蛇足
使用上の注意
蛇足の使用に当たっては一度本編を読み終えてからの方が適切と考えられるので、まず本編をお読みください。
なお蛇足の「行」は本編の当該行の目安で(作者の数え間違いや書式変更などで)多少前後していても広い心で利用していただければ幸いです。
そしてお知らせしますが、この作品に登場する人物、団体、事件などは、実在の物とは関係ありません。また、たまに物理法則を無視する時もありますが、面白さ優先の法則で、これまた広い心で許していただければ幸いです。
★十月のB面①
●一年一組でのパート
63行:「イケてないOLのようだ」
何度も確認しますが、清隆学園高等部の制服は、毎週のように死体が転がるという物騒な国民的アニメに出て来る帝丹高校とネクタイの色が違うくらいでほぼ一緒のつもり。あっちは黄色いベストに緑色のネクタイ、こっちは紺色のベストに臙脂色のネクタイのつもり。
93行:「サトミとの熱いキスを想い出していたとか?」
『清隆学園の二学期』収録の『十月の出来事』参照。
144行:某特務機関の髭司令
息子を人造人間初号機パイロットにしたりする。
179行:ペラ紙一枚
もちろん、この紙も図書委員会で保管される事になる。
205行:事件の詳細
『清隆学園の二学期』収録の『十月の出来事』参照。
253行:二学期に入ってからは、どうやらやめたようだ。
やめた理由などは『七月の出来事B面』参照。
272行:美女やら野獣やらが誰に相当するのかは推して知るべし。
推して知るべし!
281行:体育の授業を休みがち…
アキラが体育の授業を休みがちなのは、身体の調子が悪いというより『施術』で常人離れした膂力や反射神経を得たからという事の方が理由である。まさか体育の授業でクラスメイトに重傷を負わせるわけにはいくまい。個人競技ならまだしも、ドッチボールで内臓破裂とかシャレにならない。
283行:ヒカルと比べてアキラの方が消極的…に由美子には見えていた。
あくまでも由美子の視点からである。
313行:「杭を打ち込まれるとは、オヌシさてはバンパイアだな」
欧州中央部は二一世紀にもなって吸血鬼騒動が起きるぐらいだもの。
326行:ヒカルはアキラ…、持っていたブラシで髪を梳かし始めた。
ヒカルがお姉さんのようでなんと微笑ましい光景だろうか。もちろんヒカルの心情の変化を表現している。
344行:加賀沼祥子生徒会副会長
初登場は『清隆学園の三学期』収録の『二月の出来事』。この段階では話しのネタとしてしか扱われなかったので、二月の時点で忘れられていたものと推察。
392行:「生徒会にまで苦情が回ってる時があンのよ」
由美子の能力ならば、それを端緒として『常連組』の排除に動くことができると思われる。それをしていないということは、けっきょく彼女だって心のどこかで『常連組』とワチャワチャしているのが楽しいと感じているのだろう。
439行:「…個人で飛行機だって作れるぜ」
日本でも個人で飛行機を作って飛ばす愛好家たちがいる。アメリカだとプラモデルのように全部の部品がセットになっている商品を通販で買う事ができたりする。
●大学の教会でのパート
17行:小さな教会
清隆学園に教会があるいきさつは『九月の出来事B面』参照。
36行:いま着ている黒い服も…第二種制服である学ランだ
ここで注意。優の服装について。彼は教会に来るときは学ラン姿であるが、他の時は黒いワイシャツに白か黄色のネッカチーフという姿である。夏なので上着を着ていられないのだろう。ただし教会へはまともな服装を着ていくように心がけているとか? ただしボタンを外したままだとか、下に着るワイシャツが白色でなく黒色であるなど、服飾規定を全て守っているわけでは無い。
51行:あまりにもサイズが小さすぎて…
前回から体が成長しているのだ。
183行:タコのようなイカのような外見をした
まさかクトゥ…
217行:「たしかに世界地図ではある」
中世ヨーロッパでは、この世界地図で正解だった。まあピーリ・レイスの世界地図など例外はあるのだが。
279行:抽象化された世界地図となった
文章で書くと、何やら難しい図形を書いているようにみえる。ただ複数の三角形と、一つの四角、それにソーセージのような楕円だけで書いた世界地図である。
316行:「おそらく地上へ下りた時に…別の場所へと堕ちたのだろう」
某バイオハンター「おのれ、バルジオンさえあればっ!」
364行:左側の三角形と逆三角形に挟まれた四角い空間の右端の上に…
エレサレムの辺りである。まあキリスト教徒には世界の中心かもしれない。それかバチカン市国の方が世界の中心かな?
367行:「本当は魔術という物は戒めるべき物なのだが、今は他に方法が無いのだ」
もちろん正統なキリスト教では、あらゆる魔術を禁忌としている。だが、それらを地上にもたらしたのも天使である。
382行:今度は地図の右端にある逆三角形が繋がっているあたりへと垂らした
パナマ地峡の辺りである。
389行:唯一描かれた四角形の真ん中へ
オーストラリア大陸である。
398行:曲がった楕円形の上で
日本列島である。
★十月のB面②
●社長室のパート
1行:作業着姿の男性
後述するが、さすがに高級スーツでトイレ掃除は無理があるので、着替えていることにした。
7行:少しだけ開けたままになるよう扉を閉め…
まあ彼なりの在室を知らせる方法でもいいし、ずっと後でヒカルが言っているように、人間というのは閉まっている扉をわざわざ開けて中を確認するという不思議な性質を逆手に取っているでもいい。
8行:脇にある個室へと足を向けた。
毎朝着替えているなら、社長専用の更衣室があってもいいかと思って。もちろんこの部屋には、普通の仕事に使用する服から、今着ていた作業着、それに急な政治家のパーティや、冠婚葬祭用の礼服まで揃っているものとする。
13行:藤原文孝
由美子の父親。初登場は『清隆学園の一学期』収録の『五月の出来事』である。
17行:初心を忘れないため…
全国すべての社長が精神修養のために何かしているのは間違いないと思い、文孝にはトイレ掃除をさせてみました。社長が率先して嫌な仕事をしていたら、部下たちもうかうかしてられないよね。
28行:テレワーク
まさかこんな社会変革を疫病一つで強いられるとは思いませんでした。いちおう『出来事シリーズ』では、マスクが必要ない世界が続いているものとします。まあ疫病が無くても、個人的に花粉症だの風邪だのでマスクをする人間はいるけどね。
41行:成田
彼の初登場は『清隆学園の一学期』収録の『五月の出来事』である。イメージとしては某特命係長といった感じで、大きな金を動かす会社で、裏の仕事を片付けている半ばスパイのような男である。
52行:キビキビとした動き
前文で否定しているが、いや絶対、何か格闘技は修めているだろう。それと社長室の扉は開けっ放しという点に注意。
70行:つまりわざわざ手書きの書類を用意させたのである。
デジタル化が進んだ現代、外部に秘密を洩らさないようにするならアナログが一番安全という事になる。昨今の疫病対策でも、ワクチンを配布する日本政府のシステムにクラッキングをかけたクラッカーが敗北した事例がある。なにせいまだにファックスでデータのやり取りをしていたとは知らなかったのである。その後、担当大臣の改革でデジタル化が推し進められたのは、皮肉にも思える。
91行:トックリとは社長室でだけで使用する隠語である。
扉を開けっ放しにしているため、固有名詞をぼかして会話をしないと立ち聞きの心配があるから、隠語を用意している。これにはあらゆるタイプの盗聴器や、窓越しに望遠鏡を使った読唇術などで、室内で交わされる会話の内容が外に漏れても大丈夫なようにと、副次的な意味もある。
92行:由美子の叔祖父である藤原弘幸
初登場は『清隆学園の一学期』収録の『五月の出来事』である。
101行:おかげで春に外国企業による買収騒ぎの時につけこまれる一因となった。
『清隆学園の一学期』収録の『五月の出来事』参照。
124行:博多大学
九州の福岡県にある国立大学のつもり。もし同名の大学があったとしても、本作品とは何ら関係ない。
138行:人工多能性細胞や刺激惹起性多能性獲得細胞
前者はおそらく本物の不老不死に至る階梯たるIPS細胞のことである。最近でも失明した人が視力を取り戻したとかで話題になった。後者は色々と問題になったSTAP細胞の事である。
145行:秘書部の岩田
彼の初登場は『清隆学園の三学期』の『一月の出来事』と言いたいところだが、偽名である可能性が残るのと、岩田という名前がこの事件に関わる者のコードネームとして割り振られている可能性もあるため、ここでは同一人物と断言しない。
190行:秦の始皇帝
彼が国中に不老不死の薬が無いかを調べさせたのは、そういった記録が残っているので本当の事だろう。当時の最新医学で作られた不老長寿の薬というのは、水銀が主な成分だったとされる。硫化水銀を加熱すると水銀が生成し、さらに過熱していると酸化水銀となる。この現象を科学知識のない人間が見ると、赤い粉から銀色の水となり、そして再び赤い粉に戻ったように見える。よって元に戻る物質として硫化水銀は不老長寿の薬の原料になった。もちろん今では毒薬である。そして四五歳で亡くなった始皇帝の死因も水銀中毒ではないかと言われている。長寿や不死を願って、かえって寿命を縮めるとは何とも皮肉なものだ。
205行:…成田であったが…静かな声を出した。
半期決算とか穏やかな文言を使用しているが、グループに不利益をもたらしそうな弘幸に対して能動的なアプローチを試みてはと提案している。例えば暗殺などの物騒な手段は極端までも、濡れ衣を着せて犯罪者として一族から追放するなど、手は色々あるだろう。
211行:「…そう早急に資産整理をしなくてもよいだろう」
前の成田の発言を受け、ブレーキをかけている。まあ敵対していても身内だからなのだろう。
218行:部屋の隅にあるシュレッダーへ書類を呑み込ませた。
もちろんシュレッダー屑は成田が責任をもって処分しているはずだ。毎日は無理としても、一週間に一度から二度、焼却処分していると思われる。
●また一年一組のパート
30行:「深夜零時にとあるサイトに名前を書き込んでやる」
きっと「いっぺん死んでみる?」とか訊かれるのに違いない。
44行:藁半紙
コピー用紙が大量に出回っている今だと、歴史の遺物レベルに珍しい物かもしれない。
159行:「未来から来た美少女暗殺マシーンが…」
元ネタはもちろん有名なハリウッドのSFシリーズ、デデンデンデデンである。
175行:「銃ならあるぞよ」…口を空振りさせているアキラ…
ヒカルが実銃を所有していることを言い出すのではないかと心配したのだろう。
187行:「タイムトラベルしてきた時、シュワちゃん何も着ていなかったでしょ」
主役の殺人マシーンを演じたアーノルド・シュワルツェネッガーのこと。タイムトラベルする時には服すら持っていけないという設定がある。
200行:「これもドコかで聞いたような話だな」
たぶんアメリカ海軍空母艦載戦闘機F一四「トムキャット」が主役の映画「トップガン」の事だと思われる。続編は主役がFA一八「ホーネット」に代わっている。和美的には、もう一世代飛ばしてF三五C「ライトニングⅡ」でも良かったのではないかと思う。
221行:「不思議の国とか、鏡の国みたいな感じでどお?」
イギリス児童文学の金字塔である「不思議の国のアリス」の事だろう。
223行:「十分、いまの清隆も不思議な学園だけど」
まあ、すでに超高校生級の天才である明実が居る時点で不思議空間であることは間違いなし。
225行:「碌でもないアレとかソレとか。目の前で起きていても信じられない事件ばっか」
由美子がドノ事件を指して言っているのかは不明。ただ『五月の出来事』のように自分が原因になっている事件も多いけどね。
234行:「なんか刀を拳銃に代えて似たような映画があったよな」
たぶんちょっと古い日本映画「凶銃ルガーP〇八」のことかな? そんなメジャーな作品じゃないのに知っているとは、さすがヒカルさんといったところか。亀の甲より年の劫って言うものね。
255行:他にも色々な企画書が積みあがっていた。
他の企画は『出来事シリーズ』の合間に「小説家になろう」へ投稿した作品群に大体なっています。
288行:「でも名前を出す前に分かってくれるなんて…」
まあ恵美子が誰の名前を上げようとしていたのかは、すぐに分かるよね。
319行:「そういうヒカルちゃんは、西部劇見たことあるの?」
ちょっと昔には東京ローカルの放送局で、お昼にB級の西部劇を流していたものだが、最近はめっきりなくなったなあ。
324行:『シェーン』
印象的なラストシーンで有名な西部劇。封切り日はアメリカで一九五三年四月二三日、日本では同年の一〇月二〇日である。今から半世紀も前の話しである。
325行:『荒野の一ドル銀貨』
和美の一番好きな西部劇である。日本での公開は一九六六年だ。
326行:ジョン・ウェイン
昔のハリウッド俳優である。西部劇だけでなく「史上最大の作戦」とか「硫黄島の砂」などの戦争映画にも出演している。が、やはり「駅馬車」とか「ラスト・シューティスト」とか西部劇の方が有名かなあ。とくに「ラスト・シューティスト」は癌で余命僅かなガンマンという、自分に似た役を演じた。胃癌により一九七九年没。おそらく生涯で一度も来日していなかったと思うので、ヒカルが握手をしたとしたらアメリカでのことだろう。
●また大学の教会でのパート
14行:「…ギャラルホルンが鳴らされることもないし、赤き竜が出現してもいない」
ギャラルホルンとは北欧神話で世界の終焉を迎える最終戦争が始まる時に鳴らされるラッパの事。転じてヨハネの黙示録で、世界の終焉を迎える時に鳴らされる七柱の天使が吹くラッパに例えられることが多い。赤き竜は、同じヨハネの黙示録で姿を現せる邪悪な竜で、サタンの化身とされる。まあ世界の終わりが始まってはいないよと言われて、優は反応に困ったことだろう。
55行:グリゴリ
地上に様々な文化を伝えたとされる天使の一団。善行だけでなく悪行も伝えてしまったため、神の怒りを買ってミカエルによって地下へ封印された。その天使と人間の女が交わって生まれた巨人たちが、地上を荒廃させたため、神は地上を洪水で一掃しようとする。そこで現れるのが、箱舟で有名なノアの一族である。
64行:「…今日は月曜日だ。仕事を始めるのにコレほど適した日はない」
旧約聖書によると神は六日間働いて世界を創世し、最後の一日を安息日にしたとある。つまりキリスト教的には日曜日は週の最後の曜日なのだ。神が天と地を分けた最初の月曜日に仕事を始めるのは、天使的にも能力が高まるのではないだろうか。ちなみにアメリカではまず地球ができてから太陽が生まれたと教える学校があるんだそうな。宗教おそるべし。
92行:紙に描かれているのは大きなサツマイモのように見えた。
いわゆる「行基図」って奴かしら。奈良時代のお坊さんである行基が作図したとされる古地図の事だ。各藩をだいたい楕円形で記して、繋げていったような絵になっている。まあ三角形で描いた世界地図でもダウジング出来たのだから、これでもいいかもしれない。ただ沖縄や北海道は含まれていないと思う。
96行:伊能忠敬
その存在がオーパーツレベルの日本地図『大日本沿海輿地全図』を作った人で有名。ちなみに作った理由は「地球の大きさを知りたかったから」だとか。
123行:まるで地球儀をアメリカ大陸中心に見たような作図であった。
イギリス中心にすべきだったかな?
