表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

短編小説

ハズレくじは大当たり

作者: 旱咲



今日はなんだかツイてる。

いつもは満員で座れない電車に、ちょうど私の目の前が空いて座ることが出来たし、いつもは売り切れで買うことの出来ないメープルパンが、ちょうど一つだけ残っていて買うことが出来た。

そして――





カランコロン。

「大当たり〜!」


――商店街の福引きで、一等を当てるという偉業をなした。


ここまではラッキーだと思ってた。私ってツイてるって。



「お嬢ちゃん、おめでとう!一等の"彼氏"だよ」

「……は?」



――だけどおかしなことに、その賞品は、"彼氏"だった。













「千里ちゃん!」

「寄るな鬱陶しい!」


商店街の福引きで"コイツ"を当ててから、何故か私に彼氏というものが出来た。

我が物顔で私のアパートに入り浸り、私の稼いだお金で暮らす最悪な男が。


「もう、まだ不満なの?いい加減諦めて僕を彼氏として認識しなって」

「やだよ!なんで福引きなんかで私の彼氏を当てなきゃなんないの!」

「仕方ないじゃん、僕を当てたのが千里ちゃんだったんだからさぁ」


そう。そこなのだ。

私が気にかかっているのは、私ではない他の奴が"コイツ"を当てたら、"コイツ"は誰の彼氏にもなる、ということ。


「……千里ちゃん、いい加減機嫌直してよ〜」

「……」


私を後ろから抱きしめて――むしろ縋りついて離さない"コイツ"が、私は嫌いだ。


「……体にリボン巻きつけて『僕が景品です!』なんて変態を彼氏になんかしたくない」

「言い方に語弊があるよ〜。僕は景品なんだからラッピングしなきゃ駄目でしょう?」

「その言い方が気持ち悪いッ!」


体をくねらせる自称彼氏は、どさくさに紛れて私の頬にキスを落とした。


「ちょっ、なにやってんの?!」

「何って、恋人同士なんだからナニは必要でしょう?」

「キモいッ!」


触れられた頬をさすっていると、くすりと笑う声が聞こえる。


「なに笑ってんの?!」

「いや、だって……」


不意に体が動いたかと思ったら、目の前に彼の整っている顔があって。

無理やり体を反転させられたのだと気付く。


その唇が綺麗に三日月の弧を描くのを見つめながら、顔に血が集まっていくのを感じていた。






「……だって千里ちゃん、イヤイヤ言いながら、抵抗しないんだもん」


そう言った声が先か、はたまた私の唇に落ちた感触が先か、わからない。



ニヤリと笑う目の前の男が、私は嫌い。誰のものにもなる彼が大嫌い。そして、そんな彼を……。



「あの日、千里ちゃんが僕を連れて帰った時点で、僕は千里ちゃんのもので、千里ちゃんは僕のものだよ」


「……私は、アンタのこと、」




――目の前の"彼氏"は、言葉の続きを言わせてくれなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 読ませて頂きました。 なんと言っても、発想が面白い! 他の作品もそうでしたが、もう少し読みたくなる作品ばかりでした。僭越ながら、感想を書かせて頂きました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