第二章 合宿という名の旅行01
風華の衝撃的な告白から1時間後、なにごともなく帰宅した。
帰っている途中は結局ほとんどしゃべることはなかった。
ただ、帰宅しても、俺1人ってわけじゃない、つまり風華も俺の家にいるのだ。
「風華、今晩、どうするんだ?」
「うーん、迷惑じゃないなら泊まっていこうかな?」
今日は両親ともに帰ってこないことは分かってるから、大丈夫だろう。
「迷惑ではないな」
「それじゃ、泊まってく!」
嬉しそうに笑う風華。
以前の風華なら「迷惑でなければ」なんて聞かなかったのにな。
そんなことを考えてながら、俺は晩御飯を作るため台所へ向かう。
「わ、私も料理手伝う!」
「大丈夫だって、風華は座って待ってな」
小さい子がいじけるように頬を膨らませて、ムスッとする。
今まで見たことのない表情がかわいくて、衝動的に俺は風華の頭を撫でていた。
風華は突然のことでびっくりしていたようだけど、抵抗はしてこなかった。
いつもなら、怒りそうなのに……。
風華の髪の毛はとてもさらさらで撫でている俺の指はすこし、こしょぐったかった。
しばらく、撫でていると、風華が撫でている、俺の手を止めた。
「も、もういいんじゃない?」
さすがに恥ずかしくなったのか、顔が真っ赤だった。
たぶん、俺が「もう少しだけ」って言えば続けさせてくれそうな感じだけど、晩御飯を作らなきゃいけないから俺もここまでにしておいた。
「で、私も手伝いたいんだけど」
「ま、まあそこまで言うのなら」
今夜はトマトのリゾットとコンソメスープ、ムニエルを作ることにした。
結論からいえば、風華は意外と料理が出来なかった……。
ムニエルは少々焦がし気味になったし、コンソメスープはコショウの量を半端じゃない量――ふたの開け方を間違えたせい――を入れていた。
俺は一応、全部やると言ったのだが、リゾット以外やると言って聞かなかった。
なぜ、リゾット以外なのか今ようやく分かったのである。
風華は料理が恐ろしく苦手だったのだ。
きっと自覚していたのだろう、だから、1品だけやらなかったのだと思う。
それにしても、紅茶を入れるのがうまくて、料理が出来ないのもまた珍しいもんだ。
「ご、ごめん……」
風華はとても、へこんでいた。
「いや、いいよ、別に食べれないわけじゃないし、それに料理だっていきなりできるもんじゃないさ、今度俺が教えてやるよ」
そう言って俺はまた風華の頭を撫でる。
顔を下げていて、表情はよく見えないが、風華の耳は真っ赤だった。
「さ、飯にしよう」
「うん!」
顔をあげると明るく元気な風華に戻っていた。