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お誘い 3

「いやあ、特別な人にだけ私の名前の由来教えたくってさー。ていうのもあるけど、なんかみんなが私の名前呼んでくれるじゃん? 自分で呼ばしたんだけれど。でもその時心の中で、誰も私の名前の由来知らないんだよな実はお前らみんなレタスさんって私のこと呼んでるんだぜって思うとなんとなく可笑しくってさー。だからあんま話さない。秘密にしてるの。あ、名前は気に入ってる。面白いし」

 ラーメン、美味しいなあ。

 もう一回来たいな、このラーメン屋。

 ああ、写真撮り忘れた。いいや。今度来た時に撮ろう。

「聞いてる?」

「いや……」

 この子……。今日はじめて思ったけど、変な子だなあ。

 猫被ってたんだろうな。これまで。仕事中、めっちゃ澄ましてるけど。

 わたしは変な子繋がりで最近仲良くしてる箒ちゃんを思い出す。そういえば彼女も年下だ。けれど目の前の彼女も年下だ。

 人懐こいというか、本来はこっちなんだろうな。悪戯好きとも違う、見ていて微笑ましい。少女少女って感じ。

 まあ、面白いかと問われると微妙な話だった。だが、なんてことない話でも誰も彼もに話しているわけじゃないらしいことを明かしてくれたのは普通に嬉しい。それに、ご飯中に聞くにはちょうどいい話題な気もした。

「レタスさん。お水を注ぎましょうか?」

「あ、これはご丁寧にどうも。頂きます」

「レタスさん。括った髪がこっち側にほら、垂れていますよ。スープ……レタスに付いちゃいますよ。危ない危ない」

「ああ、ああ、ありがとうございま」

「レタスさん。このレタス、シャキシャキしててとっても美味しいで」

「やめて!」

 レタスさん、もとい、雪菜子さんが恥ずかしがるように両手を振っていた。イジられるの嫌なら言わなきゃいいのに。

「ぷっ」

 わたしは思わず吹き出した。わたしのその仕草に満足したように雪菜子さんはにんまりと笑顔を浮かべると、手が止まっていたラーメンを勢いよく啜り始めた。




「なんでこっちに出てきたの?」

 帰りの車の中、わたしは運転する彼女に向かって聞いた。

 気付けば敬語じゃない。今更直すのもな。どうしようかな。

「働くところがね……」

「ああ」

 雪菜子さんは気にすることなく話し始める。

 田舎。働き口。その問題は深刻だろう。ここだってやばい。まして県境の……レタス農家?なんだろうか? ならいいが、身内で働くという選択は……。

 いろいろたいへんそー。

 お給料というより、お小遣いみたい。額面はどうなのだろう? レタスなんて高原野菜、いっちゃえば独占だろうし儲かっていそうではあるが……と、車見て思う。

 話し足りない。

「雪菜子さん、よければまた――」

 言ってから気付く。雪菜子さん呼びだとどうしても敬語出ちゃうな。せっかく近付いた関係性がまた遠くなった感じ。

 かといって、レタス呼びは流石に……

「雪菜子で。あと敬語禁止。破ったらレタス家に送り付ける」

「めっちゃありがたいんですけど雪菜子さん」

「も~!」

 かわいい。

 あ、着いちゃった。

 ものの数分もしない内にシエラに到着する。それきり、車内は言葉すくなになる。正直、わたしはもっと雪菜子と話していたかった。飲みにでも行きたい。けれど、車以前に彼女は二十歳になっていない。飲みはだめか。けれどご飯に誘うくらいはありだろう。

 わたしは言う。

「今度、わたしから誘うから」

 雪菜子は運転席で前を向いたまま唇だけで不敵に笑ってみせた。

 その笑みは、どこか挑戦的。

「早く誘ってね。なんせ秘密はまだよっつも残っているんだ」

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