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 まあ、結論をいえばその後雪菜子の思い通りとはいかなかった。


 というのも、芳永さんが子育て理由にシフトを減らし始めたのだ。いや、それ、今までも勤めながら芳永さん熟せていたんだから、べつにシフト削ってまでする必要なくない? ……とは、子供を持ったことのないわたしには勿論言えなかった。育休制度っていうのは、うちの会社ではちゃんと保証されている。入社した時に、きっちり説明を受けた。

 幼稚園への送迎、料理、ママさん特有のナーバス、だとか、いろいろあるんだろう。

 知らないけど。

 ……ただ、察するに、露骨に売上落ちたのを病んだんじゃないかな……。会社からは絶対何か言われているだろう。雪菜子の穴埋めとしての荷の重さ――加えて、二人減ったことによる業務負担割合が、芳永さんの想像以上に大きかったのだろうと思う。

 そして、肝心のシンボルラインが当初の見込みより、だいぶ集客が見込めなかったのが雪菜子の思い通りにいかなった主たる理由。

 わたしも気合入れて行ったっちゃあ行ったが、明らかにお客さんに対しての店員数が多い、なんだか如何にも流行ってない店舗って感じで、それでも遠くから派遣されてきた手前、みんなやっぱり必死に売らなきゃいけないから、視線だけは常にギラギラしていて、お客さんからしてみれば入り辛かったかもしれない。

 その証拠に……『うぇぶり シンボルライン店』のぐーぐるまっぷには低評価が相次ぐ。

 雪菜子は言った。

『いっぱい人が来る新店舗オープン。全県から集められた選りすぐり社員の中、私が無理やりに引き上げた売れない社員。どんな気分かな』

 ほくそ笑み。黒い笑みを浮かべ、嬉しそうに。

 わたしは思う。

 気分も何も……暇だなって感じ。

 周囲の社員たちもわたしと似たり寄ったりで、「あんまりお客さん来ないね」「ね」「あ、来た来た」「次、誰行く?」「わたし」「私」「じゃんけんポンっ、あいこでしょっ、しょっ」「があ負けた!」「行ってくる!」「いてらー」みたいに、楽しく(?)やってはいたが。


 あ、一応言っておくと。

 みんなふつうのいい人たちだったよ?

 もち雪菜子の大嫌いな質問ベスト5は聞かれましたけども。


 そうして、そんなことやっている間に、元の店舗に人を返した方がこれじゃあマシだという理由から、会社は徐々に徐々に人を返し始める。減らし始めた。シンボルラインから。

 あの店舗もまだ流石にお客さんはうちより多いけど、そのうち、うちとどっこいになりそうだなあ。

 とかく、会社とは勝手なものであるとわたしは学ぶ。

 まあ、わたしにとってはその方が気が楽だし、なんせ古巣だし、行きつけのパン屋も同じ店内にあるしで万々歳だったのだが。

 例えぐーぐるまっぷの評価が低くともフットワークの軽い会社はわたしの中では高評価だ。だらだらとずーっと残っているよりはいい。


 さらに。

 雪菜子の思い通りにいかなかった最たる理由。

 雪菜子がそれを知った時、非常に悔しそうに、その姿を見、わたしの溜飲も大いに下がったその理由は。


 箒ちゃんがうちにバイトで入ったのだ。


 パン屋は辞めてない。掛け持ちで。

「服屋さんで働きたいです」

 らしい。

 どうやら、ファッションに目覚めたらしい。ま、女子校生だしね。

『ね? ちゃんとした服着てほしいでしょ? てか着せたいの。私が。ファッションに興味ない子だからこそ良い服を着せてあげたい。そしてファッションに目覚め、ゆくゆくはうちで服買え』

 良かったね、雪菜子。これはあんたの思い通りだ。

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