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72、万年樹の島 〜リントのひらめき

「どこに行くの?」


 俺達が盛り上がっていると、中村さんが、声をかけてきた。早瀬さんも一緒だ。


「万年樹のダンジョンだよ。4階層をクリアしたいんだよね」


「3人で行くの?」


 二人は、なんだか誘ってほしそうに見える。


 そっか、万年樹のダンジョンは、千年樹のダンジョンよりも攻略するのが難しい。だから、きっと興味があるんだろうな。


 ミカトも、それに気づいたんだ。スイトの方を見てる。スイトは、軽く頷いた。あれ? 俺の確認はしないんだ。まぁ、いいんだけど……。俺は断らないってわかってるんだと思うけど。


 俺の変化に、ミカトもスイトも気づいたみたいだ。二人ともニヤニヤしてる。はぁ、別にいいんだけど。


「じゃあ、5人で行こうか。パーティは、5人まで組めるからさ」


「そうだな、1階層から行くのも悪くない。リントも、万能薬を集めたいだろうからな」


 ミカトもスイトも、どんどん話を進めてる。別にいいんだけど。


「えっ? 万能薬? そんな高価なドロップ品なんて、滅多に落ちないんじゃないの?」


「早瀬さん、ボスドロップだよ。リントの運の数値が、すごく高いんだ」


「へぇ、すごい! でも、私も高いよ。30あるもんねー」


(えっ? 低くない?)


「そうなんだ。早瀬さん、そもそものレベルは?」


「ミカトくん、それは、普通言っちゃダメでしょ。個人情報だからね」


「あはは、確かにそうだね」


「結花、レベルを言わないと、その数値が高いかどうかって、判断ができないんじゃない?」


「えっ、ということは……」


「うん、結花はミカトくんに、負けてるんだよ。でしょ?」


 中村さんは、鋭いよね。でも、運の数値って、あまり上がらない。と言うことは、早瀬さんって、かなりレベルが高いのかもしれない。俺は、二人のレベルがちょっと気になる。


「俺は、運の数値は、早瀬さんよりも高いかな。でも、リントはもっと高いから」


「そうなんだ。リントくん、いつも体力がないとか嘆いてるから、いろいろと低いイメージがあったよ」


 中村さんは、やっぱ、俺のこと、何か怒ってるのかな?


「あはは、確かにリントは、ヘタレ発言が多いんだよね。ぷぷっ、それが面白いんだけどねー」


「なんか、青空くん達って、ほんとにタイプがバラバラだよね。前にも同じこと言った気もするけど」


「でも、戦力的には、俺とスイトは似てるんだ。リントだけが真逆だから、よく拗ねてる。一緒にダンジョンに潜ったら、面白いよ」


 やたらと、なぜかミカトは中村さんに、俺が面白いとアピールしてる。ミカトも、中村さんが俺を怒ってるかもしれないって、気づいたのかな?




 俺達は、朝食を終えて、万年樹へと向かった。5人でパーティを組み、そして1階層から入った。


(えっ? なぜか二人がいない)


「あ、中村さんと早瀬さんは、オリエンテーション階からだね。ここで待っていよっか」


「俺は、木の実集めをしたいから、ちょうどいい。そうだ、木の実はそろそろ分けようか。体力の木の実は、リントに渡せばいいよな」


「うん、そうだね。俺が預かってるよね。なんだかんだで、かなり増えたよ」


 俺にとって、スイトの提案は、まるで神様の言葉みたいに聞こえた。おまえに体力が増える木の実を与えよう……くぅ〜なんて神々しいんだ。


 あれ? また、二人がニヤニヤしてる。


「リント、何て顔してんだよ。にやけすぎだぜ」


「えっ? やっぱ、スイトってエスパー?」


「リントくん、木の実集めを頑張る気になったかね?」


 ミカトが突然、変顔を作っていた。ぷははっ、もう、いきなり、なんだよ。でも、うん、きっと励ましてくれてるんだよね、二人とも。半分面白がってる気もするけど。


「ミカト、いきなりそれは、反則だよ」


 俺がそう反論すると、ミカトは満足そうな顔をしている。ほんとに、ミカトにはずっと助けられてる。スイトもだけど。


 だから、ミカンの妖精を捕まえようとする人達には、諦めさせたい。もう、人体実験なんて……。


(あっ、そうだ!)



「ミカト、前にここで遭遇した妖精を捕まえようとした人達を探知するペンライトみたいな道具って、地上にも売ってるのかな?」


「うん? リント突然、何? それより、木の実を集めて。そのモンスター、今なら楽勝でしょ」


 ミカトはこの話をすると、いつも話を逸らそうとする。でも、今日は、そうはいかないんだ。


「それなりに集めてるよ。あのさ、俺、ひらめいたんだよね」


「何? リントが何か言い出すのって珍しいけど……」


「あの道具がたくさん手に入るなら、俺の眷属けんぞくの仕事にできるんだよ」


「どういうこと?」


 スイトも、こちらに戻ってきた。俺は、気のせいかと思ってたけど、気になっている異変について話をした。


「なんか、俺、声が聞こえてるんだ。気のせいかとも思ってたんだけど、ダンジョンに入ってそれが気のせいじゃないってわかった」


「何? リント、呪われたとか?」


「ミカト、違うよ。眷属の声が聞こえてくるみたいなんだ。このダンジョン内は、万年樹の精霊の加護があるから、余計にハッキリと聞こえてるんだと思う」


「下僕が何を言ってくるんだ?」


「スイト、下僕というか……下僕か。うん、仕事が欲しいんだって。何をすればいいかって何人も聞いてくるんだ」


 ミカトは、パッとスイトの顔を見た。するとスイトは頷いた。もう、またそれ? 何のアイコンタクトだよー。


「リント、その道具、いま紅牙さんが、どこかに発注してるよ。ミカンの妖精の血をひく人って、かなりいるらしいんだ」


「じゃあ……」


「あぁ、リントのその提案って、道具作りだろ? もう心配はいらない」


(ん? 違うんだけど?)


「スイト、違うよ。彼らには、人体実験に加担する人達を見つけ出してもらうんだよ」


「へ? そんなことしてどうするんだ?」


「諦めるよう説得してもらう。もう既に実験するまでもなく、バケモノに対抗できる人がいるって説明してもらうんだよ」


「それって、まさか、リントのことか?」


「うん、正解! 彼らの額の石って、使えるでしょ。たくさんの人を眷属化するような誰かが、そのバケモノをなんとかしようとしてるってわかれば、実験やめるでしょ」


「そんな簡単にやめるかな?」


「じゃあ、おどしてもらおうかな。邪魔な目障りな行為だってことで。人体実験を続ける人達がいると、バケモノに警戒されるからやめろっていうのはどう?」


「あー、でも……」



 そのとき、中村さんと早瀬さんが1階層にやってきたのが見えた。話は途切れることになってしまった。




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