第五章:予測不能な外れ値の正体
翌日、統計学の課題のグループワークで里美と顔を合わせた。里美は、合コンで疲弊しきった翔平の顔を見て、何かを察したようだった。
「大谷くん。その顔、解析不能なノイズが混じってますね」里美は笑わずに言った。
「ノイズどころか、規格外の異常値だよ。俺の人生における名前のインパクトは、常に俺自身の存在を歪ませる。もう諦めて、このデータを破棄したいよ」
里美は翔平のレポート用紙の上に、静かにペンを置いた。
「破棄しちゃだめよ。大谷くん、あなたの名前は、統計学でいうところの『外れ値』なの。でもね、外れ値って、ただのエラーじゃないのよ。それが本当に正しいデータであれば、それは誰も気づいていない新しい法則を示しているか、あるいは規格外の個性を示している」
里美は、例の「学習時間ゼロ、満足度最高」のデータを見つめた。
「この外れ値の正体を突き止めましょう。なぜ、彼は学習時間ゼロで満足度最高なのか。それがわかれば、きっと大谷くんが抱える『規格外の名前を持つ平凡な人』の苦悩にも、何かヒントが見つかるかもしれない」
翔平は里美の真剣な瞳を見て、胸の熱を再び感じた。里美は、彼の名前ではなく、彼の思考と、彼が抱える「論理的な謎」に関心を寄せている。
「そうか…俺は、ずっと自分の名前を、現実のデータを歪ませる『誤差』としてしか見ていなかった。でも、もし、俺の平凡さ自体が、この名前における新しい法則だとしたら?」




