危険な洞窟
ピチャンッ、ピチョン。洞窟に、水滴が落ちる。
ザーワ、ザーワ。なんだか、獣の臭いがする気がする。ストレスか?気のせいかもしれない?ここは、人の手があまり入ってない洞窟だ。取り敢えず、危険なのだ。なぜ、こんなところへ入ったか。ここで、幽霊の目撃情報があったからだ。
日本・怪奇物研究会のボスである私が、行かない訳にはいかない。まあ、会といっても六人しかいないのだが。
しかし、謎だ。こんな、滅多に人が来ない洞窟でなぜ、幽霊が出るのか?殺人でも、あったのか?怖い。普通の意味で、怖い。さあ、幽霊の目撃場所は、ここら辺だ。いた!
ゆったりとした服を着た、女の幽霊だ。
表情を見る。何か、最期のヒントが分かるかもしれない。
「何か、救いが欲しいのか?」私は、聞いてみる。
「会長、怖いです」女性の会員が、ビビり出した。
「待てっ、落ち着いて。霊は、何か伝えようとしているのかもしれない」
「会長、マジ、ヤバくないっすか?」一番若い、男の会員も脅えている。
参ったな、今日はこの二人と来たっていうのに。まだ、慣れているとは言い難いこの二人しか、来れなかったのだ。一人にされたら、この危険な洞窟で、色々と怖い。大丈夫だ、この二人は、これでも、こういったことには、普通より強いはず。
「ア…アア…ア…ア」幽霊が口を開いたり、閉じたりする。
幽霊は、宙を歩いた。足首の下辺りから、よく見えないのだが。私は、その後を慎重に付いて行く。
「アッと……危ない。ここ、崖になっている」
「会長、危なかったですね……」女性の会員は、九死に一生を得たような感じになって、言った。
下を覗いてみると、暗くて何も見えない。ライトで、照らしてみた。すると、二、三メートル下に服を着た人骨があった。服装は幽霊に、似ている気がする。多分、そうだろう。
霊は、きっと生きている時、ここから落ちたんだ。そして、恐らく足かどっかを負傷して動けなくなった。
しばらく、周りの確認をすると回り込んだところに、ロープを引っ掛けられそうなところがあった。降りてみる。すると、女性の骨の近くに、ちっちゃな骨。
これは、赤ん坊の遺体の骨だろう。
女性は身分証を持っていたので、誰なのか、分かった。
後で、聞いた話によると、彼氏が、子供の親だと認知をしてくれないので、ヤケクソになって女性は、ここで産もうとした。それで、ゆったりとした服を、着ていたのだ。ところが、崖に転落。苦しくてここで産んで、親子二人、衰弱死した。
女の幽霊は「ア……ウッ…酷い、親だった。頼む…日の当たる場所に、この子と二人で葬って…」と言って、すっきりしたようになって、急に天井から太陽のようなライトが出て、安らかな顔で身体の上の方から、消えていった。
きっと、女性は死ぬ前になって、子供にしたことを反省したのだろう。
終
赤ちゃん、お墓に葬ってもらえるから、不幸で酷かったけどまだ、安らかになれるね。