142行:南鳥島
実物の写真を見ると、ほんの一つの岩で驚かされる。ただし満潮時の海面より上にあるので、国際法上「島」に間違いない。南鳥島が存在する事により日本が得られる権益が羨ましいのか、色々な国が島とは認めないと難癖をつけてきている。
172行:左側の長方形の上
九州である。
182行:菱形の真ん中
北海道であるな。
★十月のB面③
●東京駅からのパート
1行:新幹線「のぞみ」は、定刻通りに…
博多から約五時間で東京だもんな、新幹線も速くなったものである。和美が生まれた時は、岡山までしか開通してなかった。わざわざ鉄道を使用した理由は、飛行機が嫌いだとか? 気圧差が感じられる飛行機を嫌がる人も多いと聞く。また車だと時間がかかりすぎるからか?
15行:臭い町
夏には光化学スモッグが発生する都市ですから、地方から来られると嗅覚に不快を感じる方がおられるかもしれません。
23行:他にも数名のサラリーマン風の男が乗り込んで来た。
まあ一応、お金持ちの老人だから、テロリストなどの誘拐対象になるかもしれない。そういった理由で、ボディガードがついているのだろう。駅から出た後のリムジンには乗りこんでないが、前後を別の車で警戒しているものと思われる。
63行:「ユー坊…」
弘幸による由美子の呼び名である。
75行:彼には生物として男に問題があった。
無精子症など不妊が男側の原因であることも少なからずある。それなのに子供(孫)ができないのは妻(嫁)のせいだと言われる事が多い。
78行:兄の次男である文孝
弘幸から見ての続柄である。彼には兄がいたが、すでに他界しており、その後を文孝が継いだという事になっている。弘幸は文孝の兄に後継者になってもらいたかったが、原因は不明だが、文孝が後を継いだ。それから弘幸と文孝の不仲は始まった。という設定を作ったのはいいが本文で使うところが無かったので、いま書いておこう。
83行:幼児ながら大人顔負けの会話をこなす彼女に…
女の子は口から育つと申しますから、生意気な事を小さい頃から言ったりします。それを親の贔屓目ではないが、弘幸は由美子の将来が楽しみだと取ったのかもしれない。
94行:「お嬢さまは…」
弘幸の娘ではないが、周囲にはそう呼ばせているのだろう。
101行:弘幸にとって、ただの秘書では無い…
このスケベジジイ。いったい何人の女を囲っているのやら。
117行:週末に赤い文字…
金曜日から連休が始まって、日曜日までの三連休ということになる。ただし清隆学園高等部は土曜日にも講習会があることが多いので、休みではない可能性もある。おそらくメールをよこした人物が、これからどのような行動を取るのか推察したのだろう。
119行:『西部劇ビレッジ』
まさか正式名称を使用するわけにもいかず、ちょっと捻ってみました。
120行:ディストレス投資会社
債権管理回収をする投資会社。つぶれそうな会社や団体を買い取って、立ち直らせたり資産売却などで経営を正常化させたり、また経営を終わらせるにあたって似たような事をする。
125行:「…こちらから地権者へ話を通しておくか」
つまり後の方でサトミが色々な手配を自慢げに話すが、ほぼ弘幸に世話になったという事だろう。
129行:「先に上京なされたミオさま」
おそらく最後の章で出て来る片岡澪のことであろう。
132行:ワルシャート&ブレイド海運
和美が設定した架空の海運会社のつもり。もし同名の会社があったとしても、本作品とは関係がありませんから。名前の由来は、蒸気機関車の弁装置を発明したワルシャートさんとブレイドさんから取りました。ワルシャート弁装置は有名なデゴイチを始めとして国産蒸気機関車にたくさん採用された。ブレイド式弁装置(ブレイド式チェーン駆動弁装置とも)は、英国面全開の機構である。
140行:「そうか、東京を出るか」
弘幸のこのセリフで、話し後半の事件は彼が仕組んだものという事がわかる。
●またまた一年一組のパート
73行:松山マーガレット
もちろん、その正体は『施術者』の一人、クロガラスである。初登場は『六月の出来事B面』であるが会話の中にはもっと前から登場している。その身体はすでに『施術』によって『構築』された物である。よって由美子たち一般人が混血と言われても分からないほど、外見的特徴に日本人の面影はない。
100行:二者面談
サトミや空楽の在籍する一年三組の二者面談が散々な物だった事は『清隆学園の夏休み』収録の『幕間⑥』を参照の事。
127行:由美子の希望する未来に口を挟む者
ここでははっきりと書いていないが、複数存在する中に叔祖父の弘幸も含まれる。
131行:由美子が希望している進路
ちなみに彼女の希望は学校司書である。
145行:スカートに、無粋な下着の線は見られなかった。
いわゆる「履いてない」って奴でしょうか?
155行:恵美子のようにクラブの方が大事な者
という割に恵美子は剣道部をサボりがちである。まあ弱い連中しかいない部活でよりも、強い物が揃っている実家の道場で鍛えた方が効率的なのであろう。
191行:「意外に聞こえない物ね」
部屋の中では会話もせずに睨みあいをしているのではないだろうか。何せヒカルに進路相談は必要ない。それどころかクロガラスはヒカルを『構築』した『施術者』を殺した仇であるのだ。今は対天使用に同盟関係であるが、いつそれが崩れるのか分からないという、ギリギリの関係である。
205行:「…ヒカルちゃんがダンナさんで、アキラちゃんが奥さんでしょ?」
事故による重傷から回復するために『施術』によって性別が変わったアキラが、会話によってボロを出さないようにと、クラスの中ではヒカルがつきっきりで面倒を見ていた。これを傍から見ていたクラスメイトたちは、積極的なヒカルに消極的なアキラという風に捉えている。
208行:「そういう関係?」アキラが顔を真っ赤にした。
まあヒカルにアキラは告白しているから、指摘されたら赤くもなろうというものだ。
211行:「ええと従姉妹なだけ」
いちおうクラスメイトには入学時から二人の関係は従姉妹という説明がしてあった。
216行:由美子の指摘通りに、室内は静かな物だった。
話すこともなく、ただアリバイ作りのために空き教室に籠っているのだから、そりゃあ静かなものだろう。既述の対天使の同盟があるために殺し合いをするわけにいかないし。銃声を心配しているのはアキラだけだと思うけど。
237行:無駄に才能があるバカだけは揃っている
由美子から見た『常連組』の感想であろう。ちなみに清隆学園は進学校という事になっているので、由美子がどんなにけなそうが、それぞれ高い学力を持っているはずである。
242行:『夕陽の決闘』
図書委員会の自主製作映画のタイトルである。内容については『清隆学園の二学期』収録の『西部の出来事』参照の事。
274行:「卑怯者って…」「…書いた本人にやらせりゃいいだろ」
この会話で脚本を書いたのが誰なのかが分かる。
297行:「これはハナちゃんが適任じゃない? そうじゃないと馬に蹴られちゃうわよ」
主人公がサムライと聞いて、恵美子も主役を空楽がやるものだと思ったようだ。それと空楽と花子の「恋人未満、夫婦以上」の関係は、この段階で周囲の公認の物であるということなのだろう。
305行:「適当に端っこにいる役で」
アキラがどんな役をやらされたかは『清隆学園の二学期』収録の『西部の出来事』参照。
399行:恵美子のリズム
エイトビートである。おそらく清隆祭の後夜祭で演奏するドラムの練習だと思われる。
418行:松山先生の声が聞こえて来た。
本文にも書いたが、それまでは教壇と学生机という方向で話し合っていたのを、このあたりでクロガラスが窓際へ移動して、方向的には廊下へ向いて喋り出したので聞こえるようになったのだろう。
436行:春の入学式に参加できず、クラスにも遅れて合流した
詳細は『四月の出来事B面』参照。
443行:まあ体育の授業は休みがちだったのは記憶にあった。
既述したが休む理由は正反対で『施術』のせいで人並外れた膂力を手に入れているからだ。
445行:ちょっと年頃の娘としてどうよと言いたくなるようなガサツさ
まあ元は男子だからな。ヒカルのフォローにも限界があるという事なのだろう。
502行:テキスメキシウム
元ネタは日本映画『ガンヘッド』である。『ガンヘッド』では核物質であった。
506行:観測域外
量子力学によると物質やその運動などは観測しているから成り立っているらしい。観測の外で起きる事も、その内解き明かされる事になるのだろう。
535行:誰がしてくれた話だったのか思い出せなかった。
由美子に似た話をしたのは、地上に降りた天使であるラモニエルだ。ラモニエルが受肉した際に関係者の記憶に介入した痕跡が前回の『九月の出来事B面』にあった。その影響が由美子にも働いて思い出せなくなっているのだろう。
585行:涙目でヒカルの顔を見た。
アキラが涙目なのは感情的な物ではなく、ただ直前まで息が詰まっていたからであろう。
●またまた大学の教会でのパート
80行:中央高速道のインターチェンジ
清隆学園の所在地は、中央自動車道国立府中インターの横と設定している。
★十月のB面④
●入院病棟のパート
3行:ここは東京都下にある公立病院である
後に語られているが、由美子の友人である池上透の入院している病院と同じである。
8行:入院患者
この章では、わざと名前を出していないが、事件の黒幕である藤原弘幸の事だ。
28行:視聴にはイヤホン等が必要
さすがに病院なので、大音量でテレビを見るわけにはいかない。だが弘幸がイヤホンを使用していないのは、そういった物が煩らしいからであろう。それに昨今のケーブルテレビのニュース番組は字幕が多いので、音が聞こえなくとも内容が分かるようになっているし。
46行:瞳と髪の色は平均的な日本人の物に近い
和美の作品で、白い髪は恐怖の象徴。赤い目は狂気の象徴(確認)
54行:小さなご祝儀袋
中には一本入っているのだろう。こういったお小遣いを渡すのは、本当はいけないのでは? まあ老患者は病院側に色々と便宜をはかってもらっているための、細やかなお返しと言ったところだ。
64行:「ミオは…」
おそらく最後の章で出て来る片岡澪のことであろう。
80行:「おお『亀十』か」
東京の有名な和菓子の老舗。
82行:どこぞの未来から来た青いタヌキ
国民的どころか、いまや世界的キャラクターに育った未来から過去を改変しにやってきた教育型ロボットのこと。時間犯罪という概念がある設定なのに、なぜ彼は逮捕されないのだろうか?
87行:「…明日に血液検査が控えておって、お茶以外口にできないのだ」
血糖値が上がっちゃって正確な数値が出なくなっちゃうから。
96行:「昨日は…せっかく東京事務所にお越しいただいたのに…」
このセリフで、彼がワルシャート&ブレイド海運の関係者と分かる。
108行:『物品』『梱包』『運搬』
まあ拉致だの監禁だのあからさまにヤバイ単語を使う事を避けたのだろう。老患者が遠回しに暗喩する言葉を使用したので、見舞客の方も同じ単語を使用したのだろう。なにせ公立病院であるから、盗聴器などの心配をしたのかもしれない。
127行:「今回はそういう事なのだ」
老患者が手駒を使用しなかったのは、対立している相手である文孝の妨害を恐れたからか。
135行:「…都内でそういった活動は致しておりません…」
理由は後でヒカルが解説している。
149行:老人は指を三本立てた。
まさか三〇円というわけではなかろう。二〇二二年の相場として三〇〇万円か? 三〇〇〇万円だと多すぎるし、三〇万円だと安すぎであろう。
155行:右手の指を開いて見せた。
これもまさか五〇円ということではなかろう。前金が三〇〇万円としたら五〇〇万円か? 合わせて八〇〇万円、必要経費別途ならば、こういった法に抵触するどころか引っかかる仕事もやってくれそうな気がする。
●被服室のパート
24行:ベージュ色のブラと、お揃いのパンツ
恵美子が、サイズが大きくなると可愛いのが無くなるから不満と言っていたのが『清隆学園の夏休み』収録の『七月の出来事』でのこと。でもリアルで時代が進んじゃって、サイズが大きい下着でも可愛いデザインの物もだいぶ増えた。
26行:鍛えられた腹筋
忘れがちだが、いちおう恵美子は一流アスリートであるから、体もちゃんと鍛えられている。
27行:クラウンブレイド
どんな髪型かというと、クシャナ殿下の髪型と言えば分かりやすいかな?
