今カノにフラれた僕はその妹に告白されました
「ゴメン、別れましょう」
「……え?」
僕は付き合っていた彼女(もう元カノ)と別れた。理由はどうやら成績が少し下がったそうだ。そして僕は数日間打ちひしがれた。
「はぁ……」
僕は小野原孝次、高校2年生。念願だった幼馴染みの甲斐風香に告白して付き合ったが2ヶ月でフラれた。彼女は校内トップの成績で、容姿端麗と才色兼備な彼女は学校で所謂高嶺の花だった。
背中まで伸びる妖艶じみた黒髪は男子だけでなく女子までも魅了するほどだった。
学校での関係性やそこでの生活のグループの違いで、告白すれば彼女との関係が変わる恐れがあったが、そのリスクを背負って意を決し告白して付き合えたにも関わらず……である。
「何が駄目だったのか……」
僕は色々考えたがあまり思い当たる節がなく何が駄目だったのか分からなかった。はぁ、とため息をつき帰っていると、ぽんぽんと背中を叩かれた。
「ため息をしていると幸せが逃げてしまいますよ」
「ん?」
振り向くと、にこやかに笑っている子がいた。
「優海ちゃん」
彼女は甲斐優海。高校1年で同じ高校の後輩に当たる。苗字で分かると思うが風香ちゃんの妹だ。彼女は姉に負けず劣らずの美貌の持ち主であるが、残念ながら成績は芳しくない。目はぱっちりして笑顔が素敵な彼女は姉とは違うが、背中まで伸びた綺麗な黒髪はどこか似ている。そんな彼女は僕に何の用なのか?
「どうかした? 優海ちゃん?」
「えー? 用がないとお話ししちゃあ駄目なんですかーっ?」
「いや、そう言う訳じゃあないけど……」
「では途中まで同じなんだから一緒に帰りましょうよ」
「え? あぁ……」
甲斐家とは中学から同じなので、同じ町内なのだ。まだ傷心気味だからあまり話したくはないんだが……。
「ところで、先ぱーい」
「ん? 何だ?」
「姉と別れたらしいですね」
胸にグサッとくる。その話は勘弁してほしいが彼女は容赦がない。
「好きだった姉にやっと告白したのにあっさりフラれてしまいましたね」
「う……」
「まぁ、校内トップで人気の姉と先輩とでは周りから見て恋人としてあまり釣り合いが取れてない感じでした」
「……」
「そして姉は貴方と付き合ってから成績不振になり、貴方をフッた」
彼女の一つ一つの言葉が心に刺さる。
「本当にしょうがない人です」
「……あぁ、本当に僕は駄目な奴だ」
「いえ、違います」
「え?」
「しょうがないのは姉です」
「え?」
「成績を落としたのは自分の責任なのに、先輩と付き合ったせいにした」
「……」
「そしていままであんなに仲良くしていたのに、姉さんのおかげで先輩達はお互いに気まずくなりました」
「……」
「全く、姉は勿体ないことをしましたね」
「え、それは……」
「だってそうでしょう? ここまで大事にする男子は今時いないでしょう」
「いや、そんなことは……」
「いいえ、中々いませんよっ」
「そ、そうかな?」
「こんな良い男を独り身にするのは勿体ないです」
「……?」
「だから先輩、私と付き合いませんか?」
「へ?」
僕はキョトンとした。一体この子は何を言っているんだ?
「そんな顔しないで下さいよ。傷つきます」
「え? あぁゴメンゴメンっ」
「では、付き合いましょう。拒否権はなしです」
「え? どうして?」
「こんな可愛い女の子をフるなんて考えられないからです」
自分の口でいうか? まぁ、否定はしないが。
「据え膳喰わぬは男の恥です」
「……」
「じゃあ、答えないならokということで……」
「あっ、ちょっと待てっ。条件がある」
「何ですか?」
「僕達付き合うのは周りには内緒な」
「どうしてですか?」
「姉にフラれたらさっさと妹と付き合うなんて周りにバレたら嫌な目で見られそうだから」
「先輩って、学校でそんなに有名なんですか?」
「僕が有名というよりか風香ちゃんが有名だから……」
彼女は暫く考えている様な感じになり、
「分かりました。そうします」
「ありがとう」
「理解のある友達には言っていいですか?」
「え? あぁ、別に構わないが」
「ありがとうございます♪」
ということで、僕は新たに彼女が出来ました。それからというもの、偶に優海ちゃんと一緒に学校から帰るようになった。昔から風香ちゃんの家に行っては引っ込み思案の彼女だったが、最近はいつにもなく明るく積極的だ。
「先輩、ちょっとあそこに寄りませんか?」
「クレープ屋? 良いよーっ」
「はい、先輩チョコバナナ」
「ありがとう」
そして二人でベンチで食べていると、
「大分夕方は過ごしやすくなったなー」
「そうですね~」
彼女はあ、そうだと言って、
「先輩、写真撮りましょ」
「え? 良いよっ。恥ずかしい」
「そう、照れないで。はい、ポーズ」
パシャッと彼女は僕達二人の写真をスマホで撮った。
それから一週間経ったある日の昼休み、クラスにて。
「こんにちは、小野原先輩……ですか?」
「え、あ、はい」
「私~、一年の小石川ルミって言いますっ」
「あ……はぁ」
始めて会う子だ。目はぱっちりして茶髪がかったショートヘアーで可愛らしいかった。で、そんな彼女が僕に一体何の用だろうか?
「私~、優海ちゃんと同じクラスでーっ。小野原先輩の話を聞いてーっ、先輩に憧れるようになったんですっ」
「あ、ありがとう」
「だからー、もしよかったら私と遊園地に行きませんか?」
「え?」
急にそんなこと言われても……。
「それは所謂……デート?」
「それは先輩の気持ち次第です♪」
いやいや、今は彼女いるしっ。僕は不意に風香ちゃんの方を見る。彼女とは同じクラスだ。彼女も僕の方を見る。
どう断ろうか?
「そうしないと……」
小石川さんは懐からスマホを取り出して小声で言う。
「この写真を校内に拡散しますよ?」
僕はびくっとした。それはクレープの時の優海ちゃんと撮った写真だった。
「ど、どうしてそれを……?」
「これバレると困るんじゃないですか~?」
僕の頭は混乱した。一体どうすれば……。しかし色々考えを巡らしたが、僕は何も思い浮かばなかった。
「分かった。良い……」
「待ちなさいっ!」
叫んだ方を見ると、風香ちゃんがこっちを見て立っており、トストスと近づいてきた。
「彼は私の大切な相手よっ。今の話聞き逃せないわねっ」
「あれ、先輩達って確か別れたんじゃなかったんですか?」
「それとこれとは別の話よっ」
そして二人は喧々囂々と言い合った。挙げ句の果てに二人は僕をがっと引っ張る。
「貴女みたいな女子に孝君を渡す訳ないじゃないっ!」
「貴女には関係ないでしょ!?」
服が破れるーっ。そしてそうこうしていると予鈴が鳴った。小石川さんはちっと言って、
「先輩! また来ますからっ!」
そして彼女はクラスから出て行った。何なんだー……一体? いや、それよりも風香ちゃんのあの態度は一体……。
そして放課後。学校帰りの時、優海ちゃんに昼休みの話をした。
「そんなことが……」
「それより小石川……さん? 何で彼女は僕達の写真を知っていたんだろうか?」
「あ、それは多分……」
彼女はスマホを取りだしある画面を見せてくれた。
「これは、イン○タっ! もしかしてそこに投稿したのかっ!?」
「ごめんなさい。嬉しくって」
「内緒にしといてって言ったじゃないか!」
「ごめんなさいっ。まさか知り合いが私のを見てるなんて。それにやっぱり初めての彼氏だから、自慢したいじゃないですか」
「……」
彼女の哀しげながら少し見え隠れする嬉しそうな顔にそれ以上僕は何も言えなかった。それより、
「風香ちゃんのことなんだけど」
「姉さん……」
「一体どういうこと何だろうか?」
「……」
彼女は考える素振りをしたが、
「分かりません」
と笑顔で答えた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ブックマーク、評価頂けたら励みになります。