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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第1章・ファロ・オリジン
5/43

side-J・獅子戸大地行方不明事件

 ――

 ―――

 ――――

 ―――――

 ――――――

 ―――――――



 コン、コン!


「失礼します」


 オレは挨拶をして、応接室のドアを開ける――


「おお、来ました神城君――七瀬特佐、彼が二年の神城真一君です」


 応接室には二人の男性がいた。

 最初に声をかけてきたのは3年生の現代語担当、そして生徒指導担当の中野先生だ。

 がっしりとした体つきの初老の男性で朝方校門で挨拶をしている姿をよく見かける。


 そしてもう一人――応接室のソファーに腰かけている若い軍服姿の男性――

 この人が梨乃亜が見たと聞いていた軍人さん、なのだろう。


 右目に日本ではあまり見ない、方眼鏡――モノクルって言ったっけ? をつけているかなりのイケメンだ――


「こりゃ、梨乃亜じゃなくても騒ぐのは無理ないな」


 ポソッと、そんな事をつぶやく。


「神城君、彼は超常自衛隊の特佐、七瀬銀河さんだ」


 中野先生がソファーに座っている男性を感嘆に紹介し、一方後ろへ下がる。


「君が神城真一君? 僕は超常自衛隊特別三佐、七瀬銀河だ。覚えておいてくれ」


 若い軍人――七瀬さん? は立ち上がり、オレに対して握手を求めるのか右手を出してきた。

 ……オレも結構背が高い方なんだけど、この人はそれ以上の高身長だ。それに……後ろに立つ中野先生よりも細身に見えるのに、筋肉は中野先生以上と雰囲気が告げている――


「神城真一です。ええっと、俺に何か用があるってことですか?」


 オレは少し警戒しながらその握手に応える――


「そう警戒しなくていい。今回、僕がここに来たのはちょっとした話と……君……というか、君たちへの警告のためだから」


「警告……?」


 これは、梨乃亜が言うような軍隊に勧誘するスカウトとかの話じゃないな~~と思う。




「え、ええ~~!? 真一君のヒューマノイド操縦技術に惚れこんで軍に誘いに来たって話じゃないの~~!?」


 オレの後ろで梨乃亜がそんな声をあげる――ドアを閉めていなかったオレも悪いかもしれないけど……一緒に応接室に入ってこようとするなよ。


「……君は?」


「神城君と同じ研究部の浅科梨乃亜君です」


 中野先生が軽く梨乃亜を紹介する――


「応接室の外にも何十人かいるみたいですね」


 たしかに、同じヒューマノイド研究部の仲間数人とさっきの校内放送を聞いて興味を持った何人かの生徒が応接室の前に集まっている。

 梨乃亜のように中にまで入ってくる図々しい奴はさすがにいなようだが……


「今回の話は特に神城君個人にだけというわけではない。興味があるのならば後ろにいる生徒さんたちにも聞いてもらってかまわない――」


 そうやってソファーに座りなおす軍人さん――


「えっと? ……俺にだけじゃないって……? どういうこと、ですか? ……トクサ……さん?」


 座るようにうながされたので対面する形でソファーに座るオレ……この人の事はどう呼べばいいんだろう?


「言いにくければ七瀬で結構だ。ま、簡単に言うと神城君、君は獅子戸大地君を知っているね?」


「獅子戸大地? この間のバトル・オブ・ヒューマノイド決勝戦で戦った大地と美少女アンドロイドのリク、ですか?」


 オレは脳裏にモーションキャプチャーを使って同じポーズをとるバニースーツ姿の美少女アンドロイドリクとそのマスター大地の姿を思い浮かべる――


「彼が使っていたという魔改造アンドロイドについてはわからないが、獅子戸大地という少年は昨日から行方不明になっている」


「へ?」


 行方不明。


 その言葉に応接室のドアの向こうで聞いていた連中もざわつきだす。


 何かの事件か犯罪があった――この七瀬って人はそのために来たんだって皆理解したんだろう。

 ……中には一足飛びにオレが犯人じゃないかって言ってる奴もいる……


「えっと、質問いいですか?」


 空気を読めないのか、梨乃亜が手をあげてそう言った。


「どうぞ」


 七瀬さんの言葉に梨乃亜がオレの横に座り話に入り込む――


「私も、バトル・オブ・ヒューマノイドの決勝戦は、見てたんですけど、真一君の対戦相手だった獅子戸大地って人、私たちと同じ高校生ですよね? 小さな子じゃあるまいし、高校性が行方不明でしかも、昨日から……で、なんでいきなりこんなに早く……しかも警察とかじゃなくて自衛隊が動いてるんですか?」