46行:被服部一年の新井尚美
すっかりB面のレギュラーの座に納まっているキャラクター。A面の方では目立たな過ぎてドコにいるかも分からない「隠れキャラ」だったから、大躍進である。
49行:先輩たちの遺産
虎縞ビキニとかきっとあるんだぜって言おうと思っていたら、まさかの再アニメ化とは…。
87行:情熱の赤色で上下を揃えたヒカル
よし、ノルマ達成。
92行:水色の下着姿のアキラ
今回はアキラもお色気シーンへ巻き添えという事で。
96行:顔も真っ赤である。
アキラ自身が半裸で恥ずかしいのではなくて、『学園のマドンナ』である恵美子と、ヒカルの下着姿が刺激的すぎたのであろう。忘れてはいけない「見た目は美少女、頭脳は男」という某少年探偵のような存在なのだから。
115行:「まあ、いつも一緒にいるけどな」
仲が良くて一緒にいるというよりも、必要だから一緒にいるという理由の方が大きいから、こういうセリフになる。
186行:ドロワーズやシュミーズ
ドロワーズはスカートの下に履く昔の下着。「魔女の宅急便」で主人公が履いている奴って言えば分かりやすいかな? シュミーズは長くて薄いキャミソールの親戚みたいな奴。まあ和装が基本だった日本に入って来た時に混同されて、今ではキャミソールの長いのみたいな扱いである。
189行:「コルセットは巻くのか?」
ブラジャーが普及する前は、女性がコルセットを付けるのは当たり前だった。というか胸を支える下着と言えばコルセットぐらいしか無かった。第二次世界大戦で世界中の国が総力戦に突入し、兵器工場の作業員として女性も徴用されたのが、廃れた遠因。動きにくいコルセットを巻いていたら工場で動きにくいので、ブラジャーなどの新しい下着が普及した。さらにそれが女性の解放運動へと繋がっていくのだが、まあ歴史の勉強は自習という事で。
214行:プレーリースカート
本当は「西部劇時代の女性が着ていたようなスカート」という意味だから、この語は正しくないのかもしれない。
232行:「…ブラピだかレオ様だかの映画の丸パクリ…」
おそらくレオナルド・ディカプリオが悪役で出演している「クイック&デッド」のことかな?
239行:ヘッドドレス
ほら、アレだよアレ。狂三ちゃんが頭につけてる飾り。アレ。
249行:「…三船敏郎が出たアレと、イーストウッドのアレだよ…」
ヒカルよ、ネタバラシは止めなさい。まあ西部劇にサムライと言ったら「レッド・サン」だろうし、イーストウッドと言えば「続・夕陽のガンマン」かな?
293行:「展示」を推していた由美子に唯一逆らった人物でもある。
詳細は『清隆学園の二学期』収録の『十月の出来事』参照の事。
325行:平均的な身長の由美子が見上げるような大男だらけ
ちなみに一番低いのは一七〇センチぐらいの正美であり、そこから電信柱のように超一七〇センチの連中が並び、一番背が高いのは二〇〇センチに届くぐらいの圭太郎である。正確な数字を出さないのは、いちおうまだ成長途中の年齢だからである。実は由美子の身長は女子の平均よりちょっと高めの一六五センチを超えるぐらいある。
330行:幅だけは…、…千差万別である。
ひょろいのは、おそらく正美。相撲取りは間違いなく圭太郎である。
347行:「剣を見世物にするのは、俺の主義に反する」
空楽が嫌がる理由は「武士道に反するから」とかではなく、絶対「面倒くさいから」であろう。
348行:撃剣興行
明治維新で職を失った武士たちが日銭を稼ぐために行った剣術の興行である。廃刀令などで失われようとしていた剣術を、現代の剣道へ繋げる役割をした。ってか、由美子もよくこんな単語を知っていたなあ。
365行:出来立てのタンコブ
まあ由美子が空楽に言う事をきかせようとしたら、こうなるよね。
370行:「格ゲー用のコスプレ」
誰のコスプレなんだろう? 覇王丸だと西部劇に合わなすぎるから、橘右京あたりかな?
386行:「二つぐらい抜けてない?」
作者の心の声がこんなところに。ええとサムスピってこれで全部だっけ?
400行:コルト・シングル・アクション・アーミー
西部劇と言えばという拳銃ですな。ちなみにヒカルの持っている銀色の銃である「イノセンス」は、この銃を欧州でコピーし、巨大化した物である。
436行:ヒカルのガンスピン
そらあ「イノセンス」が手に馴染んでいたぐらいだから、ピースメーカーだって簡単に扱えるだろう。
438行:「私と手だけ交換しない?」「…」アキラと視線を交わして…
まあアキラの腕は肘から先が取れる(もちろん秘密)ので、こういった反応になったのであろう。
348行:写真部の田中先輩
きっと自転車に轟天号とか名前を付けているに違いない。
●またまたまた大学の教会でのパート
33行:オート・フォーカス・カメラで一悶着
そらあ「写真部」の「田中先輩」が持ち込んだ「オート・フォーカス・カメラ」なら一悶着どころか二悶着も三悶着も起きるだろう。
90行:雑木林を示す緑色に塗りつぶされた区画だった。
教会が建っている辺りである。大学側は宣伝する程の施設では無いという認識なのだろう。
125行:…B棟が…一番高い建物であった。…一階建てのA棟とC、D棟は二階建て…
高等部には他にも、体育館、部室長屋と一体になった格技棟、講堂、男女別の寮などが存在する。
135行:あれから優はもうワンサイズ大きい古着を買ってきて…
ラモニエルの体は日々成長しているので、すぐに服がきつくなる。
150行:二羽の姿が見えなくなり…一羽が…自分が消えていない
姿を消すのに失敗したのは、おそらく三羽の中でジョンであろう。ジョンは初登場した『七月の出来事B面』でも姿を消すのに失敗している。
★十月のB面⑤
●司書室でのパート
59行:戦列艦の舷側装甲並みに厚い
その厚さは表面の装甲板から間に挟んで衝撃を吸収する木材まで含めると一メートルほどになる。防御力は後世の弩級戦艦に及ばないが、厚さだけを言ったら一番である。なにせ炸薬を含まない砲丸を叩きつけるだけの大砲が主兵器だったので、衝撃さえ受け止めれば穴は開かなかったのである。現存するイギリス海軍の戦列艦「ヴィクトリー」は、表面の装甲板が無いようだが、舷側装甲として木材でそのぐらいの厚みを持たせている。
60行:金箔よりも薄っぺらい
その厚みは一万分の二ミリだとか。とても薄い。日本ではそのほとんどが金沢市で生産される。
62行:「だいじょうび、たいこばん」
昔、ビビる大木という芸能人が居てね…。(今も居るよ!)
80行:「地権者からの暗黙の了解は取り付けてある」
このセリフで、東京駅からのパートと繋がる。
81行:元は西部劇をメインにしたテーマパークで、いまは長期休園
関東にそういう廃墟があったのよ。今でもあるのかは不明だけども。
88行:餃子で有名な地方都市
関東地方なら宇都宮。東海地方なら浜松。そして二〇二一年、宮崎市が餃子消費量日本一の町となった。まあ、ここでは宇都宮の事なんですが。
98行:山奥槇夫
初登場は『清隆学園の夏休み』収録の『八月の出来事』である。
107行:中古のマイクロバス
出来事シリーズにおける槇夫の存在意義の五○パーセント以上を占める要素。具体的に言うとトヨタ・コースターの初代あたりをイメージしている。
113行:八月三十一日が、どんな地獄だったのか…
そういえば学園物の割に、この八月三十二日が欲しくなるイベントをやっていなかった。でも『正義の三戦士』の連中は学業優秀なんだよなあ。チラっとだけ『清隆学園の夏休み』収録の『七月の出来事』で触れた程度か。
148行:アウトドアでも使えそうなごついスマートフォン
京セラの「TORQUE」シリーズあたりか? だがサトミなら明実のように自作していてもおかしくはない。またメーカーに特注品を依頼している可能性もある。
179行:「おまえ…あたしのスマホに悪戯してないだろうね?」
この反対の意味での信用度の高さは、さすが天敵同士。
181行:核電池
宇宙探査機である「ボイジャー」とか「パイオニア」が搭載している原子力電池の事だろう。なにせ外宇宙へ向かって飛んでいるので、太陽光発電というわけにはいかないのだ。原理は色々あるが、だいたい原子崩壊熱を探査機に必要な電力に変えている。かつてはシベリア地方でも使われたようだ。スマートフォンには入らないだろうとお考えのあなた。かつては人工心臓の電源として開発された小型の物もあった。
198行:サトミは現在時刻を確認した。…ほぼ一週間丸ごと充電していない
読者諸兄は日付単位の事を言われて、時刻は関係ないと思うだろう。が、とんでもない情報に触れた時には、その時刻を確認しておくと、印象深くなって記憶に残りがちになる。
210行:中学校の理科でやったと思うけど、充電の原理は交流の電磁誘導なんだ。
少なくとも和美の中学校では教えてもらった。ゆとり教育も終わり脱ゆとり教育世代で習うのかどうかは知らない。まあ清隆学園の連中はみんな学力が高いので習っていたということでどうでしょうか。ちょっとまてよ…。詰込み型教育を受けていたなんて、和美の歳がバレるんじゃないか?
227行:スマホがスタンドに置いておくだけで充電できる
各社色々ありましたが「Qi」という国際規格で統一されましたな。原理は本文でサトミが説明している通りで補足もなにもない。強いて付け加えるなら送電塔の下に蛍光灯を持って行くだけで、勝手に灯ったりもするのも、同じ原理だ。
233行:「四六時中電磁波を浴びていると、体に良くないって聞かない?」
アメリカやスウェーデンの研究者が提唱し、今では日本でも送電路などから漏れる電磁波に一定の基準が設けられている。
251行:「…あたしの三メートル以内に接近禁止って言っておいたよな」
その理由は『清隆学園の二学期』収録の『十月の出来事』参照の事。
●B棟の屋上でのパート
1行:黒い姿が現れた。
注意。高等部に居る時の優は、暑季は学ランを身に着けていない。もちろん理由は単純で、暑いからだ。
8行:三人ほどのグループ
後から分かるが優と同級生の天文部員だ。この三人が、この年の一年生部員の全てという事になる。
20行:レイリー散乱
どこぞの左目が義眼の高校生「空が青いのは屈折じゃない。レイリー散乱だ」
35行:「…昼間に一等星が見つけられるか…」
これは本当。大層な望遠鏡なんか使わずに、双眼鏡でお手軽にできる天文観測である。ただし本文でも言っているが、太陽には注意。ちなみに和美は肉眼で見る事ができた。(最近、老眼…、ゲホゲホ。いや本の読みすぎで視力が落ちてのう)
89行:白い点は少し右に移動したようだ。
だって地球は回っているんだもん。
110行:階段室の塔屋
高等部B棟の屋上には、東西に塔屋がある。片方がA棟との繋ぎ目にあり、反対側がD棟との繋ぎ目にある。
129行:まるで時代劇の町娘が上げるような悲鳴を裏声で再現した。
といっても、最近の人は時代劇自体を知らないのでは? テレビの解像度が上がってしまって、チョンマゲなどのカツラが浮いて見えるからだとか、あらゆるパターンを七〇年代にやってしまったからだとか、色々言われているが、本当はドラマ制作の予算不足といったところだろう。
145行:左胸に違和感を覚えポケットの上から手を当ててみた。
後述するように、胸ポケットへラモニエルから借りた『天使の涙』を入れていた優。違和感とは熱を発していたとか、勝手に動いたとかそこらへんであろう。
169行:…結晶体が、たったいま光を失うところであった。
ということでラモニエルが求めるスフィアは由美子の周辺にあるという事になりました。
★十月のB面⑥
●誰かの夢のパート
22行:裕次郎
石原裕次郎(一九三四年~一九八七年)のこと。つい最近、兄である石原慎太郎氏が病没したニュースが流れていました。合掌。
23行:北原三枝
石原裕次郎の妻である石原まき子の女優時代の芸名である。裕次郎と二人で日活のドル箱コンビと呼ばれた。結婚後は女優業を引退して、プロダクションの経営に携わった。
同行:吉永小百合
サユリストなる造語さえ生まれた日本を代表する女優。白黒の時代から二一世紀の今まで、いまだ映画に出演し続けている。
29行:浜田光夫
吉永小百合と日活で純愛路線の映画に多数出演した男優。一九六六年に不幸な事件で片目を失明した後は、それまでの純愛路線から色々な役へと路線変更をした。
30行:赤木圭一郎
赤城圭一郎(一九三九年~一九六一年)日活の男優。生前は和製ジェイムズ・ディーンと呼ばれた。まさかその彼がゴーカートによる事故で亡くなるとは皮肉な物である。
69行:バンカラ
もう死語かしら? 粗野で野蛮なぐらいが男として丁度いいと言った風潮の事。あれだ、マンガ「魁!男塾」の世界を地でやるような人たち。
71行:ハイカラ
こちらは少女漫画に「ハイカラさんが通る」があるから死語ではあるまい。まあ簡単に言えばバンカラの対義語。
82行:嫁き遅れを、周囲が心配するようになっていた。
いまの価値観では到底考えられなかったような世界である。まあ昭和時代のOLとは、結婚するまでの腰かけみたいな物だった。誤解の無いように強調しておくが、和美の考えでなく、当時はそういう風潮だったという事実だ。
126行:母から一箱
まあ準備は大切という事だね。
145行:浅丘ルリ子
中学生で銀幕デビューし、日活で看板女優として活躍した。和美の周囲では「へいちゃんの元嫁」と呼称する。その髪型を「ルリコカット」としてみんなが真似をしたが、後の世の松田聖子に通じるものがある。
同行:見た映画
石原裕次郎と浅丘ルリ子のコンビで大ヒットした『銀座の恋の物語』ではないだろうか。
162行:学生運動などと落ち着かない
そういう時代だったのよ。
175行:左手にある貨物駅
東京で貨物駅と言えば、品川区の東京貨物ターミナル駅と、荒川区にある隅田川駅の二つである。特に隅田川駅は鉄道国有化事業で東北本線が国鉄になる前から開業していた古い貨物駅である。
176行:小さな凸形のシルエットをした機関車が…
隅田川駅は入り口のカーブかきつすぎて、長い間(なんと開業から昭和三〇年まで)明治時代の蒸気機関車しか入れなかった。その後、改良工事と国鉄無煙化事業でディーゼル機関車のDD一一形が入線した。ここでは、さらにその後継機であるDD一三形が働いている物とする。
192行:芦屋兄弟と大村崑のテレビ結婚式
一九六〇年三月一日に、芦屋雁之助(一九三〇年~二〇〇四年)、芦屋小雁、大村崑の当時人気のコメディアン…、というより喜劇俳優と言った方がいいかな? その三人が同時に挙式し、それをテレビで中継したのが、後に流行する芸能人の結婚式中継の初めてだとされる。
芦屋雁之助は「裸の大将」シリーズで有名かと思われる。芦屋小雁は雁之助亡き後「裸の大将」を引き継いだ。大村崑はオロナミンCのホーロー看板で見知っている人も多いと思う。
★十月のB面⑦
●ロケ終了後のパート
72行:二人は昼寝を始めてしまった
夢を見たのはアキラという事なんだよという説明。これで今までに三人分の夢を見たことになる。これはおそらく五人分の死体を集めて『構築』されたというヒカルの過去に関係する物だと考えられる。さて、ここでは彼女を構成するその五人を推理してみよう。
ホットスポット・防衛指揮官
グレイズ・航空支援員
ファーストエイド・救助員
ストリートワイズ・追撃員
グルーブ・偵察員
って、それじゃあ「トランスフォーマー」の救助部隊プロテクトボット、合体戦士ガーディアンじゃん!
