表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/153

7、万年樹の島 〜買取屋でいろいろ教わる

 部屋の中は、なんだか倉庫のように雑然としていた。


「初めての買い取りなんですが、きのこちゃんにこの部屋に行くようにと教えてもらって来たんですが」


 ミカトは、頼りになる。俺は、中年の男が放つ妙な威圧感に、近寄り難さを感じたけど、ミカトは平気な顔をしている。


「この部屋は、振り分けと説明の場所や。おまえら、オリエンテーション階にしか行ってへんねやろ? 素材なら個人的に買い取ったるけどな。とりあえず、出してみー」


(やっぱ、感じ悪いな)


 ミカトが、俺を見て、アゴをクイクイと動かした。出してと言っているような気がする。


「どこに出せばいいですか」


「あん? そんなにたくさん拾ってきたんか。ほとんどがゴミやろ。その木机に出してくれたらええで」


 俺は指示された机の上で、古い袋を逆さまにした。だが、何も出てこない。振っても何も出てこない……。


(げっ! やっぱ軽いのは、中身がないってことなんだ)


「ミカト、出てこない」


「ええっ? かなり拾ったよね? 袋に穴があいてたんだ」


 すると、中年の男が面倒くさそうな顔をして、ため息をついた。買い取り品がないから怒ったのかな。


「おまえら、その袋どうしたんや。振って出てくるわけないやろ」


「えっ? ダンジョンで拾いました」


「は? そんなもん、オリエンテーション階に落ちてるわけないやろ。貸してみー」


 乱暴に俺から、袋を取り上げ、中年の男は袋に手をかざして何かをしていた。


「これ、どっちが拾ったんや?」


「リントです、あ、その袋を持ってた彼ですけど」


「おまえ、魔力ないやろけど、これを装備せな、中身は取り出されへんで。ちょ、腕輪のステイタス、出してみー」


「ステイタス、ですか?」


「あぁ、おまえ、きのこがぶつくさ言うとったけど、妙なスキルを与えられたんやろ。だから、この袋を拾ったんや」


「えーっと、精霊の使徒、ですか」


「あぁ、ステイタス出してみー。それによって、これを装備させるか判断するわ。装備すると、ガツンと魔力を吸うからな。下手すると魔力切れで失神するんや」


「えっ……やばい袋?」


「魔法袋や。たいしたサイズじゃないけどな、これなら、そこのダンジョン30階層より深いとこでしかドロップせーへんで。おまえ、運50以上あるんか」


「あ、はい。すべてステイタスは100でした」


「は? すべて100? とりあえず、ごちゃごちゃ言うてんと、見せてみー」


 俺は、腕輪に触れてステイタスを表示した。指輪は消えている。そうか、指輪はダンジョンの外では見えないんだっけ。



【名前】 青空 林斗 (あおぞら りんと)

【レベル】 11

【種族】 ハーフフェアリー


【体力:HP】 600

【魔力:MP】 300


【物理攻撃力】 300

【物理防御力】 200


【魔法攻撃力】 350

【魔法防御力】 200


【回復魔法力】 150

【補助魔法力】 200


【速さ】 200

【回避】 200

【運】 105


【その他】 精霊の使徒(Lv.1)



 レベルが10も上がっている! でも、体力は、まだみんなの半分くらいしかないのか。それから、精霊の使徒にまでレベル表記がされてる。



「おまえ、オリエンテーション階で何しとったんや? こんなに上がるか? なんかバケモノが出たんか」


「木のモンスターが出ました。確か、トールなんとかって名前の……」


「トールギャングか。それ、人工のモンスターや。人工樹のダンジョンにしかおらんはずやのにな。倒すと映像が消えたみたいに消え去るやろ?」


「あ、はい。そんな感じでした」


「他のダンジョンのモンスターは、ドロップ品もないし、ただの害獣や。また入ってきよったんか」


 中年の男は、眉間にしわを寄せていた。


「まぁ、ええわ。装備には魔力100くらい取られるけど、魔力満タンやな?」


「満タンかはわからないです。このステイタスは、魔力残量は出ないんですか?」


「スキル取得が必要や。残量がわかるようになるスキルがあるんや。レベルが上がって、そのスキルを取得したら、残量表示も出るようになるけどな。まぁ、いらんスキルや」


「へぇ」



 すると、中年の男は、何かの機械を出した。ウィーンと起動音が聞こえた。そして、その機械を俺達に向けた。


「何ですか? それ」


 ミカトが興味深そうな顔で、機械を見つめている。そういえば、ミカトは、人間の使う機械が好きだよね。


「これは、残量計や。医療用やから害はない」


「それがあるなら、俺のステイタスを見る必要なかったんじゃないですか」


「アホか、残量計はパーセント表示やで。数値がわかるものなんて、個人情報保護法に引っかかるわ」


「へぇ」


「おまえは問題ないから装備せい。そっちの兄ちゃんは、これ飲め」


 中年の男は、ミカトにガラスの小瓶のようなものを渡した。装備と言われても、どうすればいいのかな。


「このガラスの小瓶は、ポーションですか?」


「そうや、買い取り代金から、お代はもらうけどな。体力が半分以下になってるから念のためや。この島では、体力は下がらんように気をつけとけ」


「危険なんですか?」


「何も知らんのか? この島の近くまで、海底都市が広がってきてるんや。妙な魚が突然襲撃してきたりするからな。体力下がってたら、レベル低いうちは一撃で死ぬで」


「え……わ、わかりました」


 中年の男は、ミカトに早く飲めと促していた。ミカトはゴクリと飲んで、微妙な顔をしている。ポーションって、やっぱ不味そうだな。


「で? おまえは何をボーッとしとんねん?」


「どうすればいいのか、わからなくて」


「その腰のベルトに、袋の紐を巻き付ければ、勝手に魔力を吸収して、装備完了や」


 俺は、言われたようにベルトに袋の紐を近づけた。すると、スーッと、俺の身体に引き寄せられるように紐が巻きついた。


 身体から力が抜けていくような感覚のあと、袋は見た目が変わった。古い感じの布袋だったのに、今は新品の革袋のように見える。


「じゃあ、次は中身を全部出すんや」


「えっと、袋の口が……」


「ちゃうわ。オールアウトで、中身が全部出てくる。収納するときは、手で触れたら勝手に入る。中身をひとつずつ出すときは、袋に触れたら中身リストが表示されるから、目線で選んだら出てくるで」


「目線で選ぶ? 見るってことですか?」


「おまえ、使ったんちゃうんか? 精霊の使徒レベル1になっとったやろ」


(あー、あれが目線で選ぶってことか)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