act.5 垢無し峠2
「何んとかしろ!欲‼︎」
「はぁ⁉︎俺⁉︎そんな事言われても‼︎」
逃げ惑うしかない金女に赤鬼は容赦なく鉄拳を喰らわそうとして地面を殴り続ける。
「何んか教えろよ‼︎〜死ぬ〜〜‼︎」
クソッ!どうにかしねぇとマジで死ぬ!
考えろ…考えろ考えろ
「フッ‼︎」
金女が姿をくらませた。
「金女さん消えましたね。僕達を残して。」
「…。」
鬼はキョロキョロと辺りを見回している。
(ごめん渾然さん、紫咲くん。俺の力では何も…)
「ははははは!」
突然、渾然は笑い出した。
と、一緒に赤鬼も笑い出す。
「あーははははっ‼︎」
「欲。」
そう言って渾然は右手でgoodを作って見せた。
「もう降りて来ていいぞ。」
《⁉︎》
木に登っていた金女が降りて来た。
「どういう事っスか⁉︎渾然さん‼︎」
「見ての通りだが?」
「って!当然の様に言ってますけど、俺はこの鬼に殺されかけたんですよ⁉︎」
「殺されかけてたか?」
「いや、殺そうとなんてしてない。パンチだって見事に外してやったし。」
「~~~~!」
「そうですよ!金女さん!鬼怒瓦さんが本気を出したら一撃で死んでますよっ!」
「……。」
「鬼怒瓦は俺の悪友だ!なっ!鬼怒瓦。」
「己のことを悪友と呼ぶ人間はおのれだけだ、渾然。」
「悪友と言う言い方が人間にしかないんじゃないですか?鬼怒瓦さん。」
「あぁ。かもな!」
『ははははは!』
紫咲と鬼怒瓦と渾然は大笑いした。
「聞いてねーぞ‼︎そこの鬼が渾然と悪友だなんて‼︎」
「言っちゃったら試しになんねぇじゃねえの。」
「~~~~‼︎」
「自分の身を守れることは大事だぞ!よかったぜ、欲。」
渾然さんはまたもgoodのポーズを取ってみせた。
「何んか腹立つ。」
「何はともあれ、貴方がちゃんと仲間を見捨ててでも自分の身を守れる人と分かってほっとしました。」
「仲間を見捨てるとは人聞きの悪い。」
「大事な力だ。現に俺等は超強いから、負けないと踏んだのだろう。そして、自分の力量も分からずに突っ掛からず、俺等の足手纏いにもならなかった。現段階では合格点だ。」
「そんなに誉めなくても…」
金女は満更でもない様子。
「あくまでも現段階では、だ。」
「ありがとうございます!」
「戦闘は他人に教えられるより、躰で覚えるより他無い。これからもビシバシ行くぞ!」
「はいっ!」
「返事よし!」
「…あのコンビいい感じですね。鬼怒瓦さん。」
「あぁ、そうだな。」
微笑ましく紫咲と鬼怒瓦は2人を見ていた。