20.ある男の嫉妬
白騎士団 団長ゲルプターク 視点
まさか、こんなところで再会するとは思いもしなかった
皇帝の命で黒騎士であるルフィト卿が、自身の専属特級裁縫士を伴って連れてきた娘を見て僕は自分の目を疑った。
思いもよらなかった人。
会いたくて、でも、会うことを自ら禁じた人。
手放したくなかったのに、手放してしまった人。
なぜ
彼女は今、ルフィト卿の専属特級裁縫士として皇帝陛下の御前にいた。
緊張の為か、それとも違う意味があってなのか彼女は僕の方を見向きもしない。
皇帝陛下の言葉に緊張しながらも受け答えをしていた。
なぜ、彼女がここにいる
疑問は、尽きない。
彼女は、彼の専属特級裁縫士だから。
彼女を気遣うように寄り添うルフィト卿に嫉妬を覚える。
そこは、僕の場所だった
なぜ、彼がそこの位置にいるのか。
僕がいた場所に違和感なくおさまっているのか。
一瞬、ルフィト卿と視線が交差した。
けれど、彼は直ぐに再び彼女に視線を戻す。
いやだ
どうして、君は彼といるの?
どうして、君の瞳に僕が映らない?
嫌だ
どうして、僕は彼女を諦めたのに同じ立場のお前が彼女の傍らにいる?
どうして、僕が手に入れられなかったものをお前が手にしている?
どうして、お前は当然のように彼女に寄り添う。
駄目だ
駄目だ、ゆるさない。
彼女の横にふさわしいのは……
暗い思考から、僕を正気に戻したのは皇帝陛下の声だった。
祝賀会場に移動する旨を聞き、ハッと我に返った。
部屋を出る陛下に後に僕も続いた。
部屋を出た後、一瞬だけ彼女が去っていたであろう、これから向かう祝賀会の会場となる大広間とは別方向の廊下に視線を送った。
これは、罰。
彼女を傷つけた、僕への。
先ほどの暗い思考を封じ込む。
嫉妬などする資格は僕にはないのだから。
未練を断ち切るように僕は、一瞬目を閉じた。
今の僕は、白騎士。
陛下の御身を守る親衛騎士なのだからそれだけに集中する。
集中しなければ、暗い思考に支配されてしまうだろうから。
でも、僕への罰はこれで終わらなかった。
なぜならば、彼女がただの特級裁縫士ではなかったから……
その事実を知ることになるのはまだ先のこと。
このときの僕には、知り得ようもないことだった。
逃した魚は大きい……的な
ちょっと、哀れな元彼君でした(汗
これで、幕間が終わりになり、即位式典編(?)も終了です。
次幕からは、彼女と彼の視点中心となるはずです!(の、予定は、未定(弱腰)
※脱字のご指摘ありがとうございます!修正しました
やはり急いで投稿すると駄目ですね(滝汗 反省orz