85行:ヒカルはまだアキラの体に顔を埋めるようにして抱き着いていた。
果たしてプロであるヒカルが、無防備にこんなところで寝るのかという問題がある。自分の体質とはいくらか合わない明実製の『生命の水』を使用しているので、徐々に弱っているという設定があるので、その影響があったのではないか。
136行:花子のお洒落私服
いちおう着替えやすい物を選択したという設定である。Aラインのワンピならば、そう苦労せずに上から衣装を着て、下から抜く事ができるだろう。そうすれば、たとえ更衣室が無かったとしても素肌を晒さずに着替える事が可能だ。
155行:「ほら、前に学校まで面会に来た、会社の人」
花子は『五月の出来事』の時に成田を見知っている。
160行:花子が背中を向けて小走りに走り出した。
全速力を出すと由美子がついていけなくなるからだ。由美子は足に軽い障害があるという設定がある。
222行:クロマ参議院議員
いちおう架空の人物だという事を強調しておく。
226行:重要度四、難易度二、総合でEランク程度の人物
重要度や難易度が何を示すのかは不明。Eランクというのも分からない分類であるが、おそらく由美子の家族の間で人物評価に使用されている物差しなのであろう。
262行:頑丈さが売りの腕時計
Gショックかしら。
●最初の騒動のパート
12行:途端に大きな爆発音とともに小屋が粉々に破壊された。
ちょっと高校生が扱うにしては威力が大きすぎる気がする。また火薬類取り扱いの免許を持っているのかと訊かれても…。いや頭脳労働の二人なら持っていてもおかしくはないか。
45行:白衣に清隆学園高等部の制服
明実がいつもの格好という事で、サトミが青いワイシャツにジーンズを身に着けていることがわかる。ちなみにサトミは、夏でも長袖をえらぶ傾向がある。
74行:ハンドルを握る槇夫が車内を振り返って確認した。
ということで、しばらく車内の様子と、登場人物の再確認が続きます。
93行:カメラを…冷蔵庫の反対側にある電子レンジが置いてある棚へと収めた。
そこに貴重品置き場があるという設定である。
120行:後ろの車内は、厚いカーテンによって仕切られていた。
ほら女の子って寝顔を見られるのを嫌がるでしょ。そのための配慮なのよ。
224行:「…県警の司令本部が使っている回線に割り込んでいるつもり」
いちおうサトミはクラッキング技術を持っているという設定。おそらく本職には敵わないが、こうして情報を取って来ることはできる程度。
277行:「考えすぎだろ」「…東京ヘリポートにでも帰る途中じゃないのか?」
北関東で仕事をしていたヘリコプターが東京ヘリポートへ帰るなら、真っすぐ南下すると考えがちだが、意外と国道や県道などに沿って飛ぶことが多い。真っすぐ飛ぶとなると計器飛行しなければならないが、道に沿って飛ぶ分には地面の目標を確認しながら飛べるので、負担が少ないのだ。
285行:自動車専用道入口
土沢インターチェンジのつもりだが、あそこは料金所が無いはず。槇夫のマイクロバスにETCがついている事を説明するために、ちょっとだけフィクションを混ぜました。
290行:大学の理学部には富士山の麓などにも実験施設があり…
時系列的には来年の話しになる『オペレーション・コード;エルフ』では富士樹海の天文台へ、このマイクロバスで出かけることになる。
310行:槇夫が不快な声を漏らしたのでサトミが顔を上げた。
サトミは寝ていなかったものとする。自称「臆病者」のサトミが、高速道路で寝るとは思えない。おそらく運転手(この場合は槇夫)の話し相手になって居眠り運転防止をしようとしていただろう。それまで二人がどんな会話をしていたのかは重要でないので特に本文では表現していない。
336行:「これがいわゆる『煽り運転』?」
死亡事故を受けて法改正されて煽り運転は「妨害運転」と規定されて、とても重い罪となった。
342行:シートベルトを外すと揺れるマイクロバスの通路を走った。
どこかでもサトミは揺れる車内を走り回っていたような気がする。バランス能力が高いのか、もしくはそういう訓練を自分に課しているのだろう。
352行:女子スペースは窓にもカーテンが引いてあった。
このマイクロバスは『出来事シリーズ』で、簡易な更衣室として何度も利用されてきた。全ての窓にカーテンが無いと覗き放題になってしまうが、フロントウィンドにはカーテンがかけるのは難しいだろう。ということは前からは覗き放題になってしまう。で、キャビンの途中に前からの視線を仕切る別のカーテンもあることにした。
398行:…男が挟まってしまうと判断した槇夫は、ハンドルを左に切った。
まあ煽り運転するような連中が挟まって怪我をしても別にいいじゃないかという考えもあろう。だが、いちおう槇夫は普通の大学生なので、良心からの行動である。
440行:サトミが冷静に相手を見ながら指示を出した。
指示する者の中に空楽が入っていないのは、もちろん彼が夢の中だからである。そして彼が加わらなくてもなんとかなるという計算が働いているのだろう。ちなみに『常連組』最強は空楽で、女性陣最強は人間に限って恵美子で、全ての制限が無いのなら銃を持っているヒカルである。
444行:「…オレに触れるなと注意するべきだったかな?」
サトミも合気道の道場へ通っているという設定があるため、そこそこ強い。ただし正面から敵を撃破するようなものではなくて、奇襲や闇討ちで相手の優位に立とうとする。この場合も警告なしに奇襲して相手を倒している。ここでは殴ったりしたのではなく、足を掬って体の上下を入れ替えるようにして倒したとする。
482行:奪った木刀の刀身部分を握ってドンと相手のノドを突いた。
サトミが正面から戦うとなると、防御が先で攻撃が二の次となり、そんなに強くない事がわかる。
494行:優がドアップになった。
いや、けっしてモデルになってくれた方の性癖を再現しているわけでは…。
504行:顎へまともに竹刀の先端を喰らった男は、顔の大きさを半分にして…
顎が外れると顔の大きさって半分になるのよ。昔、クシャおじさんっていてね。その方も顎を外して顔の大きさを小さくする芸をテレビで披露していた。
522行:「ああ、おれじゃない! こいつが!」
相手の攻撃を誘導して同士討ちさせるなんて、いかにも優が好みそうな戦法である。そして、この後に竹刀の男はサトミに引っくり返されるが、やっぱり正面から正々堂々ではなく、後ろからの奇襲によってそれを成し遂げている。
536行:巨大な肉の塊という鎧の前には無力であった。
そんなことあるかと思う方もいらっしゃるかと思いますが、直径二メートルの肉塊ですよ。木刀で叩いたって、脂肪で威力が削がれてダメージになりませんとも。かろうじて顔に対しての攻撃ならば効くかもしれないが、腕で防御すればいい話だし。お相撲さんが大きな体を作るために食べるのも修行と言うのも納得である。
552行:振り回された男の腕や脚で打たれて…
古くは高千穂遥「美獣―神々の戦士―」で。最近では丸山くがね「オーバーロード」でやっていましたっけ。人間鈍器。
562行:徒手空拳の有紀に奪われたようだ。
実は有紀は恵美子と同じく剣道の特待生で、清隆学園に入学していたりする。しかも他の県から進学したので男子寮の寮生でもある。しかし春に剣道部の先輩方と揉めた恵美子が、男女問わず全員を叩きのめすという事件を起こした。その鬼神の如く強さを目にした彼はドロップアウトして、今は剣道部に所属していない。よって木刀や竹刀を手にすると、有紀は結構強いという設定がある。徒手空拳で相手の木刀を奪うという事は、真剣白刃取りでもやったのだろう。
567行:「九頭■閃」
これこれマンガの技名を言ったら著作権に引っかかるでしょうが。
594行:ブオーっと…大型トラックがタイフォンを鳴らして通り過ぎていった。
忘れそうになるので、ケンカをしている場所が高速道路の上だという事を確認。
602行:一人のサムライが姿を現すところだった。
まあ後述している通り、空楽なんですがね。
612行:「先生! お願いします」「おう」
またサトミに乗せられちゃって、空楽もその気になっていたりする。
639行:「安心しろ。峰打ちだ」
心の中では「きまった」と大満足であろう。空楽は最強のキャラクターなので、こういう時には頼りになる。
676行:「天翔■閃!」
だからマンガの技名を言ったら著作権に引っかかるでしょうが。
698行:ガードロープの向こうへと
ガードレールの親戚である。ビームと呼ばれる鉄板で作られたのがガードレールで、ワイヤーで作られた車両用防護柵がガードロープである。土沢インターチェンジから入る日光宇都宮道路では多用されている。
707行:まったく路外へと落ちる者もいれば…
いちおう確認するが、騒ぎを起こした場所は高架ではない。盛り土で他よりも高くして舗装を施した道である。よってガードロープの向こうは斜面である。
724行:…真後ろにもワンボックスが一台…車内は無人であった。
途中で槇夫が、ハイビームが眩しいと言っていた車である。車内が無人なのは有紀たちに倒されたからだ。
728行:男たちを倒すのに活躍した用心棒…、…空楽である。
まあ主要登場人物の見せ場は作ってあげないとね。
732行:…アクセルペダルの下に乾電池のような物を立てて…
サトミが自作した爆弾である。発煙弾だったり閃光弾だったりするが、アクセルを踏み込んだ瞬間にそんなものが作動したら、運転どころではなくなるだろう。
748行:「…わが家秘伝の一振りを持ち出して来た」
ちなみに銘は秘伝なんだそうな。初登場は『清隆学園の一学期』収録の『幕間③』であるから、結構古い。
775行:カシオペア座のあたりを飛んでいるヘリコプター
まさかホバリングで上空待機はしていないだろう。ゆるく旋回して事件がどう転がるかを観察していたと思われる。まあ、まだこの時は、このヘリコプターが敵なのか否かは分からない段階なのですが。
785行:手でブレーキペダルを押し、もう片方の手をシフトレバーへとのばした。
オートマチック車はブレーキペダルを踏まないとシフトレバーが動かないようになっている。サトミは道から操作しているので、もちろんペダルに足は届かない。よって代わりに手で押してレバーが動くようにしている。
799行:水はけのために路肩に向けてつけられた傾斜
高速道路に立つと、意外に斜めでビックリするのよ。和美が電気工事士だった頃に工事で路面に立った事あるけどさ。上下線の間になる中央分離帯が高くて、路肩に向けて斜めになってんの。工事でゆっくり車を走らせると、自然と路肩の方向に車が寄ったりするの。その経験から無人のワンボックスもフラフラと本線上へさまよい出る事は無いと推定した。もちろんカーブなどでは条件が変化するので、一概にそうだとは言えないけどね。
821行:「うんとこしょ」
槇夫のマイクロバスは自称パワーステアリングなので、前に停車した車を避けて本線に出るためには、力一杯ハンドルを回さなければならなかったはずだ。
838行:いつの間に奪っていたのか…、…誰かの財布のようである。
まあ常識的に考えれば、男たちの誰かが、どれかのワンボックス車内に放置していたのだろう。
843行:「慰謝料ねえ…」
マイクロバスの車検って、一二万円ぐらい軽く超えるような…。いったい幾ら入っていたんだろうか?
