街へ
神々の時代の産物
壁も巨大な門も、その門の脇を守護するかのように立つ天使を模した強大な石造。
大きな損傷が見られない、その神秘的な建物に見入ってしまう。
「どうする?調べてみる?」
「だな、地上への道があればいいんだが」
「建造物ノ先ニ通路ヲ確認、上リ階段デス」
アリアと目が合い、建造物へ向き直る。
「よし、行こう」
「そうね、それしかないわね」
二人と一匹は強大な門を抜け神殿内部へと進む。
「よく考えれば、私、結局ピンチのままね」
「悪い、俺が慎重に動かなったから」
共に神殿内を歩いていいるとアリアがそんなことを言ってきた。
「違う違う、責めてないわ、あそこで湖で死んでも、隷属しても、きっと今より地獄だから」
「そうか」
アリアは歩きながら両手を上げ伸びる。
「んー、・・・それにさ、これはこれで・・」
「ん?」
もう、落下地点から4,5キロは歩いている。
「なんでもない」
「前方ニ未知ノエネルギーヲ確認」
廊下を抜けると巨大な大理石でできた空間
その中央に手を広げた天使の石造、その前には小さな祭壇があり、何か置いてある。
「すごい」
「ああ、これはすごいな」
「ワフワフ」
俺は無神教者だが、ここ空気がまるで違う世界のように澄んでいる事はわかる。
いや、子供の頃あったか、真っ赤い鳥居の神社、お稲荷さんだっけか・・・
あそこの神秘的空間ににている。
「何かしらあれ」
アリアが祭壇の上にあるものを指さし歩いていく。
なにか光る物があるが遠くで良く分からない。
「汝に・・戦いの試練を与える」
「「「え?」」」
祭壇に近づいて歩く俺たちに、この空間に響く音声
自分たちが歩いてきた足元が開き、何かがせり上がってくる・・・
「ゴーレムね、しかもゴーレムの騎士」
現れたのは中世の鎧を身にまとった騎士が三体。
鎧で顔が見えないが恐らく・・・
「生命反応ナシ」
「ちょ、俺たちは地上に帰りたいだけなんだけど・・・」
そんな抗議を無視してゴーレムが動き出す。
槌を持った騎士、剣と盾を持った騎士、ナックルを付けた騎士
槌がアリアに、剣が俺に、そしてワンコにナックルの騎士が突進してきた。
「散開」
俺の一声で一斉に飛ぶ。
先程まで立っていた場にそれぞれ武器が降ろされる。
アリアは槍を顕現させた。
「投擲陣と私に挑むのは・・あなたね」
ひらりと躱したアリアの顔つきが変わる。
直剣の刀身を持つ彼女の青い髪と同じ青い槍。
投擲陣も決して軽いものではなかったが、アリアはまるで自分が風であるが如く、
ひらりひらりとゴーレムの槌を躱していく。
「生き物じゃないなら遠慮しなわよ」
ゴーレムごと薙ぎ払い、アリアは距離を取る。
その槍にあたりゴーレムが吹き飛ばされる。
「すごい力だ」
俺は斬撃を避けながら、アリアの力に圧倒される。
このゴーレムも決して軽い訳ではないのがだ、簡単に何度も吹き飛ばす。
「マリードは?」
マリードは殴りかかって来た騎士のゴーレムから、一歩引きゴーレムを睨み、遠吠えをする。
マリードの後ろに現れたのは大きな狼に頭
「え、なにそれ!」
アリアも他のゴーレムも動きを止める。
後ろに現れた巨大な狼の顔とマリードの動きが連動している。
マリードは何もない空間を噛み砕く、そして巨大な狼の牙はナックルのゴーレムを噛み砕く。
金属の潰れる不快な音と共にゴーレムだった残骸が転がる。
「つえー、マリード圧勝」
頭に名前が浮かぶ、ウルフファングと言う魔法らしい。
召喚主の俺には情報が共有されるらしい。
マリード、魔法使えたのね・・・俺は使えないから複雑な気分だ。
もうあれは、ワンコ魔法と呼ぼう。
ワンコ魔法、ウルフファング
「負けてられないわね」
組み合ってワンコ魔法を見ていたアリアと槌のゴーレムだったが、彼女が口を開け叫ぶと、ゴーレムは後方へ吹き飛ばさる。
「チェックメイト」
立ち上がるゴーレム目掛けて、投擲陣が飛ぶ。
