私の名前はアリア
一面に広がる草原。
周囲を森に囲まれ、目の前には大きな湖
自分の立っている場所は湖畔
空は青く無数の雲。
「あれ・・何処ここ?」
「ファランクス!」
呼ぶとすぐに・・機械の盾は眼前に移動してくる・・・
「あれ?・・ファランクスお前なんか、でかくないか?」
いつも装備されているファランクス
おかしい三番コンテナの備品、シルクに言われいつも身に着けている。
「俺の無機物の相棒が大きくなってる!?」
作業するとに寄りかかったり、寝そべって昼寝はできるし、そのまま私を運んでくれるし、いざとなればシルクに怒られる時、私を光学迷彩で隠してくれる、超、超高性能な相棒が!
なぜか、でかい・・・
「成長期か・・・んな訳ないやろー」
しまった一人で乗り突っ込みを入れてしまった。
当然、反応のないファランクス・・・
「ん?」
機械の盾に映る俺の顔が若い
「んん??」
掌も、あのごつごつした40のおっさんの手ではない。
「艦長ガ一回リ小サク、ナッテイルト確認」
ファランクスの言う通り、どうやら俺が小さくなったみたいだ、ズボンがずれ落ちる、年齢的に20、19か
「夢・・いや・リアルだ、こんな鮮明な夢はない」
袖を捲り、ズボン上げベルトを締め直す。
「ファランクス、現在位置及びシルクとコンタクト」
「基準点喪失ニヨリ現在位置不明、シルク及ビseedヘノ交信不可能」
「まじか、」
とりあえずここは、現状の確認だ
どこかの惑星の上だ、大気もある、ファランクスのシールドが起動していないところから、この大気は人体に有害ではない。
「艦長ノ肉体データ更新、・・・再登録」
身長は、それほど変わっていないだろうが、若いころの非力な細い腕、胸筋も腹筋もなくなっている。
体が一回り小さくなると言う現象でもエラーを起こさないだけファランクスは優秀だ。
唖然と湖へ歩み寄る。
周囲は森に囲まれ、俺のすぐ目の前には湖があり、向こうにも森が見える。
足元には芝が広がり湖に接している。
「警戒モード・・・上空ニ人型生命体確認」
爆音と共に木々の合間から何かが弾かれ空に舞う。
それは翼を広げ空中を滑るようにこちらへくる。
近づくにつれ弾き出されたモノが見えてくる。
白い翼をもつ・・・あれは人間か・・?
白い服に青いラインの入った服は胸元からスカートまで所々、赤く染まっている。
白い翼も長くストレートな青髪も所々、赤い。
女性・・いや少し幼さを感じる・・・
追われているのか後ろを振り返りながら飛んでいる。
先ほどまで後方を振り返っていた少女が前を向き俺と目が合った。
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「ここにも魔術師?!」
いい加減にして、もう体力が残っていないのよ。
自身の血と返り血で赤く染まり、右足は太腿が裂け治療もできてない。
体力も、もうほとんどない。
「ここであなた達に辱めを受けるのであれば」
若い男だ、黒い盾が浮いている、間違いなく魔術師。
魔術師の頭上に・・・最後の力で・・・あの魔術師と刺し違えぐらいならできる。
この歌で恐らく私は力尽きる、最後に湖に落ちれば辱めは受けない、利用もされない。
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少女の顔が険しく、ちらを睨む。
俺の頭上へ来ると口を開き、叫び声が落ちてくる。
ファランクスはシールドを展開している。
「え、ちょっと、なんだこれ」
叫び、というより衝撃波か?