862行:「ふむ、つまらん」
クレカとか運転免許とか見て、普通のチンピラと判明したのだろう。すると上空のヘリコプターとは関係無いと思ってのセリフであろう。サトミは騒動屋なので、トラブルが大きければ大きいほど喜ぶのだ。
879行:「…平穏が一番というヒトだっているんだ」
これが男性陣だけなら空楽もこんな事を口にしなかったであろう。
939行:「コジローには正美と、槇夫先輩。ハナちゃんには…」
それぞれの組分けにはちゃんと理由がある。まず男性陣最弱であろう正美に、女性陣最強の恵美子をつけて戦力の均衡化を図る。槇夫をつけたのは、彼へのサービスだ。一番の美人と行動を共にするなんて、男としていい気分になるだろうから。花子に空楽をつけるのは、まあ「馬に蹴られないため」であろう。もちろん自分は公衆電話で情報を収集するために途中で抜ける事を予定している。そうなっても空楽なら一人で花子を守れると信じているのだ。ヒカルに明実をつけたのも、意味は逆だ。ヒカルが明実の護衛役とサトミは知っているからだ。それに圭太郎をつけたのは、防御力最強だからだろう。アキラに有紀と優なのは、残り物同士ということもあるが、戦力として何かあったら遊撃隊として動いてくれることを期待しての事だろう。
944行:同じ数だけが不承不承といった感じで頷いていた。
男性陣は、数人を除いて、みんな恵美子の護衛につきたかったに違いない。
961行:サトミが指を差していたスペースが広くなった。
これはサトミが仕込んでいたわけでは無く、純粋に観察力で、もう出ていく車を推理したのだろう。
966行:ギッと丁字バーのパーキングブレーキを引っ張った。
最近のパーキングブレーキはペダル式が増えたので、こんな旧式の方式を知らない人も増えたのでは?
968行:コラムシフトのレバーを一回引いてから前に押して…
コラムシフトのマニュアル車の、取扱説明書に書いてない操作方法。コラムシフトのギヤは、押して奇数ギヤ、引いて偶数ギヤなのだ。発車する時や止めた時にローギヤへ入れようとすると、人間というのは押す力が弱いので、なかなかギヤが入らない。引っ張る力は強いので、一度セカンドギヤに入れてからだと、きれいにローギヤへ入れられるのだ。
969行:ギヤを固定する。
マニュアル車の駐車手順である。「NHK第一」と覚えると覚えやすい。ニュートラル、ハンド(パーキング)ブレーキ、キーを切って、ロー(一段)ギヤに入れる。こうすれば坂道などでブレーキが外れて暴走する事故なども防げる。
978行:「今からでも代わります?」
サトミはやる気満々だが、さすがにマニュアル車の運転は無理という設定である。
988行:「…オートマ車に甘やかされた日本人が動かせるとは思えませんし」
もちろんオートマチック車も長い距離運転するときなど楽だから否定するものではない。ただマニュアル車の機械を操作しているという満足感も捨てがたい。まあ渋滞に嵌ると一〇分で嫌になるが。
995行:折り戸のステップからアスファルトに降りると…
このあと手動で折り戸を閉めて施錠したことは省略する。
★十月のB面⑧
●サービスエリアのパート
18行:「小銭?」
そのうちキャッシュレスが進んで「小銭」っていう単語も死語になるんだろうなあ。そうしたら公衆電話はどうやってかけるのであろうか?
26行:クリプトン星から来た全身タイツの男
世界で一番、電話ボックスを利用した男。胸に「S」って書いてあるに違いない。
27行:電話ボックス
ちなみに日本では、都市部で五〇〇メートルに一台、その他では一キロメートルに一台の設置を法律で義務付けている。携帯電話の普及により緩和するとかしないとか。
33行:公衆電話の上に硬貨を山積みにして…
ちょっと昔の日本でも見られた光景。
39行:「…ありがとうイズミさん…」
サトミの電話相手だと思われる。おそらくチョコチョコ出番のある情報屋の女性であろう。初登場は『清隆学園の一学期』収録の『六月の出来事』であるが、実は同人誌の頃に、和美の相方の酩酊庵が設定したキャラクターなので、もうちょっとだけ古いのだ。
それと彼女との連絡を公衆電話で行ったのは、サトミが自分のスマートフォンの電話回線はモニターされていると疑ったからであろう。
47行:「どうやら面白いことになっているようだよ」
サトミが面白いというからには、碌な事になっていないに違いない。
71行:研究の内容は知らないのか、サトミは肩を竦めた。
これはサトミの演技であろう。最低でもイズミという情報源があるのだから、狙われた明実の研究している物の名前ぐらいは教えられたはずだ。
106行:「海賊だよ」
某小松未可子が「さあ海賊の時間だ!」とかやる物では無くて、小舟で大型貨物船に忍び寄り、ロープを引っかけて舷側を昇ってきて、船員たちを拉致して身代金を奪うのが目的だったりする。トム・ハンクス主演の映画「キャプテン・フィリップス」が正確な描写をしている。
110行:自衛隊もジブチに基地を…
戦後初の海外軍事拠点と話題になった。いまでも陸海空あわせて四○○人ぐらいの自衛隊員が駐留している。
116行:アメリカのデルタとかSEALs、フランスのGIGN、イギリスのSAS…
どれも対テロなどで有名な組織ですな。
126行:「…特殊部隊を追い出されたとか、なんの冗談だ?」
実際にそんな人物は、最初から選ばれないと思うけどね。誰が選ばれたのかさえ秘密になっていることが多い特殊部隊なので、どれだけがドロップアウトするのかさえもベールの向こう側だ。まあ創作物の敵役などで便利に使われるよね。例えばベネット大尉みたいに。
175行:不良在庫
なんの不良在庫なんだか(笑)
いちおう補足しておきますが、完全武装の兵隊とやりあって高校生が勝てるわけがない。
194行:風に注意さえすれば天体観測を妨げるものは何も無い。
つまりマイクロバスを追跡していると思っていたヘリコプターが見当たらなかったという事。
●カーチェイスのパート
30行:ゴン
初登場は『六月の出来事B面』である。
31行:醍醐クマ
詳細は『六月の出来事B面』参照の事。
46行:どうやってピンポイントで探し出したのか…
まあ方法は色々ある。一番確実なのは、明実を狙っているワルシャート&ブレイド海運の情報網にハッキングなどで割り込むのが実用的でないだろうか。
89行:「この前も、それでオマイの腕が一本盗まれたではないか」
顛末は『九月の出来事B面』参照の事。
121行:ゴンは何も答えられませんと言うように目を細めた。
表だって醍醐クマは藤原弘幸と事を荒立ては無いのだろう。だがアキラたちが抜けるのは対天使を考えると好ましくない。ということでささやかな逃亡の手伝いとして二人を派遣したというところだろうか。
136行:大げさに言えばアキラのおかげで勝利を得る事が出来たのだ。
詳細は『七月の出来事B面』参照の事。
163行:「ハナちゃんが一一〇番していたのに…」
岡花子が事件当時にスマートフォンを握りしめていたのは、このためである。
171行:具体的に言うと千葉県なのに…アメリカ黒ネズミ…行列の曲であった。
全然具体的じゃないという、笑うしかない説明文。和美は臆病者なので、著作権が世界一厳しい団体に睨まれたくないです。ここまでボカしても怒られたら、もう日常会話も出来ないんじゃないの?
176行:「象が踏んでも壊れない」スマートフォン
四月から度々出て来るガジェットですな。ちなみになんで「象が踏んでも壊れない」に拘るかというと、あのCMが流れている当時に「アーム筆入れ」を買ってもらえなかったからだ。分からない方は「アーム筆入れ」で検索。
186行:「…いま一緒にいるのは味方だ…」
いちおうサトミは「ご友人が怪我をなさることになりますよ」とか脅迫されて連れて行かれたことを心配したのだろう。また後ろの「乗り込んで来た女の子」とは大岩輝のことである。彼女が清隆学園へ乗り込んで来た経緯については『六月の出来事B面』参照の事。
193行:マイクロバスに積みっぱなしになっている荷物
監督の由美子や、悪役の恵美子などがロケ中は現地近くのホテルなどに泊まったのだから、アキラたち三人も同じく宿泊したと思われる。よって三人の着替えなどの荷物はマイクロバスに乗せっぱなしということなのだろう。
202行:「呆れた過激派だな」
ヒカルは長い間生きているので、こういう言葉がポロッと出て来る。
208行:「スマートフォンその他の電源はお切りになっていただきたいのですが」
一瞬だけど映画館の注意事項を思い出した和美だったりする。でも最近の若い観客は、黙って映画を見るという行為ができなくて、上映中だろうがスマートフォンを弄り始めるんだそうだ。厳しく禁止すると新しい客層が開拓できないので、限定的に許可を出している映画館も多いのだとか。ええと、本題に戻って、電源を切る理由は本文でヒカルが説明している通りである。
236行:自分からバッテリーを外しながらヒカルは言った。
これでヒカルのスマートフォンは、アイフォンで無いだろうことが推察できる。バッテリーを外すために工具が必要だからだ。
260行:警視庁のSATを…
実際にある警視庁の高度に訓練された部隊である。たまに立てこもり事件などがあると注目される。まあ大雑把な説明は本文中でヒカルがやってしまっているので、ここに書くことは無い。
291行:「…みなさま昼夜問わず町の治安を守るために尽力されて…」
お巡りさんの給料を知ると本当に「悪を許さない正義感」だけで仕事をしているのだなと分かる。まあ、たまに悪徳警官が逮捕されてニュースになるけど。
299行:「荒川渡ってハイサヨナラ…」
東北道なので荒川。これが東海道なら六郷(多摩川)なんだろうな。
300行:「…家に着くまで戦闘だ」
小学校の校長先生が遠足の後に言う「家に着くまでが遠足です」じゃあるまいし。
309行:また自分が知らなかった事情が…
今まで色んな勢力と揉めてきたのに、なんで御門家が襲撃されないのかの説明、というか設定。また海藤家との間にあった壁を取り壊したのも、もちろん両家の仲が良かったこともあるが、どこまでを保護する対象なのかをはっきりさせるためだったと分かる。
338行:「…宮中晩餐会などには、末席ながらお呼びが…」
もう昔で言う華族みたいなもんじゃん。
419行:ウエストポーチのような物から、小さな手鏡が出てきた。
ウエストポーチは黒い自動拳銃用のホルスターである。そして手鏡もこれまでチョコチョコと出番があったが、ようやく本来の使い方をされることになった。
443行:佐野サービスエリアからスマートインターチェンジを利用して
ETC装備車に限る出入口が、佐野サービスエリアにはある。
444行:県道
佐野サービスエリアスマートインターチェンジに繋がっているのは県道三五二号線であるが、物語の設定としては、もう別の所を走っているつもりである。
458行:大岩輝
初登場は『六月の出来事B面』である。
473行:両側がまだ緑色の田んぼという開けた農道へと乗り入れた。
十月で田んぼが緑色っておかしくないかと思った人もいるかもしれませんが『十月の出来事B面』というタイトルに反して、この事件自体は九月に起きています。そうじゃないと、由美子たちが作っている自主製作映画が十月に開かれる『清隆祭』の上映に間に合わないから。B面シリーズはA面の裏話という位置づけなので、タイトルと中で起きている事件とでは時差がある場合がよくある。
509行:「うへえ、カーアクション映画みたい」
とアキラが言っているが、実は和美はあのシリーズを見たことが無い。映画の宣伝は見るんだけどね。和美のフェイバリットカーアクション映画は「トランザム七〇〇〇」だったりする。
543行:「ジェット・レンジャーかな?」「軍用だとカイオワであるな」
説明は本文でしてしまっている。が、ちょっと補足しよう。OH・五八「カイオワ」は長い間アメリカ陸軍の観測ヘリとして活躍した。どれくらい古いかと言うと、あの笹本祐一「妖精作戦」に登場するぐらいだ。ベトナム戦争にも参加しているから、相当古い。そして後継機の開発に失敗して、アメリカ軍からは全機退役してしまいました。今になって慌てて新しいヘリコプターを開発しているが、あまり日本も人の事が言えなかったりもする。民間用の方は手ごろな大きさとタンカを乗せられる便利さから、空飛ぶ救急車とかドクターヘリに採用されていたりする。各県警の航空隊でも結構な数が採用されている。サトミは県警のヘリと誤解していたのかもしれない。ここで敵となっている相手が使っているのは、民間用の普通のタイプであろう。軍用の物は、対戦車ミサイルとかロケットランチャーを少しだけ搭載する事ができる。まあ下でヒカルが言っている通り、敵を呼び寄せる役っていうのが一番厄介な点であろう。
557行:ぶっそうな機体
対機甲師団用の戦闘ヘリとしては、アメリカ軍の「コブラ」や「アパッチ」、ロシアの「ハインド」「ハヴォック」「ホーカム」、イタリアの「マングスタ」、欧州共同開発の「ティガー」、南アフリカの「ローイファルク」、インドの「HAL」、中国の「武直一〇」などがある。ロサンゼルス市警にも一九八三年ごろ青いヤツが居たらしいし、その翌年には黒くて超音速で飛ぶヤツも居たとか。陸上自衛隊も国産の攻撃ヘリの計画を持っていたが、汚職事件の巻き添えで計画が中断。保有している戦闘ヘリは二〇二二年現在六〇機ほどだが、老朽化のために順次退役している。その先の事は未発表だが、ちゃんと考えてくれているといいのだが。まあ歩兵が扱う携帯式の対空ミサイルが発達しちゃって、もう戦闘ヘリは時代遅れという指摘もあるとか。
574行:「人間ってのは前向きに目が…。注意するのは後ろだ」
経験豊富なヒカルが言うと様になるな。元ネタは坂井三郎「大空のサムライ」だったりする。
580行:「ベッドって?」
このためにだけ中継地点を用意しているとは思えないので、普段から「天使」や他の「マスター」に警戒していた。もしくは中継地点を用意する裏稼業の者に大金を積んだか。そのどちらかであろう。和美としては後者のような気がする。
591行:『工業団地入口』
県道も架空の物だから、この交差点も架空の物である。もし似たような名前の道路があったとしても、無関係である。
592行:産業道路という名前の道路
県道も架空の物だから、この道路も架空の物である。もし似たような名前の道路があったとしても、無関係である。
627行:アキラは…パフスリーブの左袖を下げて…
この動作でアキラの着ているブラウスは長袖だとわかる。
629行:細身の腕時計を示した。
今までもチョコチョコ登場していたガジェット。
636行:軍用の腕時計
アメリカのMTM社あたりのよりも、カシオのGショックのグレードがいいやつなんじゃないだろうか。
673行:カーナビゲーションの画面には時計が…狂っているとは考えられなかった。
カーナビゲーションは、地球を回る複数の人工衛星からの信号を受け取り、その時間差で現在位置を把握する衛星測位システムを使用している。よって自分自身が正確な時刻を持っていないと、現在位置が分からなくなる。
679行:「ほう。スピードマスターとは良い趣味じゃな」
その耐久性能はNASAが認めたほど。月へ有人飛行するアポロ宇宙船に乗り込んだ宇宙飛行士たちが身に着けて行った。映画「アポロ一三」で、腕時計で時間を計りながら軌道修正するシーンがあるが、あれは本当だったらしい。ちなみに下の方で明実が値段を匂わせる発言をするが、一番高価なモデルだと日本円で七桁もする。
697行:「あと五〇〇円あったら、電飾が仕込めたのだが」
槇夫先輩のモデルにした人が実際に口にした言葉。某先輩が長期休暇を利用し家族で里帰りするので、いつも使用しているバイクを使わないとして「自由にしていいよ」と貸し出した。そして帰ってきて自分のバイクを見てビックリ。勝手に改造してあったとさ。槇夫先輩のモデルになった人いわく「だって自由にしていいよって言ったから」そしてその後にこのセリフを口にした。
726行:「本物の女みたいになってきたじゃねえか」
体目当てに対して怒るのが女みたいかどうかはともかく、前の方の二者面談でアキラが副担任に言われていた言葉を思い出してほしい。やはり『施術』の影響が出始めているのだろうか。
748行:ゴンがガッと限界まで左にハンドルを切った後…
これが噂に聞く四輪ドリフトですか?
