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紡ぎ唄のように - Spinnerlied genannt -  作者: 久郎太
第一幕:忠誠のカフスを求めて
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7.彼女の作業

 騎士様が去った後、私は斡旋所にある作業場を借りて早速作業を始めた。

 黒く染める聖布は、紋章エンブレムを際立させるように加減した色合いで染めなければならなく、紋章の意匠はそれぞれの調和を保てるような色合いにしなければならない。

 丁度いい配合を頭の中の記憶から書物の頁をめくるように検索する。

 間を置かずに出てきた配合の染色石を混ぜ合わせその出来た染色液に布と糸をそれぞれ沈め煮詰め、頃会いをみて取り出して冷たい水流で洗い流す。

 それを数回繰り返す。

 染めのあと、乾燥室に布と糸を干す頃、外はもう明るい満月と星が夜空に瞬いていた。

 今日出来ることはここまでだ。

 もう一度、明日の朝一番で染色液につけに詰めて今度は天日干しにしなければならない。

 明日、雨が降らないことを祈るばかりだ。

 組合ギルドの仮眠室を借り備え付けの簡易ベッドにしばし横になる。

 

 ふと、昼間の騎士様の顔が脳裏に浮かんだ。

 精悍な顔つきでとっても男らしくて、無表情だけれどもその分瞳からいろんな感情を感じ取れた。

 短く刈り込んだ光沢のある鉄色の短髪、本当に深く澄んでいた青い瞳。

 がっしりとしていて見上げるほど背がとても高かった。

 

 アーヴェンツ・シュワート=フライヘヤ・ルフィト


 契約書のサインにはそう名前が記されていた。

 上流階級相手に仕事をしたのは直接にはコレが初めてだ。


 失敗しないように最高な出来にしなければ


 普段感じたことのない高揚感のため気負いよりもドキドキわくわくする様に楽しさがまさりその夜は中々寝付けなかった。



 次の朝は、雲がひとつもない快晴だった。

 まだ、日が昇らない内にもう一度昨日乾かしていた布と糸を染めの工程を施してから天日干しにする。

 一角獣の部分の糸はそのままの色合いで十分だったので癖を取る為に糸を一度手洗いしてから同じく天日干しにた。

 運がよく、程よい風が布と糸を揺らしていた。

 このぶんでは、お昼過ぎまでにカフスの金具が届けば予定通り縫製が始められるだろう。

 布と糸は、思っていたより上出来な仕上がりで染まった。

 騎士様のカフスを必ず最高な出来にするのだ。

 そんなことを思いながら屋上の手すりに寄りかかり揺れる布を見つめながらぼんやりと眺めていた。

 と、次の瞬間、予測しない突風が吹き体のバランスを崩し、あっと思った時は既に体は宙に浮いていた。

 襲い来るだろう痛みに耐える為きゅっと目をつぶり身を固くしたが、伝わって来たのは痛みでなく誰かに受け止められた感覚だった。

 そっと目を開くと、深く澄んだ青い瞳が間近にあった。

「怪我は?」

 その声を聞いて私の頭は真っ白になって瞬時に固まった。


 え? ええ?! ええぇぇぇ?!


