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82、国立特殊技能高等学校 〜ホームルーム

「はぁ……そうかもしれませんね」


 せっかく、小川さんはサラリとかわしていたのに、まさかの先生が、バラすって、どういうこと?


 まぁ、小川さんの視線で、ほとんどみんな気づいたかもしれないけど。


「ははっ、まぁそんなブスッとするなよ。イケメンが台無しだぞ。しかし、すごい能力だな。数ある精霊の使徒の中でも、やはり、万年樹の精霊の使徒は、圧倒的だな」


「はぁ……」


 なんか、眷属けんぞくがたくさんいるから、やりにくいな。彼らまで、先生を睨んでたりするから、慌てて、先生が変なことを言ってるし。


 彼らは、主人を崇拝してるみたいだ。俺、そんな器じゃないのにな。なんだか、居心地が悪いよね。




 他の眷属も、みな、簡単な自己紹介をしていた。俺は名前と顔は覚えられなかった。いや、正直なところ、居心地が悪くて聞いてなかったんだよね。


 そして、廊下側の空席に、みんなそれぞれ着席した。急にクラスの人数が増えた。でも、みんな嬉しそうな顔をしている。うん、無事に戻ってこられてよかった。



「青空 林斗、何度も説明するのは面倒だろうから、いま、クラスのホームルームだ。自由に使っていいぞ」


 先生が変なことを言ってる。


「自由にと言われても……」


「リントは口下手なので、俺が代わりに仕切りますよ〜」


 ミカトが立ち上がった。そして、前に出ていき、教卓の前に立った。なんか、ミカトって、やっぱりすごい。でも、何を話す気だろう?



「俺も、たまゆら千年樹にいたから、完全な初めましてじゃないけど、一応はじめまして。青空 実香斗です。青空の苗字は、もう一人いるけどね」


 すると、眷属達はミカトに軽く会釈をした。その様子を先生は興味深そうに見ている。なんか、紅牙さんと同じ感覚なのかな。


「クラスのみんなも気になってると思うから、俺がリントに質問するよ。みんなも聞きたいことがあれば、挙手でよろしくね」


 クラスのみんなが頷いた。ほんと、ミカトってすごいよね。俺には真似できない。


「まず、先生が特に知りたいのは、リントの魔力でしょ? 眷属が何人いるのか、どれくらいの魔力を使っているか、そのへんをよろしく」


 ミカトにあてられた感じで俺は立ち上がった。なんか、ミカトが先生に見えてきたよ。


「眷属の数は、186人います。このクラスは10人かな? 眷属一人には一日当たり魔力100程度を使っているみたいです」


 俺がそう答えると、先生が口を出してきた。


「ちょっ、おまえ、そんなに使ってるなら、常に魔力切れの危機じゃないのか? 学校に来てて大丈夫か? えっと、万能薬、俺、持ってたかな」


 先生は慌てている。うん? 俺の顔色が悪いのかな?


「先生も、挙手ですからねー。うぷぷっ、リントくん、魔力値はどれくらいですかね〜」


「えっ? あぁ、悪い。そうだな、今は、青空 実香斗が仕切ってたな。万能薬は、保健室ならあるはずだが」


「先生、万能薬なら俺、持ってます。それに、そんなに顔色悪いですか? 魔力の残量には気をつけていますから大丈夫ですよ」


「いや、だが、いくらなんでも、18,600だろう? そんな魔力は、ないだろう?」


 あー、それで先生は慌ててたんだ。


「大丈夫です。無茶をしなければ問題ありません」


 そう答えると、先生が驚いていた。俺の言い方が悪かったのかな。すると、ミカトが補足をしてくれた。


「リントは、たぶん、この学校の誰よりも魔力値は高いですよ。だから、魔力切れで倒れたりはしませんから、みんは安心してくださいねー」


「青空 実香斗、それは、転移係をしている山田先生よりも高いということか? 山田先生は、魔力値3万超えの変人だぞ?」


 みんなの魔力値がわからないけど、3万超えで変人なんだ。じゃあ、俺も変人……。


「先生、リントの方が高いですよ。種族が妖精に戻ってしまったからみたいですけど。だから、体力や物理攻撃力が下がって落ち込んでるみたいです」


 すると、先生は、やっと落ち着いたようだ。ずっとゴソゴソ探してたもんね。いい人だよね。


「そうか。俺は妖精の格はわからないが、青空達は王族だからだな。ふー、変な汗をかいたぞ。魔力値は、高い人でも数千だからな」


 そっか。でも、俺が地上に降りたときは、魔力値は100だったから、人間で数千ってすごいよね。



「じゃあ、リント、次の質問ねー。眷属の取り扱いはどうするの? 同じクラスになったけど?」


 この質問には、クラスみんなの視線が集まった。そうか、みんなはこれを聞きたいんだ。


「俺は、学校では普通にクラスメイトでと考えてます。学校の外では、各自、自由でいいと思う。眷属化したことで、みんなは長期の海外旅行とかタイムトラベルが出来なくなって不自由だと思うし、俺は眷属化以外の方法で助けられなかったから……悪いなって思ってる」


 すると、眷属達が立ち上がったが、ミカトがそれを制した。


「聞いたよね? リントは、こういう性格だからさー。あまり、主人だとか思わないでいてあげる方がいいと思うよ。友達として接する方が、リントは喜ぶよ」


「なるほどな。青空 林斗は、この結果を自分の力不足だと感じてるわけだな。だが、テレビ報道でも見たけど、生還したことだけでも奇跡なんだぞ。おまえは、もっと自分に自信を持つべきだと思うけどな」


 なんか、先生に説教されている気もするけど、そんなこと言われても無理なんだけど。


 でも、このホームルームの意味がわかった。


 みんな、クラスの中で、どう位置付けるべきかがわからなかったんだ。たぶん、先生も含めてだよね。キチンと話しておく方がいいよね。


「俺のことは、今まで通りでお願いします。ただ、種族が変わったので、剣術の授業は、採点を甘めにしてもらえると嬉しいです」


「それは、剣術の先生に言えよ? ぷぷっ、無理だと思うがな」


 クラスのみんなが笑った。よかった。なんか、ちょっと変な視線だったんだよね。疎外感を感じていたけど、それが今の笑いで消え去った。


「じゃ、俺の仕切りは、ここまで。先生にマイクをお返ししまーす」


「おい、青空 実香斗、どこにマイクがあるんだよ」


 ミカトと先生の掛け合いで、また、クラスのみんなは笑った。眷属達も笑っている。さすがミカトだね。




 そうして、俺達の生活は、今までのペースに戻った。


 学校には、お食事ダンジョン制覇狙いで登校するだけで、ほとんどの時間は、万年樹のダンジョンでレベル上げの毎日を過ごした。


 ただ、ひとつ変わったことは、中村さんの行動が気になるようになったことだった。


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