794行:黒い自動拳銃である。
詳細は『四月の出来事B面』を参照の事。
866行:プレス機や旋盤、ブローチ盤にボール盤
全部金属加工の機械の名前である。が、ブローチ盤があるという事は、銃の密造でもやっていたんじゃないのかな? 小さなブローチ盤なら軸加工に必要だが、軽自動車のような大きさのブローチ盤って、使用法は銃身の製造しか思いつかないのだが。
875行:緑色の光は、お馴染みの非常口マークである。
廃墟となって建物が停電しても、非常口の誘導灯は電池を内蔵しているので、何日かは灯っていることがある。この工場も廃業からまだ日が浅いのでは?
904行:「右に二人、左に二人、外に二人」
サトミの情報だと「鬼マッチョ一ダース」であるから、半分足りない。ヘリコプターの操縦士として正副二人と、後から出て来る装甲車に四人乗っていたのではないだろうか。
★十月のB面⑨
●二階へ隠れた二人のパート
12行:壁際に安物のロッカーが並んでおり…
下にも加工機械がまだ並んでいるし、ロッカーとかも中古品で出していないので、まだ管財人は仕事を始めていないんだなって感じ。
24行:「閉めるな」
我々も仕事をサボる時も、休憩室の扉を閉めるんじゃなくて、ちょっと開けとくと覗かれなくて安心。また後の方で鏡を使って戦闘の様子を眺めるにしても、扉は開いていた方がよかったに決まっている。もしアキラたちがあっという間に敗れて、敵が押し寄せてきた時も、閉めるつもりはないだろう。というか、その時は上から射撃を開始した方が有利か。
31行:「ほほう。そういうもんかの」
さすがにこういうことは、学問でなく人生経験の差であろう。
43行:「夜だと目立ちすぎんだよ!」
とは言っても、白衣の下に着ているのは半袖のワイシャツである。白衣ほどは白い面積は少ないが、結局夜だと目立つのでは?
75行:「…もちろん後頭部には、もう一つ新しい口ができるがな…」
たいてい頭を撃ち抜かれると、弾丸が入った側(射入口という)はきれいで、出て行った側(射出口という)はぐちゃぐちゃになる。
77行:「…二口女じゃなくて二口男だ…」
二口女とは妖怪の一種で、頭の後ろに二つ目の口があるらしい。
87行:ゴムを強引に擦りつけるような音は、車のブレーキ音だと思えた。
時系列的な事を言うと、この時にワンボックスが乗り込んで来た。
94行:「…たしかに相当訓練されている連中だな。だが、まあ作戦指揮は稚拙だな」
ヒカルが敵を見ての感想である。たしかに銃の取り扱いなどで訓練されているかどうかは分かる。作戦指揮が稚拙というのは、六人いて二人ずつ三組に分かれたことを言っているのだろう。和美だったら、まず警告射撃をして降伏勧告から始める。警備会社に再雇用されたが、そういう作戦指揮に長けた者までは混ざっていませんということなのだろう。
99行:「完全装備の一個小隊…」
何人で一個小隊というのは、世界的に基準があるわけではないので難しいところ。アメリカのデルタフォースなんかは四人で一組だが、同じアメリカでもグリーンベレーだと一二人で一組だ。
104行:黙って頷くヒカルに明実は明るい声で言った。
ヒカルが黙ったのは、アキラの生命が心配じゃなくて、他の女と行動している事への嫉妬かしら。
●敵側の視点のパート
4行:短機関銃
本文に書いてある通りMP五である。一九七七年のルフトハンザ航空ハイジャック事件でテロリスト鎮圧に活躍し、その性能を知った世界中の特殊部隊が採用した銃である。ええと映画「ダイハード」で(逆に)テロリストたちが使っているサブマシンガンって言えば分かりやすいかな? バリエーションのSD六は本文中で説明しているように、消音機と一体化されたモデルである。普通の民間会社では買えないと思うが、そこのところはフィクションということで。まあ理由付けするなら、特殊部隊OBということで顔が利いたとか、そこら辺であろう。あまりにも普及しているため陳腐化しているなど最近では酷評されている銃でもある。今では予算がある目端がきくところだと、後継機のMP七へ置き換えをしているところも多い。使用している弾丸は、これまた世界中で使用されている九ミリパラベラムであるが、ヒカルの使っている一〇ミリAUTOのバージョンもある。
17行:遊戯銃程度の発砲音しかしない。
日本のサバゲーマだったら、その程度の音でも襲撃されている方向を察知するのではないだろうか。それと映画などではまったく音がしないような表現がされていたりするが、特殊な弾丸を用いない限り無理である。
21行:顔面に機械的な面を被っているからだ。
意外に顔って夜に目立つのよ。体は服装で隠せるが、顔面って剥き出しでしょ。するとあるかないかの星明りでも夜闇の中で白く浮き上がって見えるの。またテロリストが潜む建物に突入する時に被るヘルメットには、透明なフェイスシールドがついていることが多いが、同じ理由でこの部隊は採用していないのであろう。
22行:目に当たるところにある赤色に光るレンズを見る者が…
鉄のマスクに赤いレンズ…。まさか着ているのは都々目紅一とかではないだろうな。
32行:エシェック
新命ヒカルの本名みたいなもの。意味はフランス語で「失敗」。こちらの名前で長く活動をしていたので知られているのだろう。
35行:大型拳銃
市販されている量産型の拳銃というくくりの中で、かつて最強と謳われたのがS&Wの「M二九」だった。映画「ダーティハリー」で主人公が使用して有名になった銃だ。それから世界中で「最強の拳銃」というのが流行し、トーラス社の「レイジングブル」やパイファー・ワッフェン社の「ツェリスカ」、そして「トビー・レミントン」が世界最大の銃というタイトルを得るに至る。ただし「トビー・レミントン」は「世界最大の拳銃」というタイトルを取るだけに製作された銃だし、「ツェリスカ」も受注生産である。量産されて市販されている中では「レイジングブル」が最強だった。「レイジングブル」は、某少佐の演説で有名なマンガの主人公が使用する拳銃に使用されている弾丸(長いな…)四五四カスール弾を使用するバージョンやら、ライフル弾をそのまま使用するバージョンやら、好みに合わせて複数のバリエーションから選べるが、やはり趣味の域を出る物では無かった。そこにS&Wが、かつての栄光を取り戻すために「五〇〇S&Wスペシャル」という直径が重機関銃の弾丸と同じというイカレた弾丸を撃てる拳銃「M五〇〇」を発表。またたく間にブランド力を回復させた。「M五〇〇」の何が凄いって、ちゃんと実用性があるところだ。今ではアメリカの狩人が持つセカンドアームとして広く普及している。ハンティングライフルを持って山に入り、ライフルが何らかの理由で使用できない時に、飢えたグリズリーが現れた場合に役立つとか。もちろん「猛獣狩り」用というのは口語の表現上の話しで、あくまでもライフルが主武器なのは変わらない。
37行:…清隆学園高等部に現れ、…どういう経緯かは分からぬが、…雇われたらしい。
経緯については『四月の出来事B面』参照の事。
47行:そうでなければ化け物という事になる。
残念。整形手術の方が正解ではなく、化け物の方が正解でした。
50行:一発で象をも仕留めることができる…
これも銃弾の威力の比喩として一八世紀から使われている表現で、実際に象狩りをする時にはライフルを使用する。まあ象狩り自体が、環境保護を理由に禁止されている。そして密猟はいまだ絶えない。
53行:使用するのに減薬
これも残念。減薬どころか増薬していたりした。減薬とは弾丸を発射する火薬の量を規定よりも減らす事。反対に増薬とは火薬の量を増やす事である。
79行:上から黒い影が落ちてきた。
ゴンが加工機械の上へと登り、そこからタイミングを見て飛び降りてきたものとする。本来ならば反対の壁際を進んでいる二人組が注意しなければならない。
105行:天井付近に敷いてあるクレーンのレールに当たって…
工場などでは製品の移動などで床上操作式クレーンが設けられていたりする。そのレールが工場の長手方向いっぱいに敷設されていたのだろう。
106行:…赤い火花を散らした。
少なくとも、この男たちはワルシャート&ブレイド海運の海賊対策部門に雇われているのだから、仮想している戦闘場所は船内や海上である。よって跳弾による味方への被害を抑えるために、弾丸はソフトポイント弾を選択しているはずである。弾頭に鉛が露出しているソフトポイント弾ならば、船の甲板や船室といった金属に囲まれた空間においても、致命的な跳弾をかなり減らすことができるからだ。(まったく跳弾しないわけではない)また、まったく跳弾しないフランジブル弾という種類もあるが、粉体金属へ高圧力をかけて製造する弾丸なので高価だ。民間の警備部門がさすがにそこまで装備に金をかけていないと思うので、この場合ソフトポイント弾で間違いないと思われる。
111行:手刀を首筋へと叩きこんだ。
戦闘服や防弾服は、首への被害を防ぐために襟が高くなっているが、ゴンの手刀はそれを避けて入れられたと思われる。そうでないと威力が減衰するからだ。
121行:一連射をして牽制
MP五SD六は三点射モードがあるが、ここでは連射に切り替えての射撃であろう。もちろん当たればラッキーだが、ゴンは相手を伏せさせるために撃っている。そうでないと別々の方向から二人に接近されて、不利になるからである。
124行:固い加工機械に着弾したことによる跳弾を示す。
とは言っても既述の通り、跳弾する回数は一回程度のつもり。
134行:もう一人に距離を詰めるように合図をした。
本当だったらとっくのとうに、指示を出した男が連射をしてゴンの行動を制限し、その隙にこちらの男が距離を縮め無ければならない。この後に発砲をためらう場面もあるので、この男は特殊部隊出身ではないのかもしれない。
169行:…許可されているのだ。迷わず撃ち殺すのが…
とは言っても、後述するように副目標たるアキラに九ミリ拳銃弾は意味が無いのだが。
188行:銃弾の代わりにビヨ~ンとコイルバネが
おそらく銃身上部に装備されているコッキングレバースプリングだと思われる。
●小休憩のパート
14行:右手首と左足首を背中側で繋げる
いわゆるエビ反り状態。普通に手首同士で拘束されても、そういう状態から何とかする訓練を受けている可能性があるが、ここまでされたら文字通り手も足も出ないのではないだろうか。
17行:電源の入っていない小型通信機
なぜこんな物を持っていたのかは後述。
同行:予備の弾倉
果たして何本持っていたのだろう。銃に最初から入れてある分を含めて七本~十本といったところか? 予備の拳銃などを持っていないのはサブマシンガンで充分だからである。
18行:スプレー式の殺虫剤のような形をした物
その正体は後述。
82行:夜闇の中へ気配が消えていった。
とは言っても相手は暗闇を昼に変える装置である暗視装置を装備しているから、視線を向けられたら丸見えなんだけど。
119行:整備工場のガレージのような建物の中に、人影が立っていた。
ゴンの移動速度が速すぎるような気もするが、彼は全速力で移動したのだろう。アキラとダイヤは気配を殺すためにゆっくり移動しているとはいえ、遅すぎだ。
126行:新車に見えるSUV
特に車種は決めていない。和美の思い込みだが、まあ大体ああいうスポーツ系の車は、後部座席の居住性が悪い。
●ミッシェルのパート
3行:駅前のロータリーに繋がる一本道は…
県道や産業道路が架空の物なんだから、この道も架空の物です。
4行:「ナンパ通り」と綽名
関東で「ナンパ通り」と言ったら千葉県かな? でもここは栃木県のつもりなので、もちろん架空の通称です。
9行:売り文句が日本で一番売れている軽自動車
ホンダのNBOXかな?
