side-J・ヒューマノイド研究部にて
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「いや、無理です」
「なんでやねん!!」
先日、バトル・オブ・ヒューマノイド学生の部で優勝したオレ――神城真一はガイノイド・ファロのさらなる機能向上のため、ヒューマノイド研究部の部室に来ていた――
部長の東屋皐月先輩から褒められ、他の部員たちからも祝福され、気分よく次なるステップへと進めようしていた矢先、思わぬ闖入者が部室にやってきてしまう……………
「そう言われましてもねえ、大上先輩……モーションキャプチャーを使ってロボットフィギュア・ヤッタルデーを動かすって言うのは……無理です」
オレはその闖入者――一学年上の大上遊戯先輩――そして大上先輩が机の上に置いたロボットアニメの主役機、ヤッタルデーのフィギュアを見てそう言った。
「知らんかもしれんから教えたるがな、ヤッタルデーは宇宙海賊から浪花の街を守る無茶苦茶強くてハチャメチャにかっこいいスペシャルなハイパーロボットで、アニメ第一期『浪花大戦ヤッタルデー』に続き第二期『浪花決戦ヤッタルデー』を放送、現在第三期アニメが制作中という大人気作や!!」
「いや知ってますって! ほら!」
そう言ってスマホを取り出すオレ。そして、MusicPlayerアプリを起動する――
『ヤッタルデー! スクランブル!!』
~~♪ ~~♪
「―――――!!」
大上先輩の顔つきが変わる――
オレのスマホアプリから流れてきたのは『浪花大戦ヤッタルデー』のオープニングテーマ――以前、作業用BGMとしてDLしていた物である――
「遥かなSoraからの侵略者♪ 宇宙海賊あらわれた♪」
ユラリ……と、立ち上がった大上先輩がおもむろに歌いだす……
「迎え撃つ~~最強ロボット♪ ヤッタルデー♪」
……うまいとは言えないが、下手でもないな……
「敵も強いがこっちも強い♪ Fighter Modeで戦うぞ♪」
というかなんでオレは大上先輩の歌を聴いているのだろうか?
「あの~~………」
意を決して声をあげるが、自分の世界に入っている大上先輩には通じない――
「変形! Flying Mode 浪花のSoraはわいが取り戻す!」
とりあえず、スマホのアプリを止めようとしたが……
「Dosukoi♪ Dosukoi♪ Dosukoi♪ Dosukoi♪」
大上先輩の後ろから、曲に合わせて高い声が聞こえてくる――
「エクスティンク…………いやいやいや、ちゃうやろ! そこの歌詞はRet Go! Ret Go! Ret Go! Ret Go! のはずや!? 何やねんドスコイっドスコイって!?」
「あら、そんなの遊戯のテーマだからに決まってるじゃない! 今日も相撲部から勧誘があったんでしょ?」
「あるか! んなもん!! ふざけたこと言うなよ東屋!! わいはこう見えても演劇部所属や!!」
いきなり耳元で歌に参加した? 東屋部長の言葉に律儀に突っ込みを入れる大上先輩――
ちなみに大上先輩は身長はオレとほぼ同じだが、体重はたぶん倍近くある。
「クラスメイトなんだから、隠す事ないじゃない。朝にクラスに来ていた二人組、相撲部の人たちでしょ?」
「あん時来たんはわいと同じ演劇部や! 大体この学校に相撲部はないやろ!」
「そうだったかしら? それにしても、遊戯……貴方っていつもそんな喋り方だったっけ?」
「ヤッタルデーにかかわる者、関西弁でしゃべるべし! これはヤッタルデーファンにとって常識や!!」
「………キャラ作ってたんですね大上先輩………さすがは演劇部というべきか………」
「わいは、このヤッタルデーが激しく戦い、暴れるさまが見てみたいんや。そして、動画に撮って――ネット公開して収益化したいと思っとる!!」
ガチャガチャと、ヤッタルデーのポーズを変えながら言う大上先輩――
「結構俗っぽいのね、遊戯……」
「うるさい! わいはそれで有名になって演劇部から有名動画配信者、そしてゆくゆくは役者になり、将来は実写版ヤッタルデーで主役出演するんや!!」
「……宇宙海賊の役でですか?」
「なんでやねん!! 主役、ゆ~とるやろ!! ワイがヤッタルデーに乗り込み宇宙海賊と戦うんや!!」
「……………」
オレはスマホの画像検索で『ヤッタルデー・主人公』を調べてみる……………
「え、ええっと……………」
出てきたアニメの主人公である熱血系イケメンと大上先輩を見比べる――
「言いたいことはわかるけど、黙っていたほうがいいわよ」
そう、東屋部長に言われたので黙っていることにする―――――
「さて、冗談や茶番はさておいて……ヒューマノイド研究部として、遊戯、貴方の要望に応えるための話をしましょうか。貴方の望みはこのヤッタルデーのフィギュアを動かすこと、でいいのよね?」
「そこの神城っつ~~生意気な後輩がバトル・オブ・ヒューマノイドで使っとった技術……モーションキャプチャー言うっとったな――あれ使えば、それが叶うんやないか?」
