ひねくれ男がマッドサイエンティストを志すまで
「規制が…規制が多すぎるだあぁぁらぁぁぁ!!」
とあるマンションの一室で、声がこもりつつもキーンとした声を張り上げる男が近くにあったヴィランのフィギィアに思わず八つ当たりしていた。
「くそが!!くたばれ劇物取扱法、薬機法!!こんなんじゃ最強の生物兵器がつくれないじゃないか!」
男は日本の規制にうんざりしていた。
思わず八つ当たりしてしまったフィギアを拾いながら「こんなはずじゃなかった。俺は、顔が良くて美人なヒロインがいて、スーパーな能力を駆使した自己満野郎を絶望させるような敵役マッドサイエンティストになりたいだけなのに…」
痩せた体つきの男は落ちた眼鏡を掛け直した。そして
法律、規制といった忌々しい2文字の壁にぶつかるまでの人生を振り返る。
幼い頃から物事を俯瞰的に見ている自覚がなんとなくあった。幼稚園ではおもちゃを取り合って喧嘩する子供を理解できなかったし、周りの先生が一生懸命子供に尽くす姿を内心では(薄給なのによくやるな)としか思わなかった。童話や絵本よりも毒を持った危険生
物の図鑑が好きだった。身内は特別だがそれ以外の人間がどうなろうとどうでもよかったし興味もなかった。人生のどんなイベントにも心は湧かなかった。そんな泣かないことで有名で、ひねくれた子供はとうとう憧れの存在に出会った。
きっかけは簡単だった。なんとなく暇だったので見ていたアメコミの実写版。自分で努力したわけではなく、ただ生まれ持った才能をひけらかし世間にヒーローと呼ばれ自己顕示欲を爆発させていた主人公と敵役のマッドサイエンティストの戦いを冷めた目で眺めていた時、(はいはい、どうせ主人公が勝つし、なんなら可愛いヒロインと付き合ってハッピーエンドなんだろ)と思っていたが流れが急に変わった。
敵役のマッドサイエンティスト系ヴィランが、主人公ではなくヒロインを狙い人質に取ったのである。そしてねちっこい手法で主人公を欺き、ついにヒロインを落下死させることに成功したのである。その時は思わず鳥肌がたった。スカッとした。全てを持っている主人公の絶望した表情が脳内に焼きついた。
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