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第四章:合コンという名の非ランダム誤差

数日後。翔平は友人のタカハシに無理やり連れ出され、人生初の合コンに参加していた。タカハシは社交的で、常に明るい空気を纏っている男だ。


「いいか、翔平。お前はその名前を武器にするんだ!初対面のインパクトは最強だぞ!」タカハシは熱く語った。


「武器って、すぐに『あ、運動神経悪い方の大谷だ』ってバレて、戦力外通告されるのがオチだろ…」


タカハシに肩を押され、渋々自己紹介の時間。翔平は意を決して、いつもの予防線なしで名を告げた。


「大谷、翔平、です」


会場は一瞬静まり返り、すぐに女性陣の期待に満ちた「ええっ!?」という興奮の声が上がった。まるで彼の名前が、空間を支配する強力な磁場を発生させたかのようだった。


その夜、翔平は生まれて初めて、名前のおかげで女性陣の中心に置かれた。質問攻めに遭い、チヤホヤされた。しかし、その話題は全て野球、アスリートとしての強靭さ、海外での生活…。彼の現実とは1ミリも接点がない話題ばかりだった。


彼はただ作り笑いを浮かべ、適当な相槌を打つことしかできない。それは、まるで精巧に作られた偽物の彫刻が、本物と勘違いされて展示されているような、居心地の悪い時間だった。


合コンが終わり、タカハシと二人きりになった帰り道。タカハシは肩を叩いた。


「どうだ!名前の力はすごいだろ!」


「……疲れた。タカハシ、俺はさ、統計学の課題で出た『学習時間ゼロで満足度最高』の外れ値と同じだと思うんだ。データの上では最高のインパクトがあるけど、中身はただの『エラー』だ。俺の名前がそうなんだ」


翔平は吐き出すように言った。その夜の体験は、彼にとって「名前がもたらす社会的な非ランダム誤差」を身をもって体感する、痛烈なデータ収集となった。彼の名前は、彼自身の現実とは全く異なる、予測不能な幻影を周囲に生み出すのだ。


※外れ値:測定値の中で、他の値から極端に大きく離れた値

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