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紡ぎ唄のように - Spinnerlied genannt -  作者: 久郎太
序  幕:彼女と彼の出合
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1.彼女の事情

 世の中自分より不幸な人など山ほどいる                      


 そう思っていなければ立ち上がれなくなりそうで……


 昨夜まで、私は幸せの絶頂だった。

 婚約者である彼が、今北西の国境付近で起こっている反乱軍との戦が終われば結婚式を挙げようと言ってくれたから。

 その彼が、帰還したのを知ったのは3日前。

 私は今まで少しづつその日のために作っていた自分のための婚礼衣装とベールの仕上げにかかった。

 契約している縫製工房の仕事が終わった後くたくたでも夜遅くまでその作業を続けていても苦ではなかったから。


 けれど


 そんな幸せの絶頂にいた私をどん底に落とした物は、今朝早くに届いた手のひらに載るほどのメッセージカード。

 そこにかれていたのはたった一行の文と彼のサイン。


 君との婚約はなかったことにして  ヴィンター


 目の前が真っ暗になるとうのはこういうことを言うのかと実体験した。

 思考が完全に止まり頭が真っ白になる。

 真っ白な頭にリフレインするのは、メッセージの文面。

 自分の手のひらからメッセージカードがはらりと落ちたことも気づかず、私はその場に暫く立ちつくしていた。


 どれくらいその場で立ち尽くしていたのか、借りている部屋の出入り口をたたく音で我に返った。

 あわてて、誰何するとこの部屋の大家だと言うことが分かり急いで扉の鍵をはずして開けた。

 そこに立ってたのは、神経質そうな顔をした女性。

 ここの大家の奥さんだった。

 彼女は、眉間に縦じ皺を寄せて前触れもなくこう言った。


「契約違反と言うのをわかっているね? さぁ、何も言わず今すぐ出て行っておくれ!」


 一瞬なんて言われたのかわからなかった。

 その意味を反芻して数秒、あることが脳裏によみがえる。

 そう、昨日までにこの部屋を借りる為の契約料を払わなければいけなかったことを思い出す。

 ここの大家は契約に厳しい。

 一度でも期限を過ぎると問答無用で追いだすのが有名になるほど。

 契約料の期限しかり、家賃の支払いしかり。

 それに契約料や家賃の金額も安くはない。

 けれど、この下宿先の部屋を借りる者が後を絶たないのは、それに見合うほどの防犯や管理をちゃんとしてくれているからで、部屋の空きを待っている人が少なからずいると前に聞いたことがあった。

 この部屋を借りる時に交わす契約。


 一度でも契約料及び家賃支払い期限を過ぎた場合即刻出ていかなければいけない


 舞い上がっていた私は、そのことをすっかり忘れていたのだ。

 自業自得。

 それにもう次この部屋に入る人も決まっているらしく2日後にはもう次の借り人が入室する予定だと言う。

 大家さんもそこまで鬼ではなかったようで今日中にという荷物を纏める時間を与えてくれた。

 不幸中の幸いか、請け負っていた仕事がひと段落していたため、私は引っ越しのための荷造りをし始めた。

 家具は備え付けだったので、寝具一式と仕事で使う布やなめし革、各種の糸などは纏めて木箱に詰め、糸車や織り機は折りたたみ式なので畳んで専用のケースに入れると荷預かり業者に頼んで一時倉庫で保管してもらい、数少ない衣類や細々とした裁縫セットのみ使い古した大きな旅行カバンに詰めた。

 元々所持品が少ないのが幸いして荷造りは午前中で何とか終わり、大家さんに挨拶をしてから5年間住んでいた部屋を後にした。

 昼に差し掛かっていたので軽く昼食をとったあと、当面の仕事と住まいを紹介してもらおうと、少々重たい手荷物をもって私は裁縫組合ソーイングギルドに向かった。


 そこで、私は彼と出会った。
















基本、彼女と彼との交互視点でお話を進めていきたいと思っております


一生懸命で不幸体質(?)な裁縫士の彼女と無口無表情な騎士の彼の物語


頑張って続けて書きたいとおもっています!

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