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紡ぎ唄のように - Spinnerlied genannt -  作者: 久郎太
第三幕:新たなる始まり
25/45

25.彼の苦悩

 


 その書類を思わず投げ捨てたくなった。

 


 前黒騎士団の団長はよほどの無能者か救いようのない馬鹿だ



 そう思わずにはいられない。

 大幅な騎士団員の減少の為に、補充員を検討するのと同時に持ち上がった多大な頭痛の要因。

 まず、初めに前黒騎士団長から多忙を理由に引き継ぎをおざなりにされ、それきり有耶無耶にされた。

 それに心底呆れ果て、これは時間の無駄と割り切り引き継ぎが中途半端のまま諦めた。

 軍部の執務や事務処理の仕方は各騎士団で殆ど変わらないので青騎士団ブラオの副団長をしていた時の経験で何とかなりそうなのがせめてもの救いだ。

 だから、それはいい。

 取りあえず問題はない。

 問題は、今俺の目の前に積まれている書類の方だ。

 現在進行で処理するモノは問題は無い。

 だが、その現行の書類よりはるかに多い。

 まずは、いつ提出されたのかわからない書類の山。

 目を通せば全部が同じ内容の陳情書。

 遡れば、「いったい何年前のモノだ?!」と、つい叫びたくなるようなほど昔のものまであった。 

 これほど職務怠慢ぶりが露呈している書類を握りつぶして破棄するでもなくこの執務机の上に山に積んでおくあたり、どうやらこれは俺に対する嫌がらせらしい。

 はっきり言って稚拙だ。

 付き合ってはいられない。

 陳情書の全ては、先日アイツから報告があった俺の新しい住まいとなる黒騎士団の城砦から。

 この件は、後日直接俺が城砦に赴き家令のネームと処理することでひとまず決着がついている。

 そう、この陳情書は、たったそれだけのことですむ簡単なものだったのにもかかわらず長年放置されていたのだ。

 けれど俺が投げ捨てたくなったのは、これではなくバカげた数字が羅列する過去の経理の書類。

 所謂いわゆる、不正帳簿。

 ちょっと調べればわかる稚拙極まりない帳簿の写し。

 よくこれで財務経理部で受理されたたものだ。

 呆れ果てて、言葉もない。

 どこに流用していたのか、はたまた横領していたのか定かではないが、黒騎士団の拠点である城砦の修繕費及び維持費が年々大幅に上乗せされている。

 実際の所、年月がたてば建物の傷み具合で費用が上乗せされるのはわかる、が、陳情書をみれば明らかにその費用が実際城砦の修繕や維持に使われていなかったことが分かる。

 それを隠さず、そのまま俺にまる投げするということは、これがばれても一向に構わないということなのだろうか。

 確かに、前黒騎士団長は、公爵だったと思う。

 接点がなければ星の数ほどいる貴族を全部把握している訳でもないので定かではないのだが。

 ようは、高をくくっているのだろう。

 身分の高いものが考えるバカげた暗黙の了解というものだ。

 自分より身分が低い者が高い者に盾就くことは無いと。

 馬鹿すぎて関わりたくないが、十中八九ここまでいわれのない嫌がらせをしてきたのも彼から言われた取り巻きのうちのだれかだろう。

 いい加減頭にきているのもある。

 それに、そろそろ現実を見て頂こう。

 高貴なる者の暗黙の了解が通じない相手がいるということに。

 証拠もご丁寧に残してくれているので、これを元に陛下に直に陳情させて頂こう。

 幸い、今の俺ならそれが許される地位にいる。

 しかし、この件に関してどう裁くかは陛下次第だ。

 まだ、陛下がどのような御人か把握できてはいないが、不正を放置するような御方には見えない。

 けれど、しっかり不正を正すとなると前黒騎士団長に留まらずかなり芋蔓式に他部署でも不正が明るみに出そうだ。

 陛下の御苦労が目に浮かび、御同情申し上げるがこれを機に是非今のうちに腐った部分を切除して綺麗さっぱりしていただきたい。

 さっそく、作業にかかろう。

 陳情書には、修繕個所やその他の詳細が書かれていたので破棄せずにネームとの打ち合わせの時に使うために揃えて書類箱に仕舞う。

 不正書類もまとめて厳重に別の書類箱に閉まっておく。

 まずは事実確認の為に、明らかにおかしいと思われる証拠を集めるために動かねばならない。

 遠征費などは、相手に口裏を合わせられ証言がとれないと判断出来ないものは断念せざる得ないが、軍備に関しては購入の際領収書の添付が義務付けられているから裏付けが容易だ。

 が、領収書を発行する元である商人が結託していたら厄介だ。

 というより、商人も間違いなく関わっていそうなので違う線から洗い出す。

 要は、帳簿に記載されている購入した軍備品と現物を照らし合わせればいいのだ。

 例えば、軍馬や武器防具。

 北方一族ノルデンである、俺を舐めてもらっては困る。

 伊達に、匠の一族の族長の血を引いてはいない。

 実際に、本当に購入されているのか、また、その武器防具が正規の価格での取引だったのかの是か否か。

 その武器防具の鑑定を見誤るはずはない。

 宮廷内にある黒騎士団の詰め所にある武器庫と厩舎はすでに確認すみだ。

 その際、法務部の記録官に頼んで武器防具の在庫及び厩舎の馬の数を公式文書にて作成してもらってある。

 言い逃れが出来ないよう、鑑定はしかるべき者を召喚して陛下に降臨賜り公開という形でやるのが望ましい。


 架空の城砦の管理維持費。

 不正軍備の購入費。


 この二つの不正証拠を携えて、俺は陛下に報告すべく執務室を出る。



 さぁ、始めよう


 バカ共に粛清を


 俺に喧嘩を売った事を後悔してもらおう
















とうとう、怒り爆発(?)なアーヴェンツ

彼の暗く怖い笑いが聞こえてくるような、こないような……



約1カ月ぶりの投稿なのにものすごく短くて反省

次話も彼視点でこの続きになる予定です

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