13行:ニキビ痕がいっぱい頬骨のあたりに残った…
いや、最近は男の子も肌のケアをするから、地方に行ってもこういう人は絶滅危惧種だけどね。
17行:ミッシェルは…、本名である。
いわゆるDQNネーム。きっと表記は「美貝」あたりかな。
同行:ハンドルネーム
この使い方は謝りなのは自覚している。頭痛が痛いみたいな意味になる。本当ならハンドルかネームどちらかだけでいいはず。
25行:女と意気投合し…
最近は本文中に書いたとおりネットを介してお付き合いが始まるようですね。昭和生まれの和美にはいまいちピンとこない。
28行:「夜の方の」ドライビング・テクニック
何を意味するのか和美はわからない。(大嘘)
53行:オートマチックの方が幾分か乗り心地は良いはず…
それどころか安全性能を含めると、もうマニュアル車じゃ太刀打ちできないのではないだろうか? 燃費も今ではオートマ車の方が良さそうだし。自動ブレーキやらステアリングサポートとか、もう少しで完全自動車も市販されるはずだし。
59行:ヤンチャなお年頃であった。
アクセルを踏めば速度が出るのは当たり前。なのに自動車のハンドルを握っただけで、自分のドライビング・テクニックが、みんな世界一だと思い込むのは、マンガのせい? まあ速度を出すと快楽中枢が刺激されて気持ちいいのは認めるが。電気工事士の頃から車は、ただの道具にしか見えない和美には分からない感覚である。
65行:(やっぱ、オートマの軽だとモテねーのかな…)
地方だとそうらしいよ。
67行:ランエボとか…、シビックのハッチバック
ランエボって何? ふんふん某ネットの百科事典だと三菱自動車のランサーエボリューションという車の事らしい。和美がこの単語を選んだのは、ただネットで走り屋に人気がありそうな車だったから。シビックのハッチバックは、和美の友人が乗っていて、とても使いやすそうな車だったから。いちおうマニュアル車であるはずの車を選んでみたつもり。和美の好みの車はと訊かれるとトヨタのハイエース、しかも四代目と答えたりする。なにせ電気工事士の時に乗り回した車だから。
74行:ハードロックが大音量でスピーカーから流れ出ていた。
たまに広い道を歩いていると、ドンツクドンツク音漏れさせている車がいるもんだ。何を聞いているのか分からないが、周囲の音が聞こえなくて不安にならないのだろうか? ちなみに昔、そのドンツクに対抗して、大音量で「モスラの歌」を流して走ったことがある。
79行:まっすぐ家に帰ってもやることがない。
ちょっと昔の地方では、マジに暇だったようだ。いまはスマートフォンのゲームとかも発達したから、やることがないって事は無いだろうけど。まあ、ここではミッシェルが無趣味という事にしておこう。
83行:とっくに制限速度など超えていたが、…当たり前の事だった。
東京だって制限速度を守って走っているヤツなんかいないもんね。
96行:スマートフォンを取り出した。
いまじゃドコにも録画するカメラがあって、日本人特有の同調圧力も加わり、国民総監視社会みたいになっていますものね。とくに「煽り運転」の厳罰化なんて、ドライブレコーダーの発達がなかったら無かったのではないだろうか。まあ、ちょっと息苦しいが、何か犯罪が起きてもお巡りさんの捜査がしやすいのは良い事だ。
100行:町を戦車がやってくる
ハナ肇が愛國八七号でやってくる映画なんて、誰も覚えちゃいないだろうな…。
104行:国防色の車体
その正体は後述。
●アキラの視点のパート
18行:四輪装甲車「コマンドー」
アメリカ製の「コマンドウ」とも表記される装甲車。けっして「筋肉モリモリマッチョマンの変態」のことではない。戦車ですら対戦車ミサイルでバカスカ殺られる時代、耐機関銃弾程度の防御力しかない装甲車には、生存の可能性は全くない。ただ戦争をしなくったって暴動やらテロリストやらの対応もしなければならないわけで、その程度の連中ならば、武装していてもアサルトライフルだったりするから、十分に役に立つ。中南米じゃ武装警察の装備品だったりもする。バリエーションが豊かで、もっとも重武装な物は戦車砲や迫撃砲を装備しているが、さすがに日本への持ち込みは出来なかったのであろう。何も装備していない砲塔付の車体を運び入れ、別経路で密輸したM三七とかM六〇を後日装備したのだろう。ここでは砲塔にM六〇を並列に二挺装備している物とする。まあアキラやミッシェルのような素人から見れば「戦車」だよね。
27行:爆発音がしてガレージの屋根を突き抜けて火柱が上がった。
二挺の機銃から撃たれてSUVは破壊され、さらに燃料タンクのガソリンに火が点いたのだろう。さらに塗装ブースに停められていたことを考えると、引火性の塗料や薄め液なども燃え上がったのかもしれない。
●ミッシェルのパート再び
3行:この間もカーブで滑って擦った愛車の右側を修繕
前の方に書いたヤンチャな運転ってやつね。わざとドリフトできるタイヤに交換して、無理にカーブでハンドルをこじりつつペダル操作すれば、ドリフトのように横滑りできる。が、本物はそれをコントロールし、偽物はただ滑ってガードレールにガシャンとするわけだ。
●二階へ隠れた二人のパート再び
14行:明実の横腹を軽く蹴った。
アキラの事は気になるけど、今回の勝利条件が明実の安全だから、助けに行けなくて苛立っているといったところか。
25行:ヒカルの自動拳銃では…威力が足りないのだ。
ヒカルの使用している弾薬は、一〇ミリAUTOという種類。世界で一番普及している九ミリパラベラムの貫通力と、四五ACPのストッピングパワーの良いところ取りを目指した弾丸で、発表当時は人気が無かった。しかしマイアミ銃撃事件で従来の弾丸に不満をいだいたFBIが、制式弾丸として選択したあたりから人気が出るようになった。でも高威力とは言っても拳銃弾なので、発射直後の計測で九六〇ジュール前後のエネルギーしかない。もちろん気温とか発射銃身の長さとか諸条件で変わるので、あくまでも参考値としての数字である。対して世界で一番使われているアサルトライフルであるAK四七の一九四三年式七六、二ミリ弾のエネルギーは二〇七三ジュールもある。単純計算で二倍以上の威力だ。西側標準の五、五六ミリNATO弾は一七九六ジュールで一、八倍の威力がある。アメリカ軍が発表したばかりの次世代分隊兵器プログラムで採用された六、八ミリ×五一ミリ弾で三六六九ジュールあるらしい。そうなるともう拳銃弾と威力を比べるまでもない。
34行:「よし」ヒカルは…植木鉢を片手で持ち上げた。
おいおい「よし」じゃねえよ(笑)。でも、こういう表現の仕方って好きなのよ。読者諸兄は理解なさっておられると思いますが、この後ヒカルが植木鉢をヘリに投げつけて撃墜という流れである。いちおう、まだ『クリーチャー』として人並外れた膂力は出せるつもりだし、ヘリの弱点である後部ローターを狙った事にすれば、不可能ではない。あれだ。映画「ランボー」シリーズの第一作目で、石を投げつけてヘリにダメージを与えた、あんな感じ。
●ミッシェルのパートまた再び
4行:まるで下手が操作する玩具のように…
少し前なら「下手なラジコン」と表現されただろう。いまやオモチャどころか軍事用に各国で研究されまくっていますな。
5行:クルクルと回転しながら高度を下げ始めた。
この挙動で、ヘリコプターの弱点である後部ローターに異常が出たことが分かる。
13行:通りかかったらしい男が、歩道で何か叫んでいた…
なんと叫んでいたかは後の方で判明する。
●アキラというかダイヤの視点のパート
15行:偶然なのか運命なのか
いえ和美の作為です。
22行:MP五とコマンドーの連装機銃がアキラに向けて火を噴いた。
とは言っても道路から狙っているMP五は、二人があっという間に廃工場の中へ、つまり射界の外へ逃げられてしまってそんなに撃てなかったはず。
24行:アキラの上半身に無数の銃弾が命中し、服がちぎれて飛び散った。
前項でも指摘したが、そのほとんどがコマンドーからの射撃である。
36行:撃たれたはずのアキラは…
読者諸兄はお忘れではないと思いたいのですが、アキラの身体は全身防弾なのです。詳しくは『四月の出来事B面』参照のこと。
39行:アキラはグイッと右腕を突き出した。
今回は掛け声をオミットしてみました。掛け声の後にドカーンじゃワンパターンすぎかなって思って。
●一一九番のパート
16行:そんな説明では現場は特定できない方が当たり前であった。
一一九番に電話して来る何割かは本当にこんな感じの内容らしい。まあ固定電話に限るが、今ではかけてきた電話番号を辿って住所を特定できるから、現場を特定できるらしい。また東京都において、スマートフォンからの通報の場合、電信柱に書かれている番号で場所が特定できるように、東京電力と協力体制にある。
26行:コンピューターのマップで検索できるようになっている。
グーグルマップなどを活用しているようだ。
34行:突然歯切れが悪くなるオペレーター
そりゃ短機関銃なんて持ち出して事を起こしているのだから、手を回していないはずがない。装甲車を持ち出した時点で、ここら辺一帯へ消防も救急も出動させないようにと圧力がかけられたに決まっている。
41行:「あなたはどなたなんです?」
目撃者の正体を探って、後で始末しなければいけない。というよりも後に続く言葉から察するに、面倒事から一般人を遠ざけようとしているオペレーターの良心から出た言葉。
●ヒカルのパート
8行:通信機へ、強制的に着信するようにセットしてある。
電源が入っていなかった通信機を持っていた理由である。後述しているように傍受を警戒して直接のやり取りをしていなかったが、ここで明実が別の車両に乗って逃亡するのを目撃したりした場合、大声を上げれば自動的に電源が入って、全員へ緊急連絡が飛ぶようになっていた。中の四人が倒された時も、本当は大声を上げて緊急事態を知らせなければいけなかった。が、なにしろ相手が強すぎて、それどころではなかった。
15行:どうやら野次馬のようだ。
野次馬も本当は捕まえて、情報が漏れないようにするべきなのだが、そこまで人手が足りない。まあマスコミに映像を持ち込まれても、握りつぶせるように手を回す予定だったとしておく。本当ならば、この産業道路を封鎖すべきなのだが、それも人手の関係で断念したのだろう。
29行:いくら防弾服でも全部が銃弾を受け止めるようにはできていない。
グレードによるが、着ていないよりマシというレベルの物から、ライフル弾を受け止める物まで、防弾服にも様々な種類がある。ライフル弾を受け止められる物は、着ると動きが鈍くなり、船内での戦闘に向いていないので、ここでは正面と背中は拳銃弾を受け止められるレベルの防弾服を想定している。
43行:一回だけでなく、…タンタンと二発放つと、
典型的なコンバットシューティングである。一発目を外しても、二発目を当てるという撃ち方である。
53行:「こいつらが一〇ミリAUTOぐらいで死ぬもんか」
いや十分に殺傷能力がある弾丸である。しかし、この場合はちょっと事情が違う。ヒカルは、自身が使用している銃(「ギルティ」と名付けた自動拳銃)が、ガスオペレーテッド式の作動方式なので、銃身に開いている穴が詰まることを嫌がって、フルメタルジャケットと呼ばれる先端まで真鍮で包まれた完全被甲弾を選択している。鉛が露出している弾丸だと、発射時の火薬の燃焼熱で弾丸の一部が溶けて、作動に必要な燃焼ガスを取り出すガスベントを塞ぐ可能性があるからだ。そしてフルメタルジャケットだと、腹部に命中した場合、腸の弾力で内臓を傷つけないまま貫通することが多い。もちろん射出口となる側、この場合は背筋にダメージを与えるが、体内で弾丸が潰れて威力を増すホローポイントや、体内で七つの破片となって切り裂くRIP弾のような弾丸に比べたら、遥かにマシである。この襲われた男は、腹筋にダメージを負ったため、戦闘行為どころか直立すら不能となっている。
57行:「腹に喰らったって、来週には…ガハハッて笑ってるさ」
偏見である。だが手当てが早ければ、まったくのウソでもなかろう。大げさに例えれば、同じ一リットルの出血でも、モルモットなら致死量だろうが、象なら平気な顔をしているはずだ。男たちはサトミの言う「ゴリゴリの鬼マッチョ」なんだから、平均的な日本人よりは象に近いのではないだろうか。
65行:「いいもんがあるぜ」
何が「いいもの」だったのかは後述。
●ミッシェルのパートまたまた再び
5行:サバイバルゲームで見た事のあるような物ばかりであった。
現在の日本では、個人で銃火器の輸入は犯罪であるが、装備品については制限がない。戦闘服だろうが防弾服だろうが輸入して構わないのだ。よってサバイバルゲームと呼ばれるエアーソフトガンによる遊びにおいて、銃以外は本物を揃える者もいる。また国内各社でよくできたレプリカを製造販売しているところも多い。
7行:ナイトゲーム
発光弾など使用しての夜間に行うサバイバルガームは、これまた趣が変わって面白い。ただし戦闘が近距離になりがちなので、使用するエアーソフトガンはハンドガンなどの低威力な物に限定した方が良い。
15行:顔面を保護する金属製らしい面が見事に割れていた。
つまりヒカルからの射撃がそこへ命中したという事。とくに暗視装置のレンズの部分だったら、相手にダメージを与えられたのではないだろうか。ここでは左右のレンズに一発ずつ着弾し、その衝撃で仮面と顔面が割れたとしておく。
18行:赤い液体を盛大に垂れ流していた。
まあ血液の事なんですがね。いちおう重傷だが死んではないつもり。
●三人組のパート
7行:アキラが叫ぶと同時に、…飛んで行ったのだ。
ロケットパンチのこと。既述した通り、今回は趣向を変えてみました。
16行:剥き出しになった背中
着ている服は普通の物なので、銃弾を喰らうと当たり前だが破れてしまうのだ。
17行:しきりに痛がった。
機銃の弾雨を喰らって「痛い」で済むなら幸せではないだろうか。本当ならアキラの上半身は粉々、庇われたダイヤも蜂の巣のはずである。ちなみに防弾服でさえこれほどの性能を持つ物は無い。腹部と背中にプレートと呼ばれる固い板を入れて、やっと一発か二発ぐらい止めてくれる程度である。どんな魔法が…、いや、そこは明実の超最先端技術の成果という事で。
35行:もはやアキラの身体を覆うのは…
今回のお色気担当はアキラということで。まあ、前の方で恵美子すら下着姿になっているし。
54行:…ゴンが倒れたコマンドーの上に…
火柱が上がる程の爆発の中で、どうやって無傷でいられたのかは、秘密。なんてね。まあ常識的に考えれば、機銃による攻撃を車体の影に隠れてやり過ごし、すぐにブースの外へ出て床に伏せて爆発を耐えたというところか。どちらにしろ普通のサラリーマンには無理だから、ゴンが運転手になる前の職業が気になるところ。
57行:…安全ピンを抜くと、…投げ入れた。バスンという抑えた爆発音…
手榴弾の一種のスタングレネードのつもり。近くでこれを喰らうと、爆発の音と光で行動ができなくなる。まあ本当は、五分も経てば活動できるようになるんだけどね。この後、コマンドーの乗員が登場しない言い訳のつもりだ。横からの攻撃に火事の方へ車体が転がったため、この後に車内で蒸し焼きにされているはずである。いちおう車内に消火器があるので、それを使って生き残ったこととする。
79行:背広のサイズがとても大きかった。
ええと、専門用語でいうところの「彼シャツ」ってヤツですか?