 その疑問はもっともだ――


「行方不明になった状況が特殊だからだ。それについては、見てもらった方がはやいだろう」


 そういって七瀬さんが横にあったカバンからタブレットを取り出し机の上に置く。

 トン、トン、トンと何回かタブレットを叩いて操作すると中心に大きな光と5ヶ所から色違う光が照射され、交錯する――


「ホログラムアプリ――!!」


 思わず声に出す――


 ホログラムアプリ――スマホやタブレットで立体映像を投影するアプリだ――といってもスマホに入れてる人間はごくわずか、ほぼタブレット専用のアプリとなっている。

 ま、スマホじゃ画面が小さすぎるしね……


「これは昨日の午後、とあるショッピングモールでの出来事だ」


 タブレットの上にどこかのショッピングモール――おそらくその中のヒューマノイド専門店の立体映像が投影される――


「大地……」


 そこには商品棚の前で思案中をらしき大地の姿があった。


「彼が持ってるバックから顔を出してるバニーアンドロイドは決勝戦の時のリクちゃんよね。一緒に買い物にでも来てるってことかしら?」


 梨乃亜がめざとく小さな立体映像の中からちょこんと顔出しているリクを見つけ出す。


「防犯カメラの動画映像だ。許可はとってあるから安心して見ていてくれ。では再生するぞ」


 トン……と、七瀬さんがタップすると、立体映像の中の大地が動き出す。それとショッピングモール内で流れている軽快な音楽も流れてきた――


『う~ん、やはりここは新たな戦力は女生徒のガイノイドを、購入すべきかな? リクちゃんよ――君はどう思う?』


 マイクで拾えたのか大地の声も聞こえてくる――大地は、ガイノイドの箱を手に取り思案しているようだ。


『わかっている――リクちゃんと吾輩は一心同体――妹が欲しい、のだろう?』



「リクちゃんには言語機能が組み込まれていないようね――まるで一人芝居だわ」


 梨乃亜が的外れな突っ込みを入れる。


「黙ってみてろよ、ヒューマノイド人の会話なんて俺たちヒューマノイド研究者には当たり前の事だろ?」


「でも私ならある程度の言語プログラムを組んで会話を成立するようにするけど? 真一君もこの大地君もバトル方面にだけ気が行き過ぎていてそう言ったコミュニケーションほうめんには疎くなっているんじゃないかしら?」


 オレと梨乃亜のヒューマノイド研究者として当然の会話に、ヒューマノイド研究部以外の生徒が若干引き気味な雰囲気がある。


『バトル・オブ・ヒューマノイドの準優勝でもらった商品券――リクちゃんのバージョンアップに使う、それとも新たなヒューマノイド購入に使う……ああ、吾輩はどうすればいいのだ?』


 誰も聞いてないと思ってるのかアンドロイドの箱やガイノイドの箱を手に取り時折カバンから出ているリクの顔に目をやってそうしゃべりまくっている大地――


「そういえば、真一君はバトル・オブ・ヒューマノイド優勝でもらった商品券は何に使うつもりなの?」

「まだ思案中だ……そうだな。俺も、あの時の商品券の使い道を決めなきゃいけないんだ――この大地の姿は、まさしく未来のオレという事になる――」


『うん? そうか。リクちゃんは妹にアネニー様と呼んでもらいたいのか』


 もちろん、リクは何もしゃべっていないが大地は一人だけで納得したらしい。


「あ、アネニー様……? え? これが未来の真一君?」

「違う!! 第一ファロは生粋のガイノイドだから女体化男性枠の美少女アンドロイドと違ってちゃんとお姉さまって呼ばれる!!」


 ヒューマノイド研究部以外の生徒がさらに引いている。

 ふと見ると、中野先生まで少し引いているのが少し悲しかった――



「さて、若者たちの情熱は十人十色というのがわかったところで……問題は、ここからだ」


 七瀬さんが静かにそう告げた瞬間、空気が変わる――


 ザ・ザー・ザーザー……


 立体映像の中の音楽が突然ノイズまみれになる。

 映像もかすかに揺らいでるいる。


「先ほども言ったが、これは防犯カメラの録画映像だ。はっきりと、何の加工もしていないと宣言しておこう」


 パアアアアア―――――


「いっ――!?」


『なんだ!?』


 大地の後ろから突然不可思議なピンク色の光が現れあたりを染め上げる!!

 それはなにもないはずの空中に現れた四角い光を放つ、わけのわからないもの!!

 その中心あたりに一本の線が入ったと思ったら、


 バアン!!


 と、その四角い光が拡大する!!

