奇妙な家
短編です
大学は目と鼻の先、歩いて五分の距離にコンビニ、十分の距離にスーパーとホームセンターがある。こんな最高の立地条件を満たしている最高の一軒家に、未だ誰も借り手が居ないことに驚きだ。
確かに築年数は古いし、ぱっと見はぼろいけど、二階建ての一軒家で、月3万は破格すぎる。
「もしかして、幽霊出る系ですか?」
怪しい笑顔の、妙に腰の低い不動産屋に聞くと、笑顔を崩さないまま、細い目を少しだけ開いた。
「いえいえ、事故物件ではありません。ただ、一つだけ、守っていただきたい条件があるのです」
「条件?」
「深夜二時以降、部屋のドアを開けたままにしないでいただきたいのです」
「部屋のドアを?なぜ?」
「私どもも、大家さんからそう言い使っているだけですので、詳細はわかりかねますが、深夜二時以降、空いている扉が無いようにしていただきたいとのことで」
なんだかよくわからないけど、そんなことで良いなら話は簡単だ。俺は二つ返事でこの家を借りた。どうせ大学に通う四年間だけの家だし、一軒家で隣上下を気にすることなく過ごせて、格安。こんなの契約しないほうがおかしいだろう。
入居してしばらく、幽霊系が苦手な俺は、不動産屋の言う通り、ドアを開けたら閉める。という生活を徹底した。だって幽霊入ってきたら怖いし。
でもある日、友人が泊まりに来て、トイレのドアを開けっぱなしにしてしまったことがある。その時、別の友人が「俺がトイレ行った時、ドアが一個増えてた気がする」と言った。怖い話はやめてくれ。でも友人の記憶の中の場所には、ただの壁があるだけで、何もなかった。友人も俺も、寝ぼけていたんだろうということで、この話を終えた。
しかしその日から、明らかに俺以外の何者かの気配を感じるようになった。
一階のリビングにいると、誰かが階段を上り下りしている音がする。でも追いかけても誰もいない。
そして極めつけは、俺の部屋の前に、ネズミとか虫の死骸が置いてあることが増えた。毎朝じゃないけど、起きるとドアの前にある。まぁ、ゴミに出してしまえば良いからあまり気にならないんだけど。
リビングに置いておいたパンがかじられていた。これは決定的だ。確実に誰かがいる。でも幽霊じゃない、実体がある。
俺は翌日が休みの日の夜、徹夜で家を見張ることにした。
音が聞こえれば、すぐにその場に駆け付けられるように、部屋のドアをすべて開けっぱなしにして、何者かに備える。
深夜二時。不動産屋の言った時間に、どこかの部屋から「まだ、部屋は開いていますか?」という声が聞こえた。怖かったけど、俺は勇気を振り絞って
「誰か知らないけど、この家は俺が借りてんの!勝手に住むならお前が代わりに家賃払えよな!!」
と叫んでみた。でもその返事はなかった。
すると、二階からものすごい勢いで足音が聞こえた。音は軽い。最近昼間にも聞いていた音と同じだ!俺は持っていたバットを携えて、二階に上がった。元陸上部の脚力舐めんなよ!
暗い廊下に飛び出すと、俺の部屋の前に小さな影があった。
「正体見たり!枯れ尾花!」
なんてことを叫んで、電気をつけると、そこには、ネズミを咥えた猫が一匹いた。
「は?」
どうやら俺の部屋の前に虫やらネズミやらを置いていたのは、こいつだったらしい。
——じゃぁあの声は?——
不思議なお家ですね。




