないわ」
うわー、めんどくさい、説教が始まりそうだなぁ。
ちなみに、無断で家にあげたのはこれで三回目です。
「しかも、あんた泊める気だったの? ほんと頭大丈夫?」
俺の頭は中学校の成績で止まってます。
「きちんと、留守番してなさいってあれほど言ったじゃない、それなのに、こんなことを起こして、相手の親御さんが心配するじゃないの」
たまにしか、帰ってこない母さんに言われたくないな。
それに、風華は許可取ってるはずだ。
「それでも、彼女が出来たのはおめでとう」
――は? なぜ今このタイミングで「おめでとう」って言葉が出てくるんだ、ってか俺ってそんなに彼女が出来ないと思われてたのかよ!
「そういえば、友梨香ちゃんはどうしたのよ?」
「なんで、友梨香なんだよ!」
「だって、中学の時まで、よく一緒にいたじゃない」
「あいつ、鈴峰に転校してきたよ」
「ふーん、そうなんだ。それから、今度からはきちんと誰かを家に泊めるときには連絡しなさいよ?」
「はいよ」
どうやら、今回は見逃してくれるようだった。
母さんは飯も食わずに自室に戻って行った。
その後、風華は風呂から出て、すぐに部屋に行って寝てしまった。
俺も、適当に風呂に入って寝ることにした。
なんだか、時間が過ぎていくのが速く感じられた夜だった。




