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84、国立特殊技能高等学校 〜リント、ぐだぐだな日

「うぬぬ……コンプリートへの道のりは厳しいよね」


 ミカトは、星三つの店で、全員分のカプセルを開き、そして……うなっていた。


 6個のカプセルは、どれも見たことのある料理だった。でも、ミカトはたぶん、ミニ盾のことを言っているんだと思う。


 テレビ企画で人気メニューのベスト10なら、星三つの店じゃなくて、ファミレスっぽい星二つの店のメニューが選ばれてるんじゃないのかな?


 ミニ盾を集めたい人が殺到するといけないからか、どの店にいくつずつランクインした物があるかは、公表されていないらしいんだ。


 でも、スイトが怒りそうだから、ヒントのようなことは、言わない方がいいよね。星三つの全メニュー制覇には、あとはランダムレアが何種類かだけと思うし。

 あっ、そうだ! ミニ盾なら、いらない人がくれるかもしれないから、やっぱり言わない方がいいかな。



 ミカトがどんよりしていたので、スイトが料理を適当に分けていた。珍しい……あっ、睨まれた?


「おまえら、どんよりボーッとしてないで、メシ食え。この後、試験なんだからな。リント、補助魔法禁止で剣術大丈夫なのかよ」


「珍しくスイトが配ってくれたから、いまありがとうを言おうと思ったのにー」


「ふっ、ガキか」


 そう言いつつも、スイトはテキパキと手際よく分けている。いつもは、ミカトが仕切ってたけど、そういえば、スイトって料理するもんね。


 はぁ、俺が一番何もできないじゃないか。スイトの言うように、俺、ちょっとガキかもしれない。一番、自立できてないよね、やっぱり。




「なんか、だんだんイメージ変わってきたよ。リントさんがリーダーかと思ってたけど、違うんだね」


 小川さんが突然、鋭いことを言った。グサリと刺さるんだよ? 直球で、そんなこと言うと……。


「瀬里奈、それ、ダメだよ。リントくんが落ち込む」


「えっ? も、申し訳ありません……」


「瀬里奈、さらに追い込んでる」


(中村さん……その言葉もグサリとくるんだけど)


「ええっ? どうして?」


「あれ? リントくんの考えがわかるんじゃないの?」


「うーん、私達がどう思われているかは全くわからないよ。隠されているんだと思う」


「へぇ、そうなんだ」


「それに、主人の考えていることは、口外できないからね。みくが知りたいって言っても教えないよ」


「なっ? 何のこと?」


「みく、リントさんのこと好きなんでしょ?」


「ちょ、ちょっと!! 瀬里奈、何を言ってるの」


 そうだよ、小川さん、何を言ってるんだよ。 中村さんが呆れてるじゃないか。


 俺がそう考えると、小川さんはパッと俺の顔を見た。そして、なんだか小悪魔のような表情になった。何? この子。



「おい、はよ、食え」


 小川さんは、スイトに、ほほをぷに〜っと引っ張られている。すると、彼女は怒った顔で、それをパシッと払っていた。


(あれ? でもなんか、喜んでない?)


 やはり、小川さんは変な子だ。見た目が高1のままだし、考え方というか頭の中も、半分中学生のままなのかもしれない。


 へぇ、スイトに懐いてるんだ。お兄ちゃんみたいな感覚なのかな? でもどうしてなんだろう? 小川さんは、めちゃくちゃモテるのに。いつも男子にチヤホヤされている。その中には彼氏候補もいるんじゃないかと思うんだけど。


 スイトは、逆に、彼女を邪険に扱ってるから、どちらかといえば、嫌われそうなんだけどな? 女心はよくわからない。


 俺達は、スイトに急かされながら、昼ごはんを食べ、お食事ダンジョンから外へ出た。




 剣術の試験は、俺がいま、一番嫌いな試験なんだ。俺達には、先生は本気でやってるみたい。でも、ミカトは、たまに先生に勝ってる。そして、スイトは、たまに先生に負ける。俺は、先生に勝てる気さえしない。


 それに、何より嫌いなのは、観客が多いことなんだ。ミカトやスイトが、先生に勝つかどうかを賭けにしてる人達もいるそうだ。


 俺が、その話題にのぼることはない。別に、羨ましいわけじゃないけど、疎外感というか、なんだかなぁ。



「リントくん、また暗い顔になってるよ。そんなに剣術の試験が嫌い?」


「俺、弱いからさ〜。中村さんは、女の子の中でかなり強いから、この寂しい気分をどう伝えればいいかわからないよ」


「そんなことないよ。リントくんは、すっごく強いじゃないの」


「ん? ダンジョンの外だと、スキルが使えないから、弱々だよ。木刀を落とさないようにするだけで必死だから」


「あー、種族も変わったからかー。でも、魔法とかはさー」


「魔法の試験は、俺はないんだよね。卒業まで免除だって。人間じゃないから」


「あー、うーん」


 中村さんは、俺を励まそうとしてくれてる。でも、言葉が見つからないみたいだ。呆れられたかな?


(あれ?)


 なんだか、そう考えると、急に気分が悪くなってきた。胃が痛い。食べすぎたのかな。


「もう、ほんっとに、リントくんは放っておけないんだよね」


「えっ……ごめん。あっ、スイトの試験が始まった」



 観客が多いよね。でも、スイトは、あっさりと先生に勝っていた。めちゃくちゃ強い。うらやましい…。


「スイトくん、さすがだね。次はミカトくんかな?」


「うん、強い順でしょ? いつも一緒にダンジョンに行ってるのに、俺、全然、物理攻撃力が上がらないんだ」


「その分、魔法攻撃力は、ありえないくらい凄いじゃない」


「ありがとう。中村さんにそう言ってもらえると、なんだか安心するよ。で、俺より中村さんの方が、先に試験があるよね」


「えーっと、どうだったかな?」



 スイトの次は、やはりミカトだった。そして、今日は、ミカトも先生に勝っていた。ほんと、二人はすごいよね。



 そして、ミカトの少し後で、中村さんが呼ばれた。やっぱり、俺より強いんじゃないか。


 中村さんの剣は、かなり荒っぽい。カッコいいよね、うらやましい。


 そろそろ俺が呼ばれるかと思ってたら、早瀬さんの方が先に呼ばれた。最近、彼女は、剣術の練習をかなりやっているみたい。努力の結果だと喜ぶべきなんだろうけど……。


 はぁ、俺はどんどん置いていかれる気分だ。そういえば、最近ステイタスを確認していないな。


 ステイタスを表示しようとしたところで、先生に名前を呼ばれた。なんてタイミングの悪い……。



「よろしくお願いします。採点は甘くしてください。俺はかよわい妖精なんで」


「ククッ、青空 林斗。そのネタは聞き飽きたぜ?」


「ネタじゃないんですけど〜」


「へぇ、じゃあ、補助魔法を認めてやる。それなら、少しは気合い入るか?」


(まじ?)



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