立っている大地が割れ、湖の水が舞い上がる。
「今あの子何したんだ、てか、どんな破壊力だよ」
シールドが解けると俺の立っていた所を残し一面むき出しになった土。
少女に目をやると意識がないのか、そのまま湖に落ち水しぶきを上げている。
「ファランクス!」
同時に湖に飛び込み少女が落ちていった所まで潜る。
「いた!」
水が綺麗な為、良く見える。
少女の翼だろうか白い羽が散り散りになり、消えていく、その中心に少女はいる。
やはり失神している、この世界の生物が水中でどうなのかは分からないが、考えるより先に動いてしまった。
ファランクスが翼の消えた少女まで飛び、少女を支えこちらえ来る。
俺の体と少女を支え水面に浮上し、大地へ戻ってくることができた。
「おい大丈夫か?」
少女を地面にあおむけに寝かしたものの意識がない。
幼さはが残る17、18歳ぐらいか。
スカートから覗く右足に大きな裂傷、出血もひどい。
「ファランクス、治療可能か?」
「解析・・肉体情報確認・治療可能デス」
「治療ヲ開始シマスカ?」
治療を頼むとファランクスは医療システムを展開し、彼女を淡い光が包み、傷が消え始める。
しかし突然、治療を中断しファランクスが俺の横に戻る。
「どうした?」
傷口はまだ治りきっていない。
「横にいるということは警戒態勢は維持されているのか」
問題がないときは背中にいるのだが。
顔を覗き込み確認すると少女の目が、ぱっと開く。
そのまま体を翻し俺と距離を取る。
こちらを警戒しつつ周囲を確認している
「おい、大丈夫か?」
俺が一歩でると少女の手に青い槍が召喚される、綺麗な剣の様な刀身
彼女はそれを一度見てなにか呟いて、叫びながら俺に向かって投げた。
認識できたのはそこまでだ。
高い音が響く。
ファランクスのシールドが展開し、飛来した槍と激突している。
いったい、どんな速さで飛んだのだろうか、槍の飛んだ地面は捲れ、ファランクスのシールドに当たっても尚、その勢いが死なない。
槍は俺を串刺しにする為に飛来し、ファランクスのシールドと、せめぎ合っている。
「約200秒後にシールド消滅シマス、退避シテクダサイ」
「え?」
嘘だろseedの主砲、陽電子砲も防げるシールドだぞ・・・
考えているうちに矛先がシールドを突破し始める。
どうする・・・
状況は悪化していく。
少女の背中には再び白い翼が現れ、そこから何十枚もの、白い羽が舞い、こちらに迫ってくる。
「やばい、多分あの羽も、・・・やばい気がする。」
白い羽がいくつも飛来しシールドに当たると爆発が起きる。
地面が小さく抉れる。
この破壊力、手榴弾だなこれは。
この爆発の中、シールドの外へ飛び出すこと自殺行為だ。
しかしこのままいれば、ファランクスを突破した槍に突かれる。
恐らくあの勢いで当たれば俺の身体は木っ端みじんだ。
「新タナ脅威ヲ確認・・修正、アト60秒後ニ、シールド消失シマス」
ファランクスも、もう限界が近い。
羽の小規模な爆発より、あの槍にエネルギーの大半を奪われている。
槍の刀身の半分がシールドを突破しファランクス本体に迫る。
ファランクス本体の素材もseedの装甲と同じ金属だがシールドよりは強度は劣る。
落ちつけどうする・・・どうする、どうする、なにか打開策は。
突然、爆炎の外の空間が光だし、マリードが召喚された。
深紅の瞳、深紅の毛皮を持つ狼
体格は大型犬より少し大きいぐらいか。
「だめだ、行くな!」
本契約は召喚獣の意思でも召喚できる。
マリードはその牙をむき出しにして少女へ走る。
少女がマリードを認識し、少女の羽がマリードへ迫る。
だがマリードはその全てを、ことごとく躱し、距離を縮め少女に体当たりをいれる。
マリードの頭が少女の腹部に入る。
少女はうめき声と共に後方へ飛ばされ倒れる。
ピクリとも動かないところを見ると失神しているのだろうか。
この攻防はマリードに軍配があがったかに見えたが、少女を飛ばし動きの止まったマリードに白い羽が直撃する。
「キャン」
マリードの鳴き声と共に俺の方へ吹き飛ばされてくる。
全身焼けたマリードの体。
同時に少女が失神したためか白い羽が消えた。
