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95、平安時代993年 〜説明中に事件勃発

「そなたは、何者だ? 未来より来た未来人だとでも言うつもりか? そなたが持つ不思議な力……そなたも、無の怪人と同様、人間ではないだろう?」


 安倍晴明は、険しい表情をしている。でも、恐れている感じではない。だけど、彼が俺を見る目は、たぶん妖怪と対峙したときの目なんだろうな。


 宿の人や、ヤスさんは、ゴクリと息をのんでいた。


 怖がられてるよね。でも、キチンと説明しなきゃ。信じてもらえるとは思えないけど……。


「安倍晴明様、ヤスさん、そして皆さん、俺は、2,100年から時間を遡って来ました。一応、地上では人間です。その時代では、俺のような力を持つ人はたくさんいます。禁止事項なので、詳しくは話せませんが」


「地上では人間だとは、どういう意味だ? 海の底に住む魚人なのか?」


「いえ、空です。空には、浮き島があります。人間の目には見えません。俺も今は人間なので見えませんが、今、この時代の空にも存在します」


「……空、だと? 鳥人なのか?」


「いえ、この時代では知られていない種族です。2,100年でも、一部の人達にしか知られていません」


 シーンとした。だよね、平安時代だもんね。


「そなたは、時間を越えることができるのか」


「いえ、俺自身には、その能力はありません。樹の霊力によって過去に送り届けられました」


 俺が霊力という言葉を使ったことで、安倍晴明は安心したのかな。表情が少し変わった。


「そなたのその力は何だ? 私の目には色として見える。我々の術はその霊力を使うもの、青く輝く光だ。妖怪なら妖力、これは赤く妖しい光だ。だがそなたの光は若草のような緑だ。そんな光は見たことがない」


「俺には色はわかりませんが、これは魔力です。この世界には、魔力の元となるマナが存在しないから、ご存知ないのは当然です」


「魔力……何ができる?」


「さっきみたいに怪我を治したり……ですかね」


「怨霊を減らしたいと言っていたな? 怨霊を浄化できるのか」


「浄化? たぶんそれはできません」


 なぜか、彼の目つきが鋭くなった。どうして? 嘘じゃないよ? 俺は僧侶じゃないんだから無理だよ。


「そなたは、知らないのか? それとも隠しておるのか?」


「別に嘘はついてませんよ。浄化なんて……あっ、そっか。魔法にはいろいろあるんです。でも、俺はそういう系の魔法は使えません」


「能力の問題か。ふむ……だが、そなたの光は緑だ。赤には弱く、青には強い」


「えっと、おっしゃる意味が……」


「そなたは、霊力を使う我々の脅威になるということだ。だが、妖力を使う妖怪には弱い。我々は妖怪には強い」


 なんだろ? 何が言いたいのかわからないよ。


「えっと……?」




 そのとき外から、一人の男が宿に駆け込んできた。


「安倍晴明様! 大変です。昨夜の報復だと、あちこちから妖怪が集まっています。三条付近の河原が占拠され、乞食達が襲撃されています」


「なんだと? また、怨霊が増えるではないか」


 えっ? 何? 乞食って、川沿いに住んでいた人達のこと? 妖怪に殺されてるの?


 俺は、妖怪って、紅牙さんのイメージがあったから、意外な気がした。人間と友好的じゃないの?


「すぐに行く。チッ、まだ日が暮れていないから、使える式神が限定されてしまう」


 すると、安倍晴明は、俺を見た。


「そなたはどうする? 怨霊が増えるぞ」


「行きます! 川沿いに住んでいる人達が襲われているなら助けないと」


「うん? 乞食だぞ?」


「えっ……貧乏でも、人は人でしょう?」


 俺がそう尋ねたが、彼は怪訝な顔をした。あっ、この時代って、差別意識が強いんだっけ。でも、同じ人間じゃないか。




 彼は、何かの術を唱えて大きな亀を出した。そして、それに乗ると、スーッと浮かび上がった。


「私達は、走りますよ」


 安倍晴明の付き人っぽい女性がそう叫んだ。


「は、はい」


 俺は、彼女のあとをついて走った。ヤスさんと仁助さんも追いかけてきた。


 数分走ると、逃げる人々とすれ違い始めた。


 ドン!


 大きな音がすると共に、青い火が立ち昇るのが見えた。


「もう、始まってる」


 彼女は、そう言うと懐から和紙を出して何かを唱えた。すると、和紙は大きな紙ひこうきのようになった。


「つかまって!」


 彼女がそう言うので、俺は、和紙の一部を掴んだ。ヤスさんと仁助さんも掴んでいる。彼女は、和紙に飛び乗ると、スーッと風にのった。


(ちょ、こわいんだけど)


 俺達が走っていた道からスーッと下へと、降りていった。川が見える。そして、大量のバケモノがいた。


 安倍晴明が、バケモノに取り囲まれている。その次の瞬間、また青い火が立ち昇った。青い火は、バリアなのかな? 彼は自分の周りを青い火で囲み、近寄ろうとする妖怪に、その火をぶつけているみたいだ。



 ヒュン!


 赤い火が飛んできた。


「キャっ!」


 紙ひこうきは、一瞬にして燃え尽きた。俺はとっさに四人にバリアを張った。


『物防バリア!』


 河原にドサリと落下したけど、痛くない。他の三人は、きょとんとしている。


「大丈夫ですか? 一応、バリアを張ったので、物理衝撃は緩和されると思いますけど」


「ばりあ? それが、魔法なの?」


「はい。俺、あっちの襲われてる人達の方に行きます」


「えっ? 乞食は放っておけばいいから」


「貧しくても、人は人でしょう?」



 俺は、安倍晴明とは逆の方へと走った。そして、魔法袋から、刀を取り出した。


 妖怪達は、人々が怖がるのを見て遊んでいるだけみたいだ。でも、飽きたら殺すんだろうな。


「ねぇ、ちょっと、妖怪さん、何してるんですか!」


 俺がそう声をかけると、奴らは一斉に振り返った。


「あぁん? なんだ? てめぇ。陰陽師でもないみたいだな」


「俺は、リント。妖怪さん、その人達に何かされたんですか?」


「はぁ? こんな弱いゴミに、オレ達が何かされるわけねぇだろ」


「じゃあ、理不尽なイジメはやめてください」


「何を寝ぼけてるのだ? 小僧、てめぇからにしようか。今日は、人間を百人殺すんだからよ」


「なぜ、百人殺すのですか」


「昨夜、仲間が一人、陰陽師に殺された。だから、百人の人間を殺さないとなぁ」


 百倍返しする気? 意味わからない。でも、奴らの目は狂気に染まってる。復讐の戦いなのか……。


「そんな意味のないことは、やめてください」


 でも、奴らは俺を一番最初に殺すことにしたみたいだ。仕方ないな。


 俺は、刀を抜き、鞘を魔法袋へ入れた。日本刀って、剣と違って、すぐに折れちゃいそう。俺は、刀に強化魔法をかけた。



「刀を持ってやがる。抵抗する気か? やっちまえ〜」


 オオオオ〜



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