大理石の上に直線の黒い跡が残り、ゴーレムは跡形もなく消えている。
「アリアさん・・・あれ良く止められたな・・ファランクス」
「私モ同意見デス」
ファランクスも同意してくれた。
絶対もう戦いたくないな。
問題は俺だ、再び動き出したゴーレムから逃げの一手。
先程、殴り蹴りもしているが体が小さくなり思ったほど威力がない。
「注意」
ファランクスがシールドを張って防いでくれた。
今俺に攻撃手段はない。
丸い盾と綺麗な丸い石がハマったロングソード
他の二体と違って格の違う武器だ。
ファランクスと避け続ける。
「まずいな」
俺がつぶやくと、横から周囲のゴーレムの残骸や石床を巻き込み、すごい勢いで衝撃波が飛んでくる。
以前受けたアリアの叫び、「歌」と言う魔法らしい。
身構えるが直撃した俺とゴーレム
ゴーレムは横へ吹き飛ぶが俺にはなんのダメージもない。
飛来物も俺には全く当たらなかった。
そして衝撃波は、俺には心地よい、凝縮され歌が一瞬で全て聞こえた。
ちゃんと歌詞のある歌だった、あの一瞬で歌の内容を理解できた。
確かに叫び声でなく、歌声だ。
原理が分からない、確かに魔法だ。
吹き飛ばされたゴーレムに間髪入れず巨大な狼の頭が、牙が迫り粉々になる。
「アオーン」
戦いは終わった。
俺は何もしていない。
「悪い助けてもらって」
「「ん?」」
アリアとマリードはお互いに目を合わせ首を傾げる。
「なんで?仲間でしょ?助けて当たり前でしょ?」
向き直るアリアは答える。
「ありがとう」
「でもこのまま戦力ならないと、問題はあるわね」
金属の落ちる音が響く。
マリードが俺の足元に先ほどのゴーレムの剣を持ってきた。
「あら、気が利くわね」
その剣を手に取るアリア
「これ普通のロングソードでは無いわね」
アリアから受け取り剣を見る。
真ん中にキラキラする丸い宝石がある事しか分からない。
「おそらく耐久関係のエンチャントが掛かっているわね、それだけではないかな」
おお、なんか子供の頃のゲームみたいだな。
「でも、そうね、価値は・・・分からないわね」
「無いよりましだろう」
だが恐らく、まともに使えない。
俺の今の身体に対して大きすぎる。
そう思って剣を見るとみるみる大きさが小さくなった。
「へー便利ね、その剣ならゴースト系も斬れるわね」
「ゴースト、そんなのもいるのか?」
マリードが丸い盾も持ってき
「これは防御魔法があるはね、種類は分からないわね」
「試練に打ち勝った者に祝福を」
俺の話しを遮る形でまた声が響く。
祭壇が光だし、アリアが祭壇へ向かう。
なんだこれは
祭壇に行くとそこにあったのは、鍵
「鍵ね」
アリアは金色の小さな鍵を手に取る。
どこにでもある普通のカギ
「鍵だな、少し光っているのか」
アリアが鍵を手渡してくれる。
「「え」」
鍵を受け取ると鍵が俺の手に溶けていく。
金属が融解するように俺の中へと入りこんでいった。
「うわー、エンガチョ、近寄らないで」
「ええ! 酷くない?」
アリアとマリードは俺から一歩離れた。
って、エンガチョって
「冗談、冗談」
「いうわりには、素早く離れたよな」
「気のせいよ、身体は大丈夫?」
「特に問題はないな」
手の平を確認するが違和感はない。
「なら、さっきまで無かったあの扉調べましょうか」
アリアの示す先に扉がある。
確かに入って来た時は無かった
戦闘後に出現したのだろうか?
「この扉開かないわね」
そこにはやはり白い扉があるが開きそうにない。
アリアは力いっぱい、押しているがビクともしない。
取っ手が無いので引くこともできない。
「仕方ないわね、他探しましょうか?」
「二人で押してみよう」
俺が扉に触れた途端、何の抵抗もなく扉が開いた。
「えー、私の苦労は?」
内部はまたなにもない空間
中に入ると、マリ-ドが床の匂いを嗅ぎ、俺を呼ぶ。
アリアとマリードの所まで行くと地面が光だした。
「えっと、何処ここ?」
森、石碑が一つ、あとは街道か?
