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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第1章・ファロ・オリジン
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side-J・疑似少女の覚醒

『――宇宙海賊、浪花に襲来――


 この未曾有の大事件が起こったその日、主人公・大河虎太郎は通天閣に祀られている神・ビリケン様の足の裏をコチョコチョしていた。


“宇宙海賊の奴らを倒せる力が欲しい”


 そう、願いながら―――――


“あひゃひゃひゃひゃひゃ!!”


 ビリケン様の大笑いと共にその願いは叶えられ、日本の守護機“ヤッタルデー”が起動する!!


 戦え! ヤッタルデー!! 負けるな! ヤッタルデー!!


 宇宙海賊から浪花を、そして世界を守るんだ!!




 ―――――ヤッタルデーシリーズ第1期・浪花大戦ヤッタルデー第1話より』






「ど、ど……どないなっとるんや~~これは~~!!?」


 そんな大きな声が、見上げた先にいる超巨大ロボット、ヤッタルデー――? から聞こえる――


「――うん?」


 それは、ヤッタルデーらしい関西弁でありながらなぜか記憶に存在する、どこかで聞いたことがあるような声だ……?


「どこで、聞いたんだ?」


 頭の中にいくつもの疑問符が浮かんでくる――そして漠然とした、不安を感じる。


「何だろう、この違和感は?」


 オレは、何かとてつもなく重大なことを、見落としているんじゃないか……?


「わいは、わいは、そんなわけはない!! ないはずや!!」


 ズシン!! ズシン!!


 さっきから揺れていたのはこのヤッタルデーが暴れてたから!! ……らしい!!


「ヤッタルデーがいるなんて非現実的すぎるぞ!! もしかして……ここはもう異世界ってとこなのか!? ……って、おい!!」


 ズシン!!


 その巨大な足が、すぐ目の前に落ちてくる!!


 ビュン!!


 突然、オレの体が周りにあった何かと一緒に勢いよく宙に浮く!!


「おいおいおい!! 危ないだろ!! 暴れるな!!」


 ヤッタルデーから聞こえた声と同じ、どこかで記憶にある声がオレのすぐ上から聞こえる!!


「そ、そないなこと言ったって……あ、あんたは……そしてわいは!! 何なんや?」


「何なんやって……? ヤッタルデー、だろ? しかもその装いは激戦仕様の――」


「激戦仕様の……ヤッタルデー!?」


 よくよく見ると、機体の各所にアニメで見た大戦や決戦とは違う形状が見られる――つまり、このヤッタルデーは、アニメ最新作『浪花激戦ヤッタルデー』のヤッタルデーということになる……


「というか!! なんでここにアニメロボットのヤッタルデーが実在しているんだ!!」


 オレはその巨体を見上げ叫ぶ……っ!?


「あ、あれ? 何だよこの高い声は!?」

「え? あ、今の声って?」

「なんや? 今の声って?」


 最初の声はオレの口から出た、聞きなれない高い声――

 次はオレのすぐ上から聞こえたどこかで聞いたことがあるような声――

 最後はヤッタルデーから聞こえた関西弁だけど同じく聞いたことがあるよう声――


「なんでオレからこんな可愛い声が出てんだよ!?」


 オレは慌てて自分の口をおさえる――その手も――小さくてそして柔らかい―――――!!


「……ま、まさか……………!?」


 ペタペタとオレはオレの、自分の体を触ってみる――その全身から感じる感触――全てが、オレの知るオレの体の感触と、全然、まったく、全てが万事、違う、違いすぎる!!


 その違いは、胸に手を持って行った時に最大のものとなった!!


 ふに、ふに、ふにふにふにふにふにふにふにふに~~~~~!!


 触ってもみほぐせばしっかりとした弾力を持つ、やわらかな感触が手のひらに伝わる――それと同時に、胸元から背中にかけてゾクゾクとした得体のしれない何かが、走ってゆく――!!


「これってもしかして……もしかしなくても……あれか!? おっぱい!? おっぱいというやつなのか!?」


 思わず可愛らしい声で今回何度目かの叫びをあげてしまう、オレ!!


 それはまさに有名絵画のようだった、だろうか!?




 オレは、女? 女の子?




 それを、確かめるには最後にて、最大の確認場所があるにはあるのだが――!!


「ふ、ふざけんなよ!! オ、オレは性別が変わるTSFストーリーの主人公だったっていうのか!?」


 その最大最後の試練挑戦ための勇気を振り絞るべく? いやいや!! それを否定してほしいからか!? オレは何度も叫び声をあげる!!



「ちょい待ち!! 主人公はわいやろ!?」

 そんなオレを見て、ヤッタルデーの方は幾分か落ち着いたらしい。暴れるのをやめている――


「いや、俺だって! この物語の主人公は――!!」

 そして相変わらずオレの上から聞こえる聞き覚えのある、声――



「オレ、カミシロシンイチだろ!!」

「わい、神城真一や!!」

「俺、神城真一だ!!」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「え?」

「は?」

「ぬ?」


 オレは――慌ててヤッタルデーと自分の上にいる人物を見比べる――

 ヤッタルデーも、そして――オレの上にいて聞き覚えのある声を出していた存在も、同じようにオレを見て、そしてお互いを見比べる――




 まずは、オレ―――――カミシロシンイチ……………

 体を見下ろして真っ先に目に入るのは、豊かに――とは言えないものの、膨らんだ胸、おっぱい……最大最後の試練を乗り越えた結果は……………なかったよ!!


