表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お題シリーズ(お一人様企画)

幼馴染はボクっ娘!?

作者: りったん

【設定】

 ・小学校高学年~中学生

 ・ボクっ娘

 ・せりふはひらがな多用(くちぐせは「ばか」)


1,000文字~2,000文字くらいで


という、那音様よりのお題に基づくお話です。

 善光寺ぜんこうじ五月さつき。小学五年生。


 彼女はクラスの誰もが認める美少女です。


 そしてその上、男子ではなく女子が好きな「ボクっ娘」なのです。


 そんな五月には、幼馴染の日輪寺にちりんじしんという男子がいます。


 五月は真の事を幼馴染としか思っていませんが、真は五月の事を昔から異性として意識していました。


 五月は自分がボクっ娘なのを誰にも打ち明けていないので、髪も長く伸ばしておさげにし、女の子らしく振舞い、嫌で仕方がないスカートも履いています。


(ボクは女の子じゃないのに)


 その苦しい胸の内を五月は誰かに打ち明けて相談に乗ってもらおうと思いました。


 そこで、誰よりも自分の事をよく知っていると思われる真に打ち明ける事にしました。


 真は五月に呼び出され、夜の公園で会う事になりました。


(な、なんだろう?)


 ドキドキしながら、五月が待つ公園に行く真です。


(まさか、コクられる?)


 妄想が膨らみ、違うところも膨らみそうな真です。


 公園に着くと、五月はブランコに乗っていました。


「ごめん、まった?」


 キスまですませた妄想を振り払い、火照る顔を扇ぎながら真は五月に声をかけました。


「ううん、いま来たとこだよ」


 五月は爽やかな笑顔で言います。それにドキッとしてしまう真です。


「で、そうだんて?」


 真は五月の隣のブランコに座ります。


「そのまえに、わらわないってやくそくしてほしいんだ」


 五月は真剣な表情で真を見ます。真はビクッとして、


「わらわない? どういうこと?」


 真は不思議そうな顔で五月を見ます。


「いいから、やくそくしてよ、ばか」


 五月はムッとして言います。彼女の悪い癖。ムカつくとすぐに「ばか」と言ってしまうのです。


「あ、ああ。わかった、やくそくするよ」


 五月の口癖を知っている真は気にする様子もなく言います。


 五月はその返事にニコッとしてから、


「じつはね、ボク、おんなのこがすきなんだ」


「え?」


 真は五月の言った事がすぐに理解できません。


(どういうこと? なにいってるの、さつき?)


 真は混乱しました。でも五月はそれには気づかず、


「どうすればいいのか、おしえてほしいんだ」


「えっと、さつきはおんなのこだよね?」


 真はようやく混乱を抑え、五月に尋ねます。


「みかけはおんなのこだけど、なかみはおとこだよ」


 五月のその言葉は真にとって衝撃的でした。


(ええ? こんなにかわいいのに、おとこなの!?)


 真はショックで倒れそうです。


「ホントは、しんたちといっしょにやきゅうをしたり、サッカーをしたり、どろだらけになってあそびたいのに、おとうさんもおかあさんも、そんなことしてはいけませんていうんだ」


 五月は涙ぐみました。それを見てまたドキッとする真です。


 そして、ハタと気づきます。


(さつきはおんなのこじゃなくて、おとこ)


 真のよこしまな心が増大しました。


 思わずニヤリとしてしまいます。


「あ、いまわらったな、ばか! わらわないってやくそくしたのに、ばか!」


 五月は涙を流しながら怒り出しました。


「ご、ごめん、さつき、さつきのことをわらったわけじゃないんだ。いいことをおもいついたので、あ、いや、なんでもない」

 

 その「いい事」を五月に話してしまってはまずいと思い、慌てて口を噤む真です。


「へんなしん」


 五月は真の言動がおかしかったので、くすくす笑いました。


「じゃあさ、おれがはいってるチームに来いよ。おんなもはいれるからだいじょうぶだよ」


「ホント?」


 五月は目を輝かします。


「ホントさ」


「うれしいよ、しん!」


 五月は大喜びして真に抱きつきます。


「わはは」


 真は鼻血を垂らしそうなくらい興奮してしまいました。


(さつきにやきゅうをおしえるふりして……。ムフフ)


 真は邪な事を考えていました。


 


 次の日曜日です。真は五月を誘い、野球チームの練習に行きました。


 五月は可愛いので、チームメートの男共が色めき立ち、女子達が殺気立ちます。


「バットはこうもって」


 真は幼馴染の特権を存分に生かし、五月にまさしく「手取り足取り」指導をします。


 それを羨ましそうに見る他の男達です。




 真のある意味熱心な指導で五月はどんどん上達しました。


「ホームランだ!」


 初めての打席でスリーランホームランを打った五月は、ホームインして真に抱きつきました。


「おお!」


 また羨ましそうにそれを見る男共です。


「しんのおかげだよ。うれしいよ、ボク」


 五月がギュウッと真を抱きしめます。真はだらしない顔でニヤけました。


(さつき、胸、でかいなあ……)


 もう変態です。


 


 真のパラダイスはずっと続くかと思われました。


 ところがある日の事です。


「善光寺さんがレギュラーで、日輪寺君は補欠です」


 監督が言いました。


「……」


 こうして、真の「幼馴染パラダイス」は終了しました。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あああああああああああ! 書いていただきありがとうございました! ものすごく楽しく読ませていただきました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