「あのね、モーションキャプチャーっていうのは本来、2D……二次元空間に作られたゲームのキャラクターに対して使うものなのよ。それを3D……三次元空間の立体物であるヒューマノイドに対して使う場合色々とクリアしなきゃいけないことが沢山あるのよ」
ちょっとギャルっぽい東屋部長だが、ヒューマノイド研究部の部長を務めるだけあって頭はいい――
「そのためにはまず、フィギュアをヒューマノイドにする必要があるわね……」
大上先輩から受け取ったヤッタルデーフィギュアを弄びながら東屋部長はつぶやく。
「結構しっかりしてるのねこのロボット――」
「High Great Modelやからな」
しばらくヤッタルデーを見ていた後、いくつかのヒューマノイドが入った箱を取り出す東屋部長――
「外装パーツに改造してスケさんに装着させてみる?」
「スケさん? 誰やそれ?」
「スケルトン・ヒューマノイド、通称スケさん――最小限の動作が可能な無駄をそぎ落とした細身のヒューマノイドよ」
そう言って取り出したのは細身の顔も何もない、シンプルなヒューマノイドだった。
「フィギュア等を解体し、このスケさんに外装パーツとして装着させることでフィギュアをヒューマノイド化できるのよ」
そう言って、東屋部長はスケルトン・ヒューマノイド――スケさんをヤッタルデーの横に並べる――スケさんをヤッタルデーフィギュアにちょうどいい大きさになるよう調整しはじめる。
「このスケさんを使えば、ヤッタルデーを大暴れさせられるんやな!? バトル・オブ・ヒューマノイドであの女の子ヒューマノイドがやったような動きができるんやな?」
「さすがにいきなりファロちゃんレベルには無理よ。モーションキャプチャーを使っての動作にはどうしてもバランス調整などの問題がついてくるわ」
スケさんの大きさを調整し、次はコントローラーを取り出す。
「うん、動作の方は問題なさそうね」
カチャカチャとコントローラーを動かし、思い通りにスケさんが動くかのチェックをする。
「……ラジコンのコントローラーとは違うんやな?」
「当たり前でしょ! 前進後進左右のハンドル操作だけのラジコンと違ってヒューマノイドをコントロールするんだから何チャンネルかあるわよ」
「難しそうやな……」
その言葉を聞いてふと、オレの方を見る東屋部長。
「―――――モーションキャプチャーを使いながら両手でコンパクトサイズのコントローラーを使ってガイノイドをコントロールしきった猛者が、そこにいるけどね」
「う~~むぅ」
大上先輩はどうやらこういった細かい事は苦手らしい。
「ま、まずは遊戯の望み通りにヤッタルデーをヒューマノイド化して動かすことからはじめましょ」
「おおっ! これでやっとヤッタルデーを動かせるやな!!」
そう言ってヤッタルデーのフィギュアを解体し始めた大上先輩と東屋部長を見ながらオレは再び言った―――――
「無理です」
と―――――
「なんでやねん!?」
「あらら……バトル・オブ・ヒューマノイド学生の部優勝者の言葉とも思えない言葉ね。確かに、スケさんを使ってのヒューマノイド化はバランスがかなりシビアになると思うけど……私たち研究部の総力を使えばできないことはないわ」
大上先輩に続いて東屋部長も少し怒りを込めて言ってくる。
だがオレにもちゃんとした信念がある。
最強ロボットのヤッタルデーを自由自在に暴れさせる。
確かに、実現できるのであればやってみたい!!
だがしかし――オレの思い描く理想にはスケさんを使っての技法では無理だ!!
「だってそうでしょう! ヤッタルデーは宇宙海賊と戦うため、Flying Mode――つまり、飛行機形態に変形する!! このフィギュアだってそうですよね!!」
「――当たり前や。変形機能のないヤッタルデーなんておまけで菓子がついてくる単色樹脂製のヤッタルデーくらいや!」
「食玩は本来お菓子がメインのはずなんだけど……」
「だったらわかりますよね!! スケさんを使ってフィギュアを外装パーツにしてしまうと……その変形機能が失われてしまうという事が!!」
「な、何やって!!!」
どうやら、大上先輩にもこの事実が伝わったようだ。
――なぜオレが『無理です』と何回も言っていたのか……………
アニメで見るヤッタルデーの活躍はすごくかっこよかった。
それは、ファロの動きの参考にするほどの物だ。
特に空から変形しながら着陸するシーンは芸術的とさえ思っている!!
「そのヤッタルデー最大の魅力である飛行&変形機能をなくしてしまい、何がヒューマノイド化なのですか!? ヤッタルデーはヤッタルデーのまま、変形機能を維持したまま動かせるようにしなければいけません!! ―――――だがそのための技術が、圧倒的に不足している!!」
「……そうね、ヒューマノイドとしての動作能力を得るためには、変形機能は犠牲になるわね……」
「うむむ……そうなのか。どうにか変形機能を残したままヒューマノイド化できひんのか?」
「今の俺たちの技術じゃまだ無理です。ですが、これから考えていきましょう―――――」
オレだって頭ごなしに否定するつもりじゃなかった。
あれこれ考えて必死なって絞り出した言葉だったのだ。
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