俺はファランクスのシールドから抜けマリードへ走り寄る。
懐からシルクが作った回復薬を取り出しマリードにかける。
シルクから非常用に三本渡されている回復薬、性能は市販されている回復薬とは比べ物にならない。
「シュー」と音を立てて水蒸気を上げマリードの熱傷が治り深紅の毛皮が蘇る。
パリーンというガラスが割れるような音。
振り返ると、とうとうシールドは破壊され、槍がファランクス本体に刺さる。
貫通してないものの、ファランクスは刺さった槍の勢いに負け、そのまま湖に水しぶきと共に沈んでいく。
「おいおい、まじか」
最新の移民船seedの主砲、陽電子砲をも防げるシールドを突破したのか。
なんていう破壊力だ、ファランクスはコアが破壊されていなければ戻ってくるだろう。
マリードの熱傷は酷かったが治りきた。
「もう大丈夫かな」
マリードの意識は戻らないが、とりあえずは大丈夫だろう。
俺は立ち上がり、意識のないもう一人の方へ歩み寄る。
俺の後方の湖からファランクスが水しぶきを上げ、槍が刺さったまま俺の元に来る。
「大丈夫か?」
「エネルギー枯渇ニヨリ充電開始、一時的ニ支援不可能」
そう告げると、ファランクスはそのまま地面にささり機能を停止した。
「了解・・・これ抜いておくぞ」
ファランクスに刺さったままの槍を掴み引き抜こうと試みる。
なかなか抜けない、筋力が減っているからだろう。
やっとの思いで抜いた槍は綺麗なキィーンという音をたてる。
美しく神秘的だ。
「俺の身長より短いな」
刀身は青い両刃の剣、ロングソードをそのまま槍にしたようなものだ。
停止中のファランクスと気絶中のマリードをその場に残し再び少女へ歩み寄る。
「おい大丈夫か?」
少女も先ほど治療中だったこともあり、再び脚が割れ再出血している。
槍を少女のそばに置くと光となり消えていく。
「魔法の道具か何かかな・・」
回復薬を取り出し、傷口から全身へとかけてやる。
シューと音を立てて、傷が綺麗に消えていく。
少女はゆっくりと目を開き、状況を認識して飛び上がるが、そのまま頭を押さえ座り込んでしまった。
「大丈夫か?無理するな」
急に動いたのだ立ち眩みだろう。
血も大分失っているだろう。
「あなたに私の心までは渡さない」
片手でまだ頭を押さえているが、めちゃくちゃ睨まれた。
「は?」
ん?今少女の言葉が分かった。
「俺の言葉わかるのか?」
「あなたは私に二度勝った、私を好きにする権利がある。」
悔しそうに下を向きながら吐き捨てるように言う。
「いやいや突然襲ってきたから防いだだけだが?」
「でも、身体は屈しても心までは好きにできると思うな。」
人の話し聞けよ。
「いやだから・・君が襲ってきたから防衛しただけだぞ?」
「いつか寝首を掻いてやる、覚悟していろ。」
ダメだ言葉が通じる通じない以前の問題だ。
「いやだからな、俺は君が襲ってきたから」
「騙されないぞ、人間なんて信用できるか、このハゲ」
ハゲだと、確かに40過ぎてシルクにも指摘されているが。
条件反射で自分の頭を触ってしまったじゃないか!
まだ、大丈夫だ・・・ってか若返ってるからフサフサだ。
いやいや、元々40代でもフサフサだよ?
てか煽りが幼稚だなオイ!
「ハゲのいいなにりになんて、屈辱、なんでこんなハゲに」
こいつハゲハゲ・・・
「ハゲてないからな」
「うるさいハゲ」
「おま、お前、いい加減にしろよ」
そんな綺麗な顔の女の子にハゲハゲ連呼されたら泣きたくなってきたじゃないか!
あれ俺泣かされたの?
「ハゲ・・・お、お前は私を隷属させたいのでしょう」
あれ、少女がなんか申し訳なさそうに目を逸らした、いい奴じゃね?
てか、俺そんなに悲しそうな顔してた?
「聞きたい事があるんだけど」
「お前は勝ったんだから命令すればいいでしょ?」
目線を逸らし、下を向いたままだが今度は聞く気があるらしい。
「なら、お願いがあるんだけど・・」
少女は手を握りしめ唇を噛む。
「どんな卑劣な事でも、心だけは好きはさせない・」
こちらへ向き直り睨んでくる。
「ここどこ?」
「はぁ?」
少女は顔は唖然とこちらを見ている。
修正します。