表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行ってみたら弟が聖女!?  作者: 矢崎 エメ
19/50

英雄凱旋


 ウェイス神聖王国の中央大神殿。

 大陸中で一番の規模を誇り、『一の大神殿』と呼ばれる信仰のメッカである。

 もちろん、誇っているのはその規模ばかりではない。

 ここには神降ろしの力、セクラを持ち、聖女召喚の儀式を執り行うことのできる神官長<シンナンヤード>と高位神官が3人もいる。

 現在の『一の大神殿』神官長はゼイル。ゼイル大神官長シンナンヤード

 高位神官は、ダナハン、ランパ、レドーナで3人ともセクラの潜在能力ポテンシャルである強いセクリスを持っているのだという。

 

 普段から警備の厳しい場所だが、今は二人の聖女が降臨しているため、超厳戒態勢が敷かれていた。加えて、王子二人も聖女の側に付いている現在、神殿の街に入るのも一苦労の状況だった。





「……ってなわけだ。すぐそばまで来たは良いが、どうやら旅巡業しているウチらのような流れもんが街に入るのは、普通なら難しかったろうってよ。いやぁ、マイヤー殿がいて良かった。念のために前の街から早馬も飛ばしてたしなア。他のやつらは足止め喰らってるが、『風見鶏ウチ』は面倒なお見定めもナシ、すぐさまお通り下さい、ときたもンだ」



 いやあ、良かった良かった、と忙しなく動き回っている団員を見ながら団長が言う。天幕の設置作業は順調に進んでいて、一座は活気づいていた。もうじき神殿の街に入って宣伝が行える。許可の難しさもあり、『風見鶏』はここには滅多に来ないそうで、久しぶりだと団員たちは張り切っていた。



 団長の横でそれを見ながら、麻耶は改めて感謝の言葉を述べる。

「返す返すも、ここまで本当にありがとうございました。こうして無事に来れたのは、皆さんのおかげです。コーラカルもシリブローまでお世話になって……」

「良いって良いって。こっちも楽しかったしな。それになンども言うがね、守護騎士様だの聖女様だのを拝めるなんて機会、そうそうないンだ。それが実際こうしてマイヤー殿に会ったってぇ話になりゃあ、孫にだって自慢できるさァ」

 ははは、と麻耶は照れて笑う。

「そんな御大層なもんじゃないのは、団長さんも知ってるだろうに。……にしても、大きな街ですね」

「改めて見ると、そうだァなあ」



 二人は街道の先に構えられた立派な壁門を見た。

 大きな門は開け広げられているが、そこを狭しと行列が通っている。

 馬車も人も色とりどりで、壁門前の数十メートルには街道の両側に露天商まで並んでいた。

 まさにメッカという名に相応しい、雑多な人が溢れる賑やかな街だ。




「こんなデッカイとこでの巡業が成功したら、風見鶏ウチも箔がつくってもんだ。もとから悪い噂のある一座じゃねぇが、評判は上がるだろうなあ」

「なるほど」

 麻耶は遠くの人ごみを眺めながら、相槌を打つ。

 確かに、これだけ様々な所から人が集まっている一大メッカだ。もしここで名を上げることができたら、今後の一座の営業も上手くいきそうである。



「今日の昼過ぎに、宣伝パレードをしようと思うんだが……そうだ、マイヤー殿。あんたも一丁、ここでウチと一緒に箔をつけるってのはどうだい」

「というと?」

「一芝居、打つのさァ」

「一芝居……、」

「ああ。興味あるかい」

 商売人の顔つきになった団長の目がキラリと光る。

 気をひかれて身を乗り出した麻耶に、声を潜めた団長が耳打ちをした。



「……なるほど。それは面白そうだ」



「だろう?マイヤー殿にも箔がつき、風見鶏ウチの一座にとっても、良い宣伝になる。持ちつ持たれつ、ってぇんだ、なかなか良いだろう?」

 商売人なら両得狙ってナンボってなもんだからなァ、と笑顔で言い切る団長に、麻耶は呆れながらも感心した。

 なるほど、さすがはこれだけ大きな一座を率いる男。

 たんに人が良いばかりじゃないってことだ。

 そして麻耶は、そんな男が嫌いじゃない。


「その話、のった!」


 

「んじゃァいっちょう、派手にぶちかましてやりましょうぜ」




 

 ヒーローらしくドカーン、とね。


◇◇◇◇◇◇◇



 

「……なんだと。もう一度言ってみろ」


 アレックスは、報告に来た部下の話を信じられない思いで聞き返す。


「ですから!」


 入口から執務室まで、大急ぎで走ってきた男は、ハアハア、と乱れる呼吸を押さえながら繰り返した。 




「聖獣を連れた守護騎士、『英雄マイヤー』が、凱旋したと」






「今、街中が、大変な騒ぎになっています!!」

  








◇◇◇◇◇◇◇


 ひらひら、

 ひらひら。


 白・赤・青・黄色。

 紙吹雪が派手に舞い散り、宙に踊る。


 ドオン、ドオン!

 地響きを鳴らすのは、大銅鑼だ。


 ミニ象に乗った少年少女が一行の先頭を率いて、花と紙を撒く。

 赤い大熊、白いライオン、虹の色した大オウム。

 色とりどりの珍獣が、我が物顔にのしのし通る。

 その両側では、薄物をまとった肌もあらわな男と女が、舞を舞いつつ歩いていった。

 一行に先導された、その中央。

 主人公でございとばかりに練り歩くのは、ひときわ目立つ巨大な銀の一角狼と人ひとり。

 古代戦士の服を模した衣装を着こんだ、素晴らしく体格のいい男――このパレードのヒーローだ。

 


  『銀の聖獣、シリブロー!

   そのぬしこそが

   守護騎士マイヤー!

   我らが聖女、イーシャの騎士様

   英雄マイヤー、ここにあり!』



 声を揃えて高らかに。

 澄んだ歌声はひときわ響いて、現れ出でた妖艶な美女が「英雄マイヤーの歌」を歌う。 

 やがてその歌声と大銅鑼は、街中の声援に呑まれ、


「英雄マイヤー!」

「聖女イーシャの守護騎士さま!!」


 守護騎士への大合唱へとなっていった。


「マイヤー様、ばんざーい!!」

「聖獣を連れた守護騎士、マイヤー!!」

「聖女の降臨、歓迎してます!」

「バンザイ、バンザーイ!!」



 門から入ったときから、そのド派手な一行は目を引いていたが、もはやこのパレードは単なる旅巡業の宣伝の枠を超えていた。

 まるで祝賀祭のメインパレードである。




「……いや派手すぎだろコレ」

 声援に応えて、手を振りながら麻耶はぼやいた。もちろん、その声は声援にかき消されて誰にも聞こえない。

 麻耶は感嘆半分、呆れ半分で思わず苦笑いになる。自分も一枚噛んだとはいえ、まさかここまでとは思わなかった。



 ――みんな、ほんっとノリが良いんだから。


 風見鶏一座の宣伝も兼ねて、いっそパレードを大々的なものにしてしまおうと、団長から皆へ持ちかけたとき、お祭り好きの団員たちは大いに盛り上がった。

 折角だから、とことんド派手にしようと言って、麻耶もシリブローもあちこちいじられ、飾りに飾られた。

 それでも止まらずノリにノッた団員が即興で英雄の歌を作り、歌姫アンジーは大笑いしながらそれを歌ってみせた。

 もともと宣伝パレードで慣れているとはいえ、あっという間に衣装も踊りも整えられて、凱旋パレードが作り上げられたのだ。




「しかし英雄て……」

「なァに『幻の聖獣』を連れてきたってだけで十分さァ。それにここまでやりゃあ、マイヤー殿もでっかい箔がつくだろ」

「つきすぎだ」

「ははははは!」


 練り歩きながら、団長と麻耶は言葉を交わす。

 宣伝は大成功だと、いたずらっ子のように笑った男に、麻耶もついにはつられて笑ってしまった。


 ――まあいっか、こんな日があったって。こうなりゃ、とことん……、



「楽しもうぜ、コーラカル」

「はい!」


 見れば周りも笑顔、笑顔、笑顔にあふれている。

 陽光に恵まれたパレードの真ん中で、麻耶の隣では、コーラカルも笑っていた。 









 パレードの後。



「そうだ。……お孫さんには俺が迷子になってたってことは黙っててくださいよ」

「はっはっは!思いつかなかったが、こりゃあ良いネタだったな。よっし、マイヤー殿が生きてるうちは、黙っとくよう伝えるさ。方向音痴の騎士殿じゃァ、カッコがつかねぇもんなあ」








 聖獣を連れた伝説の守護騎士マイヤーが、実は極度の方向音痴だったと、後世、歴史書にまで載ってしまうことを、今はまだ、だれも知らない。 





 


◇◇◇◇◇◇◇



「なによ……これ、」


 可憐なくちびるを震わせ、くやしげに少女が呟く。


「そんなの、聞いてない」




 華奢な手の中、握りしめられた花が無残にぐしゃりと潰れた。

初投稿から今日で丁度2週間!!

読んで下さってありがとうございます。

更新がんばります。

よろしかったら応援して下さい……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