公女としての立場
僕…、いや私はアルカディア王国唯一の公女として産まれた。
腹違いの兄や弟は沢山いるが、珍しい事に女性は1人しか産まれなかったらしい。
そんな私を両親である国王夫妻は溺愛していたし、権力争いには参加できないが、それなりに優遇されて育ってきた。
欲しいと言った物はなんでも手に入り、望んだ人は誰であれ私に従順に従った。
それが、私にはつまらなくて堪らなかった。
人生にはどんな形であれ刺激というものが必要、でも私の人生にはそんなものは無い。
誰かに用意されたぬるま湯に浸かるだけの日々。
そんな私に人生の転機が訪れたのはちょうど6歳の頃。
いつものように庭園でお茶をしていると、1番上の兄が婚約者を連れて来た。
私には特に興味は無かったが、とりあえず挨拶だけはしようと椅子から立ち上がった。
そこに立っていたのは女神だった。
太陽の光を反射してなびく美しいブロンドの髪、潤む大きなルビーの瞳、この世のどんな宝石をも凌駕する美しさを持った人がそこに居た。
「ごきげんよう、公女殿下。」
女神は恭しく頭を下げて、美しい所作でカーテシーをした。
一方私はというと、その一つ一つの動作に目を奪われて、まともに声も出すことが出来なかった。
しばらく経ってから、ようやく礼を返していないことに気づき、壊れた人形のような動作でカーテシーを返した。
兄と女神(マリア=セレーネと名乗った。)は、そんな私を見て二人で顔を見合せ笑っていた。
そんな二人を見て、私はとてもお似合いだと思った。
それと同時に気がついてしまった。
この思いは、一生叶うことがないのだと。
性別や身分なんて言うのは些細なこと。
でも、兄の婚約者を、兄を恋い慕う人を無理矢理奪うことなどできない。
…ならば、せめて。
この醜い恋心と共に、影でひっそりとでもいい。
貴女を護らせて欲しい。




