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8、万年樹の島 〜お金とダンジョンコインの説明を聞く

「オールアウト!」


 俺は、教えられた言葉を叫んで、袋の中身を木机の上にすべて出した。


「叫ばんでええから。思い浮かべるだけでも、魔法袋に意識を集中できてたら出てくるで」


「そう、ですか」


 そして、木机の上には、笑ってしまうほどの大量のいろいろなものが積み上げられていた。


「しかし、おまえら、ゴミだらけやないか」


「何が価値があるか、わからなかったんですよー」


 ミカトが明るい声で、少しおどけて言った。


「まぁ、だからこそ、普通は見逃す物も集めたらしいな。ちょっと振り分けるから、店で待っとれ。必要な買い物もあるやろ。とりあえず、これ、個人的に買い取ったる。お金でええな? ダンジョンコインは正規の買取でしか渡せんから」


「えっ? 個人的にって」


「兄ちゃん、疑り深そうやな」


「ミカト、この人、騙すつもりは無さそうだから大丈夫だよ」


「リントがそう言うなら……うん」


 ミカトは、相手の悪意の有無が見えなくなってるんだな。だから、疑り深くなってるみたいだ。見えていたものが見えなくなると、やっぱ不安だよね。


「半人前の妖精の兄ちゃんは、能力が残ってんねんな。だから、きのこが、ごちゃごちゃ言うとったんか」


「俺は半人前の妖精なのですか」


「まぁ、人間と妖精のハーフみたいなもんやろ。地上の純粋な妖精は、戦闘力はないからな。おまえの場合は、基本は人間やと思うで。妖精の能力を残したから、体力や攻撃力が悲惨なことになってるんやろな」


「はぁ」


「でも、運が異常に高いからレベル上がるん早いんちゃうか。俺も、運が高かったから早かったで。とりあえず、個人的な買取分は、これくらいでええか?」


 中年の男は、そう言いながら、紙のお金を出した。初めて見たけど、地上の日本のお金だ。


「えっ? 妖精なんですか?」


「きのこから聞いてへんのか? 俺は、おまえらみたいに追放された妖精が、妖怪をはらまして生まれたんや」


「よ、妖怪?」


「母親はもう死んだけど、父親はおまえらの世話係をしてるやろ」


「まんじゅ爺ですか!?」


「それも聞いてへんのか。爺は浮き島の妖精やで。と言っても、おまえらのような王族ではないけどな、精霊の使徒に選ばれたから、ずっとここにおるんや」


「えっ? 爺さんも精霊の使徒なんですか」


「せや。この島のおとぎ話の精霊の使徒や。島の伝承を守るのが使命らしいで。よー知らんけど」


 俺は、この中年の男の話し方が気になった。この島の方言なのかな?


「精霊の使徒って、リント以外にもたくさんいるんですか」


「あぁ、精霊の半分くらいは使徒を選んでるから、この国やと千人は居るやろな。でも、精霊ってゆうてもピンキリや。精霊のチカラが弱ければ、その使徒は人間と変わらんで」


「たくさんいるんですね」


「まぁ、でも、使えるヤツは少ないで。そんなことより、その金で買い物して来いや。何も持ってないやろ。買い物が終わるまでには、ゴミの分別しといたるわ」


「はぁ」


「じゃ、お願いします〜。リント、行こう」


「うん」




 俺達は、渡された紙のお金を持って、小部屋から出た。6枚あるから、ミカトと3枚ずつ分けた。


「ふぅん、けっこうな額じゃない」


 いつの間にか、幼女がいた。


「きのこちゃん、いま、拾ったものを分別してもらってるんだよ。これは、個人的に買い取る分だって〜」


「へ? ふたりで6万円って、かなりの上出来だと思うよ。まだ他にもあるの?」


「うん、ゴミだらけだったみたいだけどね。分別する間に、買い物して来いって〜」


「じゃあ、こっち来て」


 俺は、店の外に買い物に行くと思ってたのに、幼女が、店内にある品物をアレコレと集め始めている。彼女は、ミカトには笑顔を向けているし、悪意は感じないかな。


 地上で必要なものを選んでくれているようだ。でも、なぜこの店のことを熟知しているんだろう。


 そして会計をして、俺達はたくさんの荷物を受け取った。紙のお金は綺麗に使い切ってしまった。


 魔法袋に触れると、俺の手荷物はすっと消えた。そして、目の前にリストが表示された。


 未整理の買い物袋 6


「リント、俺のも入れておいて〜」


「うん、いいよ。あ、どっちの分か、わからなくならないかな」


「印をつけとこうか」


 すると幼女が、俺をバカにするように、口を挟んできた。


「魔法袋にはリストがあるって知らないの? わかるに決まってるよっ」


「へぇ、じゃあ、リントよろしく」


「うん」


 俺は、ミカトの荷物に触れると、やはりすっと消えた。そしてリストには中身の表示が増えていた。


 未整理の買い物袋 6

 ミカトの預かり物 6


「ほんとだ。ちゃんと、わかるようになってる」


「さすが、きのこちゃんだね」


 ミカトが褒めると、幼女はまんざらでもなさそうな表情をしている。コイツ、絶対、性格悪いよな。




 ミカトと、小部屋に戻った。さっきは中年の男ひとりしかいなかったのに、数人の男がいる。そして、俺達が拾ったゴミを分別しているようだ。


「なんや、もう戻ってきたんか。まぁええわ」


 そしてゴソゴソと何かの準備をしている。数人の男は、こちらに軽く会釈をした後、また作業に戻ったようだ。


「買取は、お金かダンジョンコインや。何もわからんやろから説明するわ。お金は、流通してる通貨や。この島は日本という国にあるから、円という通貨や。通貨は、銀行に口座を作らな預けられへん」


「それは、わかります。もう一つは?」


「ふぅん、そーか。ダンジョンコインは、ダンジョン付近の買取店でのみ入手できるコインや。腕輪に口座機能がついてるから、今すぐにでも預けられる。買い物も腕輪をピッとするだけで支払いができるんや」


「電子マネーみたいなものですね」


「あぁ、お金とダンジョンコイン、どちらで持っててもええ。ただ、コインはお金に交換できるけど、逆はできへん。コインでしか買い物できないもんもあるから、資金が増えてきたら、コインで貯める方がええ」


「わかりました」


「じゃあ、買取はコインにするで」


「はい。じゃあ、ふたり半分ずつで」


 俺達は、読取機のような場所に左手をのせるように言われた。ピッと音がした。これで、コインが入金されたらしい。


 そして、残高確認の文字が、目の前に浮かんだ。



【コイン残高】


 白金貨(1億円) ー 0

 大金貨(1000万円) ー 0

 小金貨(100万円) ー 0

 大銀貨(10万円) ー 0

 小銀貨(1万円) ー 8枚

 大銅貨(1000円) ー 1枚

 小銅貨(100円) ー 5枚


 日本円換算で、81,500円



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