 それが何かはまったく理解できない……あえて何か、近いものをあげれば――


「……扉……?」


 そう、それは……ピンク色の光で作られた両開きの扉のように見えた――


 思わず立体映像のの周りを移動してその光の向こうがどうなっているのかを見ようとする。


 ぬっ!


「うわ!!」


 突如として、濃い顔のおっさんが見えたため叫び声をあげてしまう――


 てかこのおっさん、光の中から出てきてないか!? 


 ザーザー……ザー……~~♪


 立体映像の中の音声がかなり乱れてノイズしか聞こえない。

 時々ピントが合ったように音楽が聞こえる時もあるがすぐにノイズだらけになる――


 ザーザー・ザー『な、なんだおま』ザーザー


 大地がその顔の濃いおっさんに向かって何かを叫んでいるようだが、ほとんど聞き取ることはできない。



「今、ノイズキャンセラーを使ってこのあたりの音声の復元を試みているが、映像だけでも異常さはわかるだろう。ちなみにこの男はゴージャスな不審者と、そう自称している」


 七瀬さんがそう解説してくれる。


「その名は――」


 ザザザッザ・ザー『余の名はノーヴェル・マシーである!!』ザーザー、ザザザザザ~~


 ノイズまじりで聞き取りにくいが、そのセリフはきちんと聞こえた――


「ノーヴェル・マシー……」


 揺らぐ立体映像の中でも、異常なおっさんの姿がこれでもかってくらいに見えてくる――

 まず、でかい――大地の頭二個分ぐらいの身長差がある――そして、筋肉もりもりの、見事な逆三角形な体躯をしている――まるでどこかのボディビルダーのようだ。

 そしてその体をこれまたド派手でゴージャスな服で着飾っている――それなのにコスプレイヤーのような不自然さはなく、それが自然な服装と見える――

 さらに、本気で対面したら忘れる事の出来なさそうなほど濃すぎる顔――


 大地とこのゴージャスな不審者の会話はノイズまみれで聞き取れない――が、余裕綽々のノーヴェル・マシーに対し、大地は凄まじいほどテンパっている――


「無理もないな。俺だってこんな事態に直面したら自分を保てる自信がない」

「私も……」


 ポツリと言ったオレの言葉に、梨乃亜が返す――


『これを受け取りたまえ』


 ノイズがひどすぎてほとんど聞き取れないが、いくつかの言葉は確認できる――ノーヴェル・マシーは何かを大地の手に渡したように見えた。

 それが何なのかはこの立体映像では、確認できない――


『さあ、今こそ旅立ちの時だ!! ダンジョン大陸へ!!』


「――!!?」


 ノーヴェル・マシーの叫びと共に、大地の手を引き強引にピンク色の扉にその身を押し込む――!!


 慌てて立体映像を見る向きを変え、扉の反対側を見るが、ただそこはのっぺりとしたピンク色の光が四角く空間に浮いているだけで、その背後には――何もない――


 そして……大地の姿は消え去った……………




「これが獅子戸大地君が行方不明になった現状だ」


「――――――……………」


 言葉を失う。


 本当に何があったのかわからない。こんなことが本当に現実に起こったというのか!?


 周りの連中も、無言だったりざわついたりと、必死で今見た立体映像の中身を理解しようとしているのがわかる――


「ニュースなどでもやっているから知っている者もいるかもしれないが」


 周りの混乱をよそに、淡々と話す七瀬さん。


「最近日本中で若者の行方不明事件が多発している――その中で目撃情報、防犯カメラの映像や音声、そして実際に会って逃げたという人間からの事情徴収により、その大部分はこのゴージャスな不審者と呼ばれる謎の男――ノーヴェル・マシーがかかわっていると、判明している」


「な、なに? このノーヴェル・マシーってのは神様で、俺たちを異世界転生させようとしているって事?」


「いやいや! 異世界転生ってのはこの日本で死んだ人間が死後の世界で前世の記憶を持ったままって話でしょ? これは異世界召喚、いいえ異世界転移ってやつよ、きっと!」


 まだ混乱しているため漫画やアニメの関連事項と結び付けて話してしまう――

 周りも、似たような感じだ。


「ところで、まだ動画は終わっていないんだが」


「へ?」


 七瀬さんの指摘に、再び立体映像に目を向ける――


 そこには、空中にあるピンク色の扉に自分も入ろうとしているノーヴェル・マシーが映っていた……………


 その口が、笑いながら動く――

 ノイズまじりだが、その言葉は聞き取れた。


『カミシロシンイチ、か……………』




 ゾクっと、した――



 ――――――

 ―――――

 ――――

 ―――

 ――

 ―


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