 言葉にならない絶叫を発しながら、失礼にも私は助けて下さった騎士様を凝視してしまった。

「……大丈夫か?」

 騎士様のその問いで我に返った私は、「え、あ、は、は、はいぃ!」と、あわてて壊れた人形みたいにカクカクと頭を縦に振りながら返事をする始末。

 きっと今鏡をみれば私の顔は、自覚できるぐらいに真っ赤になっている。

 おかしい、変だ。

 壊れてしまったかの様に心臓がドキドキする。

 屋上から落ちた為の恐怖からなのか、騎士様の顔を間近で見てしまったためなのか。

 とりあえず、暴れ馬の様な心臓を落ち着ける為にゆっくり深く息を吸い整える。

「き、騎士様。 あの、その、助けて下さりありがとうございます!」

 騎士様にお礼を言って横抱きに抱き上げられていた私は、騎士様の腕の中からおろしてもらった。

 一瞬、騎士様がホッとした様な表情をしたあと、彼はすっと私に紙袋を差し出した。

 その紙袋は見覚えのあるなじみの店のもので、中には私が昨日騎士様に頼んだカフスの金具が入っていた。

 私はその紙袋を受け取ると騎士様の顔を見上げた。 

 まだ、朝も早い時間。

 普通、上流階級ではまだ就寝している時間帯。

 でも、騎士様はしっかりとした身なり(といっても昨日のように騎士装束ではなく簡素なけれども上質な布の服を着てひと振りの剣を腰に下げている)で今私の目の前に立っていた。

「ご足労していただき、ありがとうございました」

 私はそうお礼をいってしっかりとした上流階級の方々へする礼を取った。

「……いや、礼には及ばない」

 騎士様は、そう言って下さった。

「これで、布が乾き次第次の作業に入れます。 上手くいけば今日の夕方には完成すると思います」

 それを聞いた騎士様は、ただ頷いただけだったけれど、その瞳が安堵したのが見えた。


 その後、騎士様に食事が出来るところを聞かれたのでお口に合うか解らなかったのだけれども、この界隈で朝早くからやっていて美味しいお店の場所を私が言うと、

「ならば、案内してもらえるだろうか? それに、もし朝食がまだなら一緒にどうだろう?」

 と、言われたので一瞬ためらったけれども、結局のところ朝食はまだだったので私は頷いた。

 店は、裁縫組合ソーイングギルドから比較的近い場所に在り少し緊張しながら騎士様を案内する。

 店内にはまばらにお客さんがいたけれど、ほとんどのテーブルにお皿が載っていたので注文すればそう待たずに食事が出てくるだろうことが分かりホッとする。

 この店は前払い制で注文してから席に着く決まりになっている。

 私は何時も頼んでいる、ホットサンドと温めた牛乳ミルヒを頼み、騎士様は私と同じホットサンドと珈琲カフェーを頼んだ。

 料金は、私が払うより前にまとめて騎士様が払ってしまった。

 注文を聞いてお金を受け取った店長兼料理人のシュネルさんはちょっと意味ありげな視線を私に向けてから笑顔で厨房へと入って行った。

 空いている席に向かい合わせで座り、私は騎士様に自分の分のお金を差し出すと騎士様は「気にしなくていい」と、言って受け取ってはもらえなかった。

 わたしはお礼を言って料理を来るのを待った。

 待っている間も料理が来てからも会話らしきものは皆無だったけれども不思議と気まずくも居心地も悪るいことはなかった。

 まったりと食事をした後、二人して裁縫組合まで戻ってから騎士様は行くところが在るようで夕方もう一度裁縫組合に顔を出すと言い置いて、鍛冶製鉄区の方へ歩いて行った。

 騎士様が見えなくなるまで見送った後、私は急いで屋上に駆け上がった。

 干していた布と糸はいい感じに乾いており急いで取り込み早速刺繍に取りかかる。


 一針一針、想いを込める。

 染めて洗い流しリセットされた布と糸に守りの紡ぎ唄を口ずさみながら加護を込め、騎士様の為に最高の忠誠のカフスを作る。

 

 あの無表情な騎士様は、喜んで下さるだろうか?
















 お決まりの様な展開になってしまいました(汗

 そして、ようやく、騎士様の詳細容姿&名前が……orz

 アーヴェンツ・シュワート=フライヘヤ・ルフィト

(名前・出身家=爵位(名誉爵位)・洗礼名)

※洗礼名:洗礼時に男子のみに贈られる個人家名

↑のような設定です^^:(要はオリジナル設定なので突っ込みはご勘弁を)つまりは、

シュワート家のアーヴェンツ・ルフィト男爵フライヘアとなります


 プチ設定:この世界には一応魔法みたいな科学みたいなモノが存在します


次話で、第一幕終了になり第二幕:華麗なる式典になります

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