「何処かしらね」
アリアとマリードもいる良かった今回は一人じゃないな。
街道は森に続くものと草原に続くもの
草原の方へと歩いていく、森は海竜湖の森だからだ。
アリアが森を見ていうから間違いないだろう。
しばらく歩くと、城壁が見える。
「街ね・・・ヤヌス王国、メルの街ね」
「ヤヌス王国?」
「いや、国よ」
アリアはリングを出し腕に着ける。
「それは?」
「んー、ギルド会員の証ね」
あれは、良くある冒険者ギルドてきなやつか?
「ワンちゃんは中に、ファランクスは浮いちゃだめよ」
マリードは素直に俺の中に戻る。
「何故デショウカ?」
「魔術師と間違えられて、面倒はごめんでしょ。」
「了解シマシタ」
俺はファランクスを背負うしかないが、引きずってしまう。
「小型化シマス」
金属音を立て一回り小さくなる、が、それでも120cmぐらいはある。
今のおれではギリギリ背負えるぐらいだ。
しかもさっきの盾も背負っているから背中が重い・
「よっこらせっと」
「人間の街なら気を付けないとね」
石でできた中世の城壁
巨大な門では兵士による検問だ。
「止まれ」
二人の兵士に止められた。
「何者だ?」
「ギルド会員よ」
兵士がアリアの腕輪を見る。
「アリアさん、その男の子は?他所から来たのか?手ぶらに見えるが、見たことない格好だな」
兵士は俺を物珍しげに見る。
「海竜湖の方からよ、荷物は魔獣に奪われたみたいね」
兵士が俺からアリアに向き直る。
「それは災難だったな、アリアさんなら大丈夫だと思うが、今このメルは治安が良くないからな気をつけろよ」
「ありがとう」
検問を抜けると中世の街並みが広がる。
「まさかメルまで帰れるとはね」
「メル?」
アリアがことらを向き答えてくれる。
「さっきも言ったけどヤヌス王国の街の一つね、海竜湖からだと徒歩40日ぐらいかな」
遠いいのかな?車ならどのぐらいだ?
「海竜湖から直線で10日で私の村ねそこから10日でメルの街ね」
「森が見えて直ぐメルについたから位置的に全然違うだろうけど森の端まで転移していたみたいね。」
「海竜湖のある森はかなり大きいからね」
なるほど、とりあえず、あとで地図買おう。
「まずは、ギルド支部ね」
アリアは周囲をきょろきょろする
「用があるのか?」
「これがいるでしょう?、あなた無一文でしょ?」
お金か、ごもっともです。
「私を安全な村まで連れ帰ってもらわないといけないからね」
「了解」
アリアに連れられ支部を目指す。
俺、傍から見れば美人なお姉さんに引率される子供だな。
アリアは先程から目立っている。
服に血がついているからっと、いうこともあるだろうが、どちらかと言うと、男の目線が多い。
「ここで待ってて、なにかあればすぐに艦長の中に戻るから」
「分かったよ」
アリアは手を振る。
「お金を受け取るだけだから」
アリアは中に入っていった。
・・・
・・・・・
・・・・・・・ん?
ギルドの前でボロボロな服を着た男の子が支部に入る人に話しかけている。
年は7,8歳ぐらいだろうか、アリアは他の人の影で見えなかったのだろうか?
手にしている袋を見せては、なにか頼んでいる。
「お願いです、僕のお父さんを助けてください。」
しかし、立ち止まる人は少なく、立ち止まっても袋の中を見て立ち去ってしまう。
「お願いです。お願いします。」
空しく子供の声だけが響く。
「どうしたんだ?オジサンに話してみろ」
男の子が直ぐに振り返るが、すぐに落胆の色が顔からにじみでる。
「オジサンって、お兄ちゃんそんな年じゃないよね?」
しまった、俺の体は12歳ぐらいだった。
「ま、まぁ、話しぐらいは聞くよ」
「・・・・突然村に魔人が現れて・・みんなを襲って、僕だけ逃げて来たんだ」
男の子は手に持つ革袋を強く握りしめる。
「お願い誰でもいいから、魔人をやっつけてよ」
革袋には、コインが見えた、きっと硬貨なのだろう。
「村のみんなが人質に取られているだ」
他の者が依頼を受けない理由がこの硬貨であれば、恐らく依頼と釣り合わない金額なのだろう。
「艦長お待たせ、あまり歩き回らないでよ?」
アリアが歩いてくる。
「でその男の子はだれ?」
アリアがしゃがみ目線を合わせる。
「詳しく話してみてくれる?」