28.陛下の思惑
皇帝アーシェント・ルクツヘイム=カイザー・ネーヴェル 視点
まずは、及第点というところか
父である先の皇帝が、衰え始めた頃から表にも出るようになってしまった政事の腐敗。
もともと、先帝より前から大なり小なりはあった。
しかし、それは本当に水面下で影騎士団を動かしてようやく判るものばかりだった。
決定的な権利が、発言力が認められていなかった皇太子時代ではどうする事も出来なかった。
歯止めがないそれは、ますます広がっていった。
いつしか信頼していた直属の臣もそれに染まり、何度煮え湯を飲まされた事だろう。
その思いをいま払拭するために、腐敗を取り去るために私は動く。
今、一つの改革を私は計画している。
政事を正すと同時に、中枢にはびこり他族を締め出した己が同種族の貴族たちの粛清。
歴史の紐をとけば、聡い者なら判る。
開国の頃、国の中枢には各種族の者たちが、それぞれに合う分野を選任していた。
しかし、いつのころからか少しづつそれが変わっていった。
事の発端は、次代が育つ前にその地位に欠員が出たため、繋ぎの役割でその種族の代わりにツェントゥルムの貴族がその地位に就いた。
それから二世代後、中枢はツェントゥルムの貴族で埋め尽くされていた。
それ以来、他種族の貴族で中枢の地位に就いた者は一人もいない。
この頃から、徐々に政事の腐敗が始まったと私は思っている。
ツェントゥルムは、何でもそつなくこなすが、これといった特技を持たない一族といって過言ではない。
仲介が得意で口が達者、思い込みが激しい所があり、選民意識が高く、同族愛が強い。
が、その実一番中途半端な種族と言えよう。
だが、私は違う
私は、一族の異端者。
己が内に眠るそれが、一族の性を封じている。
だから、同族を粛清しようなどという考えを持つことが出来る。
心底、ありがたいと思う。
心おきなく、断罪の鎌を振ることが出来るのだから。
だが、問答無用に全てを粛清する訳ではない。
それに見合う能力があるのなら、何も言う事が無いのだから。
私が、帝位についたからにはもう容赦はしない。
無能者は、早々に退出願う。
その為に、私には多くの味方が必要だ。
だから、為させてもらった。
武官の彼が、どこまで出来る者か確かめるため。
皇帝に近しき者としての力量を見定めるため、これからも私は、彼らを試すことになるだろう。
二人には、文武ともに我の片腕となりえる者となってほしい故に。
なんとか今月最終日に投稿できました(汗
幕間なのでかなり短いですが……。
気づけば幕間は、お決まりの人物の一人語りシリーズ(?)にorz
けした意図していた訳ではなかったのですが……