82行:…背広も、だいぶ煤けて…
まあ、火事の中をくぐり抜けて来ればそうなるだろう。
87行:何かが小さく弾けるような音を立てて燃え上がる…
塗装ブースがあるんだから、そこで使用される塗料が置いてあったのだろう。それに火が回って、小さく破裂しているものと思われる。
105行:運転席の扉を開けると、なんとカギは差しっぱなしであった。
鍵を持っている者が倒された後に、再び車で逃走されると車の始動に厄介だから、鍵を差しっぱなしにしたのだろう。
113行:ハンドルの下へ上半身を突っ込んで何か作業を始めた。
おそらくヒューズボックスを見ているのだろう。発信器など設置するなら、一番可能性がある場所だから。次に可能性があるのはバッテリーの裏だな。ともかく電源が確保できるところが一番あやしいが、さすがに全部点検している時間は無いだろう。
50行:なぜか顔を赤くしたアキラが告げた。
ロケットパンチは発射した後でも感覚などはアキラと繋がっている。その右腕をダイヤが抱きしめているのだから、彼女の柔らかさとか温もりが伝わっているに違いない。
74行:いつもは冷静なゴンとしては珍しく舌打ちをしてみせた。
これが間違いなく敵ならば、この車で轢き殺したっていいのだが、一般人の野次馬となるとそうはいかない。その面倒さに、つい舌打ちをしたのだろう。
102行:これまた遠慮なしに食い込ませる。
顔などの部位でなく腹のみなのは、傷口から殴った相手の拳の大きさなどが推定されるため。また不用意に皮膚の破片などが相手の体に残ってもやっかいだし。腹パンならその心配がない。
118行:踏み潰そうとするタイヤを避ける。
既述しているが、殺すつもりならすでにやっている。ここはミッシェルの視点なので、彼の価値観で轢かれると思ったほどの近距離だったということだ。
131行:道のどこにも愛車を見つけられなかった。
彼の愛車の行く先は後述。
●車に乗った二人組のパート
5行:「言った通りじゃろ。ただの野次馬の車だと」
ということで、ミッシェルの車はヒカルに乗り逃げされる事に。東京都に入ってから適当なコインパーキングへ乗り捨て、後は公共交通機関を使用したことは、言うまでもない。
15行:ヒカルは、運転免許を所持していた。
詳しくは『五月の出来事B面』にて。
22行:大光量のランプがオレンジ色の光を投げかけていた。
今ではLEDに変わったところも多いだろう。ただここは田舎なので、まだそこまで最新の物がやってきていないということ。
40行:「今回の勝利条件は、おまえの身の安全だ」
プロらしい一言。どこから始めてどこで終わらせるのか。どこまでやれば満足なのか把握していないと、どこまでやってもやりきれないという事態に陥る。いや、けっして太平洋戦争時の日本軍とか、ウクライナ戦争のロシア軍とか言っているわけではございません。
46行:露とも気にしていないふりをしながら、ヒカルは…
あれだけイチャイチャしている相手の安否が気になっていないわけがない。まあヒカルはプロだから、心に棚を作ってあるのだろう。
●集合地点のパート
12行:物流が主体となった県道
昔だったら鉄道が担っていた貨物輸送だが、モータリゼーションの波でトラックが全国津々浦々荷貨物を運ぶ手段になりました。と、学校で教わる。いや半分は正しいんだけど、なぜ既存の鉄道からトラックへ業者が切り替えた理由を教えないのか。それまでの物流に問題があったのなら、あんな連合艦隊とか建造できませんって。切り替えた理由がお粗末だからか? 戦後の国鉄がストライキやりすぎて、国民がキレたからという事実は、歴史の向こうに。「労働者の権利を」とか「革命を」とか言ってた国鉄の労働組合が、日本国民に「利用者の権利を」と「革命」された皮肉。
21行:着ている物はゴンの背広から…、パーカーになっていた。
素肌に背広よりはまともな格好だし、前を全て閉じれば、まあ町を歩いていても不思議な格好でもないし。
31行:市街地へと至った。
もちろん県道も、産業道路も架空の物としているから、この市街地も架空の物です。
34行:そこの立体駐車場に用意されていた
これもわざわざこのために用意したのではなく、そういう手配をする裏稼業の仕事だと考えた方が妥当だろうな。
85行:地図を確認するまでもなく、ゴンは断言した。
最低でも「ベッド」の周囲の地理は頭に入れていたのだろうと推察できる。まあ用意した車の場所が分かりませんじゃ無駄になるもんな。
99行:「…地方で車の無い生活は考えられませんから」
徒歩どころか自転車で走っているだけで変人扱いだよ。まあ都市部の「信号一つ分」がキロメートル単位だったりするから当たり前でもあるが。
111行:「もちろん彼女にですよ」
ゴンなりにヒカルの実力を認めているという事なのだろう。このまま三人は、無事にこの車で東京まで戻ったことは割愛する。盗難車を利用したため、警察などの追跡から逃れるために、途中から公共交通機関を使った明実とヒカルの方が、帰宅が後になったことは確実である。
★十月のB面⑩
●またまたまた一年一組のパート
35行:が、そこにはビッシリと鳥肌が立っていた。
考えようにとっては失礼な話しである。それに、まあ直前の由美子のなんちゃって敬語は冗談だとしても、彼女は正真正銘の「お嬢さま」なのだが。
84行:「ああ、あのオジサマ」
恵美子も弘幸に会ったことはある。詳しくは『清隆学園の一学期』収録の『五月の出来事』参照。
107行:(…若い看護師たちにチヤホヤされたいだけだろうなあ)
英雄色を好むという言葉もあることですし、ひとかどの地位や財産を築いた男性が、複数の女性と「交友」しても、まあおかしくはない。もちろん物には限度という物があるが。
129行:今日は右腕を三角巾で首から吊っているアキラが…
右腕を必殺技で発射したので、まだ完全にくっついていないのだろう。日曜日の夜にドンパチして、今日が月曜日だから、これでも速くなった方なのだが。
132行:身体の調子が優れないとかで、午後から登校してきた。
それぞれ別に帰宅して、お互いの無事を確認してから、すぐに研究所へ移動。その後、右腕の接続のために『施術』を使ったとして、明実はほぼ徹夜かな? アキラは、午前中は研究所で安静にしていたのかな。
142行:あの地からたった四〇分で東京のホテルに着いたのだ。
全行程のほとんどをポルシェの最高速度で走ったと思われる。日本で一番早い山陽新幹線が時速三〇〇キロだが、それより一割以上速いはずだ。
147行:政治資金パーティは、しょぼい物だった。
本当に政治資金パーティってしょぼいよね。あと、いちおうこの後に続くパーティの風景は、特定の物ではないと断っておきます。
174行:(そういう意味だったのね)
由美子が、真実に気が付いた瞬間である。彼女の頭脳なら、帰り道にチンピラに襲われた事件に自分が遭遇しなかった事と、一見無意味に見える政治資金パーティに参加させられた事を結び付けて考えるなんて容易である。さらに進んで、突然の叔祖父の上京なども合わせて、事件の裏にも薄々気が付いたに違いない。
177行:「…誰にケンカを売ったか教えてあげる」
日本のお茶の間に死体がゴロゴロ転がるシーンを届けるアニメの主人公の声でお願いします。
179行:心配するだけ無駄な相手の笑顔を…
もちろん昼に話した相手というのはサトミである。心配無用とは、由美子はサトミに変な信頼を持っているようだけど…。
214行:「…某国が国連の安全保障委員会決議違反で怒られた核兵器…」
いちおう特定の国家やそれに準ずる地域の事では無いとしておく。ちなみに明実が上げたエネルギー量は、世界最小核兵器であるデイビー・クロケットの弾頭で計算してみた。デイビー・クロケットとは簡単に言うと核弾頭を搭載したバズーカ砲である。最小とはいえ核兵器であるから、撃った方もただでは済まないと言われているが、真実はハッキリとしないまま冷戦の終結で廃棄された。
●病院のパート
66行:「あら? じゃあ、お見舞いの掛け持ち?」
由美子がもう一人お見舞いに訊ねようという友人は、他のエピソードにも出て来る池上透の事だ。彼女に関しては『清隆学園の夏休み』収録の『七月の出来事』参照。
122行:澪と看護師が目線を交わしたような気がして…
後述の事件に関係すると思われる。
126行:赤い色が混じった茶色い瞳に見覚えがあったような気がして…
まあ、後述の事件を起こすような人物は、数えるほどしかいないので、彼女に見覚えがあるのも当たり前かもしれない。
137行:検査入院だったはずの藤原弘幸氏の容態が急変…
前項から、おそらくサトミが看護師に変装して、ライン取りの生理食塩水から、何らかの毒物を混入したのではないだろうか。一番考えられるのは「空気」であろう。数年前にも同じ手口で無差別殺人を起こした看護師が逮捕された。血管に空気を入れられると「空気塞栓」という症状で、重篤な状態となる。(もちろん量にもよる)脳に塞栓が回ると、血流が阻害されて酸素や栄養が脳細胞へ届かなくなり壊死する。その後の処置にもよるが、死亡はもちろん運よく生命が維持されても後遺症に苦しむ場合もある。ちょっと「高校生の悪戯」レベルの話しではない。ただ普通の成人ならば、空気を注入される時の違和感で抵抗するはずである。そこには弘幸が寝ていたことにカラクリがある。つまりサトミが実行犯として行動する前に、抵抗されないように、弘幸へ麻酔薬もしくは睡眠薬を投薬した人物がいるということだ。もちろんそれもサトミでも構わないが、その眠る薬が効いたかどうかの観察を誰かがしていないと、いつ本番を実行していいのか分からない。廊下でアイコンタクトをしていることから分かるように、片岡澪も共犯で、弘幸の意識が無くなったら病室から出る事が合図だとかの申し合わせをしてあったのだろう。彼女が犯罪の片棒を担ごうと思った理由は色々あるだろうが、内縁の妻として弘幸の財産の相続権を持っているから、とか? で、ここでの由美子なのだが、おそらくサトミが何か事件を起こすことを、気が付いていたのではないだろうか。ただ弘幸は、自分の進路へ口出しして来るし、友人にも怖い思いをさせたので、黙って見過ごしたのかもしれない。もちろん可能性の話しであるが。