「つまり! オレは女の子~~てっことだ!! ど~~してこ~~なったぁ!?」




 次は巨大な機体でオレを見下ろしている巨大ロボットのヤッタルデー!!


「と、いうか!! パイロットの大河虎太郎はどうした!!」


「探したけど、大河虎太郎はおらへん! というか、アニメの登場人物が現実におったらおかしいやろが!!」


「すでにアニメのロボットが現実にいるんだが?」


「それも、そやな! どないなっとんねんこれ!?」


 ヤッタルデーもオレと同じように体のあちこちを触って色々と確かめているようだ。

 当然、オレのように柔らかい肢体を触っているわけじゃなく、ガンガンコツコツと硬いもの同士がぶつかるような音が出ている……




 そして最後に、オレの体を周りにあるものと一緒に持ち上げている……男子高校生の神城真一―――――!!


 鏡で見る時とは左右が逆で、写真で見るように静止しているわけではない。今の神城真一の顔に浮かんでいる表情は、どこかで動画に撮ったというような記憶は――まったくない――!!


「第一、オレがオレを見上げているんだ!! オレがカミシロシンイチなんだよ!! お前は、一体なんなんだ!?」


「いや、だから俺は俺! 神城真一だ! 第一……ヤッタルデーもだけど、お前もなんで動いてしゃべっているんだ!? ――ファロ!!」


「えっ!?」


 今、真上の神城真一は何て言った?


「……………ファロ……………? ファロって?」


「お前の事や――女性型ヒューマノイド・ガイノイドのファロ……わいと一心同体と呼べるぐらいまでバランス調整し完成させた希代の傑作機体―――――」


「おいおいおい! ファロと一心同体まで調整したのはこの俺だ!!」


「え、あ、う……そやな……わいはなぜか知らんがアニメロボットのヤッタルデーになっとるんやった……」


 事態が飲み込めてきたのか、ヤッタルデーは体をかがめ、目線を神城真一に合わせようとする……できてはいないが……


 そんな中、オレの頭の中はグルグルと混乱していた――――――


「ええっと、オレはファロ、カミシロシンイチと一心同体のガイノイドの、少女……」




 ガイノイドとは――男性型のヒューマノイド、アンドロイドと唯をなす、女性型ヒューマノイドである――ここまではいい――


 男性型のヒューマノイドであるアンドロイドを魔改造して女性の形に変える――所謂美少女アンドロイドとは違い、最初から女性型であることが大前提であるため、偉大なる先人たちは素晴らしい試行錯誤のを繰り返し、より本物の女性に近づけるために様々な工夫が施されたという――


 ――特に、胸――


 ――胸、おっぱいは、本物の女性のそれと寸分たがわぬもの再現することを最大目標としていたという――


 ……何のために……というのは聞かぬが華だ。

 ――男なら、わかるだろ――




「そんなガイノイド、ファロにオレがなっているというのか!? つまりオレは今、TS、トランスセクシャルのキャラクター!? まさかと思うが、過剰に可愛い恰好させられたり、普通の女性より男からもてたりするのか!?」


「いやいや、そういうこと、今は心配する必要はないんじゃないか?」


「どういうことだよ!?」


 混乱したオレは、上の方に見える――神城真一――? に突っかかってしまう――


「周りをよくみて見ろ、この状況で素晴らしく可愛らしい俺の最高傑作のガイノイド、ファロとはいえ、その小さな機体に注目すると思うか?」


「え……?」


 神城真一――? から言われ、オレはよくよく周りを見渡してみる……


 場所は、変わっていない……公園のままだ……だが、もしオレがこの場にいて、一番に注目するものがあるとすれば……………


「ヤッタルデー……?」


「わいか?」


 大きくてとてつもない存在感を放つ、本来ならアニメにしか存在しないはずのロボット――――――




「おお、見るでごじゃる疾風殿!! どこの誰が作ったか知らぬがあれこそまさにまさに実物大のヤッタルデーがいるでごじゃる!!」

「ま、まこと、まことでござる! 秀作氏!! しかも動いているではござらぬか!!」




 ヤッタルデーが大きな音を立てて暴れたからだろうか?

 ぽつぽつと野次馬が集まりだしており、その中には少し前に見た記憶がある人物も見える――


「……注目の的はTSキャラのオレじゃなくてヤッタルデーかよ」

「ま、しかたないだろ」

「わいのスター性に皆、注目しとるってわけやな」


 ヤッタルデーはだいぶ落ち着いてきているようだ――




「近づかないで! あのゴージャスな不審者は危険です!!」

「皆さん、落ち着いて指示に従って下さい!!」




 その野次馬たちをおさえているのは軍服を着た人たち――


「知らない顔だけど……あの人たちの軍服って……超常自衛隊のものだなよな?」

「ああ、だとしたら七瀬さんの部下だろう――高速飛行機で、ここに駆けつけてくれたんだ――」

「高速飛行機?」


 オレはその高速飛行機がどこかにあるのかと思って、きょろきょろと探してしまう――しかし、それらしいものは見つからず――


 かわりに目に入ったのは――


「ゴージャスな不審者、ノーヴェル・マシー!! ……それと……誰?」


 何か言い争っているようなノーヴェル・マシーと、相対している二人の―――――




「ほほぉ、ヤッタルデーのそばにおるのは……コスプレイヤー三人組でごじゃるか? お友達になりたいでごじゃるの~~♪」

「そうでござるな秀作氏! 特にあの二人の女性とは親密な間柄になりたいでござる」




 そんな感想に、同意してしまいたくなるほどの美少女二人だった―――――


「……今のオレも女の機体だけど……」

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