おちてきたのはサイコロでした
きょうだい真ん中のセイくんは困っていました。
着ていくTシャツを選ぶのも
「うーん、うーん」
なかなか決めらず、遅刻ギリギリになりました。
ママにからあげ何コいるか、きかれても、
「えっと、えっと」
その間に、お兄ちゃんと妹にほとんど食べられてしまいました。
おやつのケーキも、悩んでいるうちにお兄ちゃんと妹が選んで、残ったチョコを食べることになりました。
だから、セイくんは流れ星にお願いすることにしました。
流星群の夜、絶え間なく星がふります。これなら悩んでしまうセイくんのお願いも、まってもらえます。
セイくんはお願いしました。
「悩まなくなりますように」
すると、どうでしょう。
たくさんふる星のひとつが、キラキラとセイくんのところにふってきたではありませんか。
思わず両手を広げてそのキラキラを受け止めます。
両手を開いてみると星だと思ったそれは、サイコロでした。
「これからはコレで決めればいいんだ!」
サイコロを見たセイくんの表情はキラキラとかがやきました。
次の日、
起きたらまずは今日着るTシャツを決めなければいけません。
けど、セイくんにはサイコロがあります。コロコロ、コロンとサイコロをふりました。
2がでました。
「ひきだしから2番目のにしよう!」
遅刻しなかったので、先生にほめられました。
またママにからあげ何コいるか、きかれました。
けど、セイくんにはサイコロがあります。コロコロ、コロンとサイコロをふりました。
6がでました。
「6コ!」
元気よくこたえると、からあげが6コ、セイくんのお皿にのせられました。
ほかほかのからあげはおいしいです。
けど、あれれ? もぐもぐと食べているうちに、お腹がぱんぱんになって苦しくなってしまいました。
おやつの時間、どのケーキがいいか、ママにきかれました。
またサイコロをふります。コロコロ、コロン。
1がでました。
サイコロの1は赤です。だから、真っ赤な苺のケーキを選ばなければいけません。
「ぼくは」
妹は苺が大好きです。
「どうしたの?」
「……ぼく、チョコケーキがいい!」
「いいの?」
「うん、パリパリのがのってるの好き」
セイくん、ほんとはチョコが大好きだったのです。
お兄ちゃんはチーズ、妹は苺、セイくんはチョコ。いつもと同じ、みんなが好きなケーキです。
にこにことセイくんがケーキを食べてうちに、キラキラとサイコロが消えていきました。
けど、だいじょうぶ。
セイくんには、もうサイコロはいらないのですから。