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87、万年樹の島 〜地震の原因、のっぺらぼう?

 俺が、魔物が広がらないように、草原全体に移動結界を張ったことで、出入りしようとした人達が結界を破壊しようとし始めた。


 そうか、草原は小高くなってるから、魔物がいるとはわからないんだ。万年樹に行こうとして、冒険者がイラついている。


 派手なことをする方がいいね。結界を破られないようにしようとすると、魔力を浪費することになる。


 俺は、剣を抜いた。


『バーニング・ショット!』


 近づく魔物に向けて、十数体の火の鳥を放った。これは、威嚇だ。そして、草原で何かが起こっていると、人々に知らせるためでもあるんだ。


 火の鳥は、結界内を飛び回っている。移動結界を破壊しようとする行為が止んだ。すごい騒ぎになってるけど、仕方ないよね。



 魔物の方を見ると、火の鳥に怯えているのもいる。だけど、ほとんどは気にもしていないようだ。


 なぜ、コイツらはカプセルに入って飛んできたのかな。意図的に、飛ばした者がいる?


 魔物の共通点は、羽がないこと。そして、移動スピードが遅いこと。さらに、火の鳥にはほとんど動じないこと。


「キミたち、言葉はわかる?」


 俺は、拡声魔法を使った。


「ここは、人間の島なんだ。意思疎通がとれない魔物は敵とみなされる。人間のナワバリなんだ。ルールを守って共存するなら受け入れる。でも、この島を奪おうとするなら排除する」


 この声は、移動結界の外にも聞こえているはずだ。状況がわかれば、みんな無茶なことはしないよね。


 ほとんどの魔物はダメだな。でも、まだカプセルの中にいる2〜3体が、俺の言葉を聞いて動きを止めた。ここからでは見えないけど、まさか人間じゃないよね?



 魔物達は、万年樹を見上げている。おかしいな。言葉もわからない魔物がなぜ、そんな行動をするのかな。


 ボゥオッ!


 熊のような一体が、炎を吐いた。明らかに万年樹を燃やす気だよね。幼女が張り巡らせている土壁が、炎を防いでいる。土壁にバリアを張っておいてよかった。


 だけど、それを合図にするかのように、他の魔物達が一斉に土壁に体当たりしたり、攻撃を始めた。俺のことは無視してるのか?


「それなら、悪いけど排除するから」


 俺は再び拡声魔法を使った。でも、魔物達は、俺を無視してる。カプセルの中には、まだ何体かが残っているみたいだ。あの中から、指示しているのかもしれないな。


 奴らは、この島の万年樹を狙って送り込まれたのかな。さっきから威嚇して飛び回っている火の鳥を気にしない魔物が多い。火が弱点ではないってことだよね。


 万年樹を燃やそうと、炎を吐く魔物もいる。狙いが万年樹なら、火属性の魔物か。とすると、コイツらの弱点は……。



 俺は、剣を地面に刺し、両手を上に上げた。やったことないけど、できそうな気がする。


『レイン!』


 俺の両手から放たれた光が空に上がった。万年樹の上空、低い位置に小さな黒い雲が現れた。そして、ポツポツと雨が降り始めた。雨は、草原の一部、万年樹の付近だけしか降っていない。


(うーん、イマイチだな)


 だけど、明らかに魔物の動きは鈍くなった。俺が放った火の鳥は、雨雲の下には入らないように飛んでいる。


 万年樹に炎を吐いていた魔物は、万年樹から少し離れた。


 俺は、地面に刺していた剣を引き抜いた。


『チャージ・アイス!』

『スピード!』


 俺は、万年樹を燃やそうとした魔物達を次々と、斬っていった。どの魔物もスピードが遅い。俺の動きさえ、目で追えない奴もいる。


 奴らは倒れると、妙だったんだ。おそらく人工魔物なはずなのに、姿がスッと消えるんだ。どういうこと? 姿を消す魔物? まさか、カルデラと同じ種族?


 でも、この魔物は弱い。カルデラは、なかなかダメージを受けなかった。でも、コイツらは、反応が鈍いし、氷を纏った剣で斬ると、体力がガツンと減る。


 それにしても、なんだかおかしい。手ごたえがないよね。俺は弱いのに、なぜほとんど倒せているんだろう?




 魔物が、乗ってきたカプセルへと戻り始めた。逃げるのか。どうしよう。でも、この島にもう近寄らないなら、逃がしてやってもいいのかな。


「カプセルの中にいるのは、魔物か? 人間か?」


 俺は拡声魔法を使った。だが、反応はない。威嚇しようか。カプセル付近は雨は降っていない。俺は、火の鳥をカプセルへと向かわせた。


 シュン


(ゲッ! 瞬殺……)


 カプセルの中から、現れた人間に見える者が、火の鳥を消し去った。人間に見えるけど、人間じゃない。性別も不明。顔に目鼻口がないんだから……。


(のっぺらぼう!?)


 背は、俺と同じくらい。黒髪で、髪は肩まである。そして黒いローブのような服を着ている。でも肌の色は白い。夜に見たら、目鼻口のない顔だけに見えるかもしれない。


『リンゴ……ヨウセイ』


「そうだよ。俺はリンゴ王国の第二王子だ。キミは?」


『……オウジ……ココ、ハ……』


「うん? キミも王子なの? ここは万年樹の島だよ。俺の住む屋敷がある」


『……オウジ……ヤ、シキ……』


「なぜ万年樹を燃やそうとするの? 俺は万年樹の精霊の使徒なんだ。万年樹を傷つけようとするなら、見逃すわけにはいかないよ」


『……セイ、レイ……シト……ナゼ……』


 意味不明なんだよね。知恵が低いのかな。よくわからない。だけど、奴は迷っているのか? なんだかオドオドしているようにさえ見える。


「俺は、地上に降りたときに、万年樹の精霊の使徒に選ばれたんだ。だから、この樹を守る義務がある」


 俺がそう言うと、のっぺらぼうから、妙なドス黒いオーラのようなものが、大量にふき出した。何? 魔力? 冷たい霧?



『…………チガ、ウ……イケナ、イ……』


 奴は何か、葛藤しているのか? ドス黒いオーラは、俺が草原に張った移動結界を破壊した。黒い霧が広がると、草がしおれていく。冷たいからだけじゃないよね、何?


「黒いオーラを広げないで。草花が辛そうだよ。そのオーラは一体何? キミは何者?」


 俺がそう言うと、ドス黒いオーラは、奴の身体にスーっと戻っていった。何? 何がしたいわけ?


『……リンゴ……タス、ケ……』


「うん? 何?」


 念話なのに聞き取れない。



「リント!」


 あっ、紅牙さんだ。


『…………オウジ……』


「うん? もう一度言って?」


 だけど、紅牙さんを恐れたのか、奴はスッと消えた。なんだろう? 目鼻口がないけど、なんだか奴は泣いていたような気がした。



「リント、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です」


「バケモノはどこ行ったんや?」


「紅牙さんを恐れて、消えましたよ」


「は? アホなこと言うなや」


